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闇色の使者  作者: 細螺蒼
3/10



「――お前にはリィードゥが、無事に儀式を完成させるのを見届けてもらう」



 紫紺の髪に黄金色の瞳をした、どことなくリィードゥに似た男性、地獄の王はシュリュナに言う。



「自分が……ですか?」

「不安か? 幹部連中はお前が適任だと推薦してきたから、お前を選んだのだがな」



 口調もリィードゥに似ている彼は、シュリュナの様子にそう、言葉を投げかける。

 地獄の世界は序列が決まっている。

 力と統率力、圧倒的な力を持つ彼が王であるかぎり、地獄が無秩序になることはない。

 そんな王の何番目になるかわからない、けれど、末の娘であることは確かなリィードゥの供にシュリュナは選ばれた。

 それは、優秀であると、王に認められたということになる。

 王に認められれば、出世は望むままだ。

 実力の世界である地獄では、文字通り、弱肉強食なのだ。



「あの子には私の後を継いでもらう」

「!?」



 ぽつりと呟かれた言葉に、シュリュナは聞き間違いかと思った。



「納得できない顔だな、シュリュナ」

「……お言葉ですが、リィードゥ様に、務まるとは思いません」



 シュリュナの言 葉に王は双眸を細め「ほう……?」と口にする。



「アレは王の器ではないか?」

「恐れながら……」



 答えながらもシュリュナは内心、冷や汗をかいていた。

 王の怒りに触れた者は始末される。

 それが、光りの届かない地の底に住む者たちの暗黙の了解。



「では、聞こうか、シュリュナ。お前にとって、王に相応しいのは誰だ?」



 問いにシュリュナは逡巡を示したが、覚悟を決めたように口を開いた。



「レイアト様かと」



 告げられた名は王の三番目の息子。



「理由はなんだ?」

「能力も統率力も、すべてにおいて、王にもっとも近いかと……」



 シュリュナの答えは誰もが答えるだろう。

 地獄の住人にとって、レイアトは王によく似ていて、冷酷無比だ。

 彼ならば、王が引退した後を立派に継げると誰もが思っている。



「レイアトは王にならないと言っていたぞ」

「えっ!?」



 まさか、とシュリュナは思った。

 彼の性格ならば、王になるためなら、手段を選ばないと思ったのだ。



「――リィードゥが生まれる前までは王になるのはレイアトだと、兄弟たちも、私も認めていた」



 けれど、と王は言葉を続ける。


「リィードゥが生まれ、アレが百歳になる年に、兄弟たちが私に言ってきた」



 ――王にはリィードゥが相応しいと。



「もちろん、理由を聞いた。一人前になるための儀式をしていないリィードゥを王に推す理由を」



 なんと言ったと思う? 底意地の悪そうな笑顔で、王は言う。けれど、シュリュナはあえて答えようとはしない。



「下級から上級までの悪魔が……しかも公爵クラスの連中までもが、リィードゥに恐怖していると言ってきた。― ―レイアトですら、成人の儀をすませてから、そこに到達したというのに、あの子はその前に、支配したのだ」



 地獄においての支配者になるための絶対条件を、一人前になる前のリィードゥが備えていたことに王自身、驚いていた。



「一人前になる前に到達したならば、一人前になった時が楽しみとは思わないか?」



 確かに、とシュリュナは納得する。

 王にもっとも近いとされていたレイアトすら、認めた存在のリィードゥ。

 その彼女の儀式に付き添うということは、誰よりも先に王になる彼女を見れるということだ。



「……わかりました」



 一拍、おいてから、シュリュナは答える。



「リィードゥ様のお供をします」



 シュリュナの答えに王は満足したのか、深く笑みを浮かべた。










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