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第3話「相違点」part-B

解説回ですが、もちろんのこと彼らに「わからない」ことは基本的に解説していません。

 日は過ぎ、大浴場の脱衣所。

 イナはシエラに教わったこの場所で、昨日の疲れを癒しに来たのだ。幸いかどうか、彼は昨日何事もなくシャワーを浴び昼食を取った後、15時から今――4時まで寝ていたのである。体に異常が無いという点では良いだろうが、半日以上寝てしまう程の疲労がたまっていたのだ、彼は。

 服を脱ぎながら、イナは自分の左腕を見た。

(一応映写機も機械なんだよな……風呂に入って大丈夫なもんなのか)

 あえて過度な表現をすれば、ヒュレ映像映写機を埋め込まれたエイグの搭乗者は皆サイボーグのようなものである。そんな機械に塗れた人間が風呂などに入っていいのかと、イナは今更ながらに思ったのである。

 だがすぐに、自分が昨日シャワーを浴びていたことを思い出す。もし映写機が水に弱いのなら、イナは既にシャウティアの搭乗者として戦うことはできなくなっている。

 そんな心配で頭がいっぱいになり、イナは周囲に誰もいないことを確認して呟いた。

「AGアーマー展開」

 恐る恐る発せられたイナの声に反応し、皮膚に埋め込まれた映写機からシャウティアを模した鎧が現れる。

 自分の頭頂から足の先までシャウティアになったところで、イナはほっと安堵の息を漏らす。

(安心して、イナ。映写機は水に浸かった位じゃ壊れないよ)

(そうか、ありがとう)

 脳内に響くシャウティアの声を聞いて、イナは微笑む。

(……それで、早く消してくれると有難いかな)

「わ、悪いっ! アーマー解除!」

 自分が脱衣中だったことを思い出して、イナは慌ててAGアーマーを消す。

 再び安堵すると、イナは今度こそと思い、腰にタオルを巻いてから下着を脱ぎ、風呂場に入る。

「わ……」

 思わず感嘆の声を出してしまうほど、風呂場は広かった。イナは過去何度か銭湯に行ったことがあるのでよく分かるが、ここはまさにそれだった。大浴場の名前を冠しているだけはある。

 巨大な浴槽と、その隣に小さな浴槽。恐らくこちらは水風呂だ。

 今イナのほかにここを利用している者はいないようで、湯水の沸く音だけが浴場内にこだましている。

「こんだけデカい風呂を使えんのかよ……凄いな、早起きは何文の得ってか」

 彼の場合、意図的な早起きではないのだが。

 イナは自分の体に何度か湯を浴びせた後、軽く体を洗ってからゆっくりと浴槽の中に入った。

「はー……」

 肩まで浸かると、体の奥まで湯の熱さが伝わってくる気がして、無意識な緊張がほどけていく気がしていた。

(やっぱ風呂はいいな、色々とすっきりする)

 見知らぬ場所でも風呂というものは変わりないと思いながら、イナはゆっくりと一人風呂を満喫した。


「入りすぎた……」

 顔だけでなく全身を赤くして、首にタオルを巻いたイナは脱衣所を出た。

 かれこれイナは一時間近く風呂に入っていた。そうなれば逆上(のぼ)せるのも仕方ないだろう。

 まだ日が出ていなかったことを幸いだと思いつつ、イナは自室に戻ろうと廊下を歩く――と、人影が見え、立ち止まる。

(あれは、ミュウと……アーキスタか? 帰ってたのか)

 視線の先にいる二人を見ていると、彼らはそれに気付いてイナの方を向く。寸分の差もない動きだったので、イナは思わず身を震わせる。

「うお。なんだよ、びっくりするだろ」

「そりゃこっちの台詞だ。どうした朝っぱらから。……あぁ、風呂か。どうだ、ウチのは?」

「中々に良かったよ。つい一時間くらい入っちまったが」

「道理で真っ赤なわけね。ああそうだ、手伝いなさい」

 ミュウが傍にある鉄扉を開けながら、イナに言う。

 イナは首を傾げつつ承諾し、二人の下に寄る。

「何を手伝えばいいんだ?」

 イナがさりげなく部屋の中を覗くと、様々な機材がそこかしこにあるのが見えた。

「機材の運搬。授業するって言ったでしょ」

 授業、という言葉を聞いて、イナは納得したように手を叩く。

「あぁ言ってたな。おう、してもらうんだから多少は手伝わないとな」

「そりゃ助かる。ほれ、持ってけ」

「うっ、と。これは……ホログラムのプロジェクターか」

 イナはアーキスタから大きな輪の様な機器を受け取りながら、それを思い出す。

「そ。ミュウはこれ持ってけ、俺はリモコン」

「……いやそれ指示棒じゃねえか。しかもお前はリモコンって。俺だけ重くないか?」

 二人は互いに運ぶものをポケットに入れて、イナを無視する。

 白々しい。

「おいおいおいおい。聞いてますか、おい」

「筋トレの一環だと思え。ほれ閉めるぞ」

 適当な理由で持たされたことに不満と共に溜息を吐きつつ、イナは渋々と機材室を出た。するともう二人は先に進んでいたので、慌てて追いつく。

「おおそうだ」

 自身にそんなつもりはないだろうが、アーキスタはわざとらしく何かを思い出したような動きをする。

「イナ、折角だからお前の事も教えてほしい。お前が異世界から来た、なんてことを信じない奴がほとんどだからな。その辺りをはっきりさせたい」

「ああ、いいけど。どうやって?」

「先にお前が自分の世界の事を、ついでにこの世界そっくりのアニメの事を話して、その後で俺達の世界の事を話す。こうすればお前の世界のこと、そのアニメとの相違点を見つけることができる。後者はともかく、前者には期待してるぞ。どんな世界から来たのか、俺は実に興味深い」

「ああ、まあ、あんまり期待しないでくれ……」(とりあえず、世界統合は言うべきだな。あとは――)

 イナは早速頭の中で何を話すかを考えながら、階段を上がっていく。それを考えている途中で、全く関係の無い疑問が生まれたので、すぐ言葉にした。

「その授業には、誰が参加するんだ?」

「もちろん俺とミュウは参加するし、お前も決定。一応講義室使うからある程度の人数は入るし、どれ、一斉送信で呼びかけてみるかね。あ、お前らには送らないようにするから安心しろ」

 ポケットからプレイスフォンを取り出すアーキスタを、イナが止める。

「送るかどうかは勝手にしてくれりゃいいけど、まだ5時過ぎだろ。大丈夫なのか?」

「メール見て来たいと思った奴が来りゃいいだろ。ま、この時間なら搭乗者は起きてるだろうし……レイアやシエラなんかは来るだろうな」

 かなり適当なアーキスタに、イナはどこか呆れを感じた。

(こんなのが司令官か……いや、まあ、いつもこんなじゃないのは分かるんだけど)

「んじゃ送信と」

「……あら? 時刻は決めてないわよ。書いたの?」

「7時にしといた。待つのも面倒だからな」

(勝手なこって……)

 イナは、アーキスタが終始このキャラだと思うと、レイアと同じくらい苦労しそうだと思った。


 目的地である講義室に着くと、イナは教卓の傍にプロジェクターを置いて一息ついた。

 ふと周囲を見渡すが、目立った汚れなどは見当たらなかった。

「綺麗なままなんだな」

「ブリーフィングなんかでたまに使うからな。埃っぽいのもなんだし」

 アーキスタは天井からプロジェクター用のスクリーンを下ろしつつ答える。

 その横で、ミュウは指示棒を伸ばしたり縮ませたりして遊んでいる。やはり年相応、ということだろうか。

 イナがそんなことを思っていると、アーキスタがイナに向けて小型の記憶端末を投げた。イナの世界で言えば、USBに近いものだ。当然のように見覚えがあったイナは、慣れた手つきでそれをプロジェクターに差し込む。

 すると、プロジェクターから上に向けて光が発せられ、様々なデータが立体映像となって現れた。

「ちゃんと映せるな。よし、一旦消してくれ」

「ほい」

 アーキスタの指示通りに、イナは赤いボタンを押してプロジェクターの電源を切る。それに合わせて、光と立体映像が消える。

「まあこんなもんでいいか。こっちはこの世界の事を話すだけで十分だしな。頑張れよ、イナ」

「頑張るも何も、話すだけだろ……」

「可愛くないな。頑張れと言われてんだから期待に応えるように頑張れよ」

「へいよ……」

 感情のこもっていない返事を返すと、イナは立ち上がって大きく後ろに反る。

「んー、どうすっかな。ちょっとメシ食ってきていいか?」

「今、は……まだ6時じゃないのか。余裕があるとはいえ、10分前には来とけよ」

「おう、了解」

 イナは首からタオルを取って頭に巻き、講義室を出て大きく伸びをした。

 ――と、気が付くと目の前にメイド服の女性がいた。

「のぅわっ!?」

「お早う御座います、スレイド様」

 一瞬焦りはしたが、イナはすぐにディータだと気付き、慌てて頭を下げる。

「あ、お、オハヨウゴザイマスっ!」

 その様子がおかしかったのか、ディータは微笑む。

「昨日の様な喋り方でも、構いませんよ?」

「あ、いや、ううん……年上、だよな?」

 戸惑いつつも元の口調に戻し、イナは問った。

「ヒミツです。女性の体重と年齢はトップシークレットですから」

(まあ、雰囲気からして二十歳越えてるだろうな……それでも十分か)「そうか……ところで、いつもその服なのか?」

「? ええ。おかしいですか?」

 イナは強調するところは強調されているメイド服を目のやり場に困りつつ見ながら、ついには目を逸らす。

「いや、別に……それより、何でここに?」

「少し早く起きてしまったので、数時間ほど警戒をしておりました。万が一泥棒でも入っていたら困りますからね」

「……」(本当に使用人気質だな、この人……やっぱりモブか?)

 根拠もなくそんなことを思っていると、ディータがイナの目前にまで顔を近づけていた。

「わ」

「大丈夫ですか? ぼうっとしていましたが。お疲れの様なら、私が一度浴場で……」

「な、ななな何をっ!?」

 突然そんなことを言われ、イナは赤みの引いていた顔を羞恥で再び赤くした。

(そういう、キャラか……! レイアに、似ている!)

 頭の奥が痛くなるのを感じていると、当の本人――レイアが現れた。

「わぁぁああっ」

「どうした、驚き過ぎだろう。……おや、ディータ。久しいな」

「レイア様。お久しぶりです」

(……知り合い? いや、ディータは支給部の人間だ。知っていても不思議じゃないか)

 二人の美人を交互に見つつ、イナはこの場の状況を理解しようとする。

「レイア、なんでここに」

「ん? 朝風呂に入ろうとしたら、ラルからメールが来てな。ここでやるらしいから少し早いが来てみただけだが」

「そうか……」(案外普通の理由だった)

「あれ。そんなメールが来ていたのですか?」

「珍しいな、お前が気付かないとは。プレイスフォンはどうした」

 レイアが自分のプレイスフォンを見せながら言うと、ディータはスカートのポケットを探る――表情から察するに、忘れたらしい。

「やはりお前も人間か」

「何? ここにはそんなに人間離れした奴がいるのか?」

「わりとな」

 素っ気なく返されたイナは、何も言えなくなる。実際『シャウティア』でもそうだったからだ。

「すみません、私はプレイスフォンを取りに戻ります。また後で」

 頭を下げてから体を180度回転させたディータは、小走りでその場を去っていった。

「また後で、と言うことは見る気満々の様だな」

「………………はぁー」

 なんだか急に気が重くなったイナは、レイアを誘って食堂へと向かうのだった。


 1階にある、かなりの広さを誇る食堂には、早朝ながらも数十人の隊員がいた。

 そんな中で、イナは適当に白飯と味噌汁と焼き魚という和食メニューを頼み、それらの乗ったトレイを持って空いた席に座った。その隣では、レイアが既にこんがりと焼けたパンを齧っていた。

 日本支部における朝食は割と豪勢である。それは料理に長けた隊員がいるのだからでもあるが、ヒュレプレイヤーによる食材の生産があるからこそのものである。一応その知識があったイナは、厨房に立つ料理人達に心の中で感謝した。昨日も昼食時に来てはいるが、人混みのせいでそこまで気が回らなかったのである。

(にしても朝からよくやるな。根っからの料理人……かね)

 白飯を口に運びながら、イナは横目でせっせと動く料理人たちを見る。あまり声を出しているようではないが、隊員達からの注文通りに調理して出している。

「どうしたイナ、食事中によそ見をするもんじゃ――ああ、あいつらか。慣れない奴にとっては違和感を感じたりするだろうが、ある程度の施設を利用している支部なら、大体こんなものだ。とは言っても、日本支部(ここ)ほど整っている支部はそう無いがな」

「まあ、国一つ丸々支配してる時点で結構特別だけどな。でも確かに、日本だからこそだよな」

「……んっ。そうだな。第2次世界大戦の後から平和主義国としていたのが大きな要因だ。おかげで外国は迂闊に手が出せず、日本にまで戦火が広がることはなかった」

 レイアの話を聞いていたイナは、その途中で首を傾げた。

「悪い、俺が見落としてたのか知らんが……なんで平和主義国だと被害を受けなかったんだ?」

「ふむ……例の授業で説明するものかと思うが、まあいいだろう。ヒュレプレイヤーとただの人間の差別があることは?」

「知ってる」

 レイアが聞いたのは、この世界が持つ大きな課題の一つである。この世を支えることのできるヒュレプレイヤーと、それができず、ただ彼らの生み出した、もしくは天然の材料から何かを成すしかない。そうなると、やがて持つ者と持たざる者の間に確執が生まれた。その結果、かつての世界大戦の火蓋を切ったのだ。

「なら続けよう。国ごとのヒュレプレイヤーの数は極端に異なる。この世界の資源はヒュレプレイヤーがほとんど生み出していっていると言ってもいいだろう」

「あー、金銭もそんなに価値ある物じゃ無いんだってな」

「ああ。もちろん金銭の実体化は国際的に法で禁じられてはいるが、資源がほぼ無限に出せるヒュレプレイヤーが数十人いればその国はやっていける、と言われるほどだ。貿易をしている国も、もうほとんどないだろう」

「しているのは、ヒュレプレイヤーが皆無の国」

「その通り。しかしその国は、ヒュレプレイヤーが実体化したもので作った物と同価値、もしくはそれ以上の価値がある物を作れないという技術的な問題を抱えていることが多い。いわゆる発展途上国のことだが」

「そこで、戦争か」

 イナは味噌汁の入ったお椀を持ち上げ、音を立てないように少し吸った。

 レイアもまたパンを齧り、それを牛乳で流し込む。

「だな。無いものは作るしかない、しかし作る者がいない。となれば残る手段は奪取――結果、戦争になるわけだ」

「でも待てよ。発展途上国が先進国に勝てる術があるのか?」

「先進国だからと言って勝利が確約されているわけではないが――まあ、普通に考えれば勝てないだろうな。実際、途上国側は技術的に劣っていたし、負けた」

(そう、その結果、連合軍で戦うことになった兵士が増えていったんだ)

 負けた国々は先進国側――今で言う常任理事国によって支配され、現連合軍の一部となった。戦いを望んでいない人まで、有り余るエイグを動かす為の歯車として扱われたのだ。そして、それは現在でも変わっていない。

 そんな国を救うために、プレイスは近いうちに解放作戦を始めるのだ。

「その結果がドロップ・スターズ前の世界だ。既に日本は平和主義国となっていたが、それ以外の国は相も変わらず睨み合っていた」

「でもって、その後のドロップ・スターズだろ」

「ああ、世界中で壊滅的な被害があった」

 ドロップ・スターズ。時間が正しければ、3年前に世界中に落ちた小型隕石群のことだ。その中からエイグが発見され、現在の――第3次世界大戦が始まってしまった。

「ま、この話の続きは後で良いだろう。メシは冷めると旨味が激減する、早く食べてしまえ」

 言って、レイアはサクサクと音を立ててパンを齧る。

(別に急いじゃいないんだがな)

 思いつつも口には出さす、イナは黙って魚の皮を割いて中の骨を除こうとして、ぎょっとした。

「ん? どうした、何か入っていたか?」

「え、いや……これ、どうなってんだ? 骨が」

 イナは箸で骨の無い魚を指しながら、レイアに聞く。

 レイアは何食わぬ顔で、「ああそれか」と言う。

「ふふ、お前のいた世界はまだまだ発展が足りないようだな。少々地味だが、これくらいの事を可能にする道具の一つや二つ、あっても不思議ではないぞ。そんなことでは、これから驚いてばかりだぞ」

「そんな、もんかね」

「そんなもんだ。さて、私は先に行っている。時間があるからと言って遅れるなよ」

 レイアは手に付いたパン粉を皿の上に落としてから牛乳を飲み干し、食器全てをトレイの上に乗せて立ち上がった。そのままカウンターの端の食器返却所にトレイを置いて食堂を出た。

 そんな手際の良い彼女を見て、イナは小さく溜息を吐いてまた白飯を口に運んだ。

(マイペースだねえ……)

 しっかりと米を噛んで味噌汁を流し込み、魚の身を食べ、それをおかずに白飯を食べる――それを繰り返していると、イナは背後に誰かがいる気がした。もちろんイナに気配を察知する能力などないので無視したが、どうしてか気になってしまい、箸を置いて振り向く。

「およ? 邪魔しちゃったかな」

「……アヴィナか。驚かせるなよ」

 そこにいたのは、朝でも変わりなく活気に満ち溢れている少女――アヴィナだった。ニコニコしながら彼女はイナの右に座り、両手で頬杖をついてイナを見つめた。

「なんだよ」

「別に何もー? することもないしねー」

「じゃあ先に講義室に行ってたらどうだ? なんだか嫌な予感がしてならない」

「嫌な予感?」

 アヴィナが片方の手を曲げ、頬杖をついたまま頭を傾ける。

「人が多くなりそうだってことだよ」

 言いながらまた白飯を口にし、音を立てないように噛む。

 イナはあまり人混み――と言うか、大勢の人間が周囲にいることをあまり好まない。先程レイアの事をマイペースだと思った彼だが、実際は彼も十分と言っていいほどマイペースなのだ。悪く言えば、自己中心的である。だがこれは優しさか、彼はアヴィナに自分のように人混みの中にいてほしくはないと思い、ああ言ったのだ。

「僕はー、みんなと仲がいいからー、平気なーのだー!」

「…………そうか」

 唐突に聞いたことのない歌(恐らく彼女の自作)を聞いたイナは数秒の間硬直するが、すぐに気が付いて食事を再開する。

「ちょっとー。反応なしは酷いよ」

「正直なところ、どう反応していいのかさっぱりだった」

 イナは逃げるように早々に食事を終え、食器返却所にトレイを置く。

 アヴィナは彼の背を追って来たので、イナはそのまま食堂を出た。

「そう言えばアヴィナ、メシ食ったのか」

「もー食べたよ。それよりイーくん、ア『ヴィ』ナって言いづらいでしょ? なんか適当に呼んでいいよ」

「適当、つったってな……」

「僕みたいに、アーちゃんとか」

「……すまん、さすがにそれはちょっと」

「むー、となるとちょっと変わった愛称とかかな」

「愛称? そんなのあるのか」

 イナは首を傾げた。『シャウティア』の中に、アヴィナの愛称などなかったからだ。精々、アーキスタがラルと呼ばれるくらいで。

「ないよ。だからイーくん作って?」

「……作って、と言われてもな」

 今までイナは愛称など作ったことはないが、愛称を持つキャラクターは何人か知っていたので、それを頼りに何とか作ろうとする、

 こうなるのも、アヴィナの無邪気な表情と性格からだろう。彼も無意識の内に彼女を信頼しているのだ。

「てか、そんなの俺が作っていいのか?」

「隊長さんや司令さんにはお願いできそうもないし、ミュウはめんどくさがるし、シー姉含む他の人達はネーミングセンスないし。もうイーくんしか頼れないの」

「なんつーか、存外平和な組織だよな……」

「ここだからこそだよ。それはそれとして、ほら早く早く」

 急かすアヴィナから目を離して、イナは天井を見つめながら歩く。

(アヴィナって名前が長くないしな……省略のしようが無い。これもう、第2の名前を――)

 ここまで考えたところで、イナは心の中で落胆した。『アヴィナ・ラフ』という名前自体、彼女を助けた者に名づけられたものだ。孤児だった彼女には、元の名前があったはずなのである。となると、今からイナが付けようとしているのは、愛称などではなく第3の名前ではないか――そう思うと、彼はとても申し訳ない気持ちなった。

「なあ、アヴィナ」

「あれ、思考放棄? で何」

「まあ思考放棄っちゃ思考放棄なんだが……今回俺は、むしろお前に新しい名前を付けることになりかねんと思っているんだが」

「べっつに僕は構わないけどねー。それに、名前が考えられないなら無理に考えなくてもいいよ」

「……そう言われると、作りたくなるな。待ってろ、近いうちに作ってやる」

 決意の籠った目――と言うより、ただの負けず嫌いとも取れる。とにかく作ると決めたイナは、講義室までの移動時間を利用してひたすらアヴィナの名前を考えていた。


 だが――結局いい案は出ず、二人は早々に講義室に到着した。

 室内に入るなり、イナは絶句してアヴィナの名を考えることなど忘れてしまった。代わりに彼の頭の中では、『人混み』という単語が暴れ狂っている。

 それもそのはず、講義室内にはあらかじめ用意されている椅子では足りない数の人間が所狭しといた。イナは思わず気絶しそうになった。

(俺、この人数に見られながらまともに話せるかな……)

 緊張と不安で満たされ、頼りない足取りでアーキスタを探す。イナが頭を左右へ振りつつ探していると、すぐに見つかった。

 扇の形をしている教室の端――扇で言えば先端部分だ。そこにアーキスタとミュウがいた。端末のキーボードを叩いているのが見えるが、何をしているかまではわからない。

 とりあえずイナはアヴィナと別れ、腹をくくって人混みを掻き分けて二人の下へと辿りつく。

 アーキスタがそれに気付き、イナの方を向く。

「お、来たな。ちと早いが……まあ、御覧の通りだ。今すぐ始めてくれても一向に構わんぞ」

「予想外の集まり様ね。アンタはそれだけ興味深い存在ってことかしら」

「ま、なんでもいいさ。今からお前がプレイスの奴らに認められるように俺が手伝う。何せ見てるのはここの奴らだけじゃなくて、他の支部でも――て、おい?」

 アーキスタが言い終わる前に、イナは既に青ざめた顔で口から僅かに泡を噴き出していた。

 イナは、極度のあがり症である。緊張にかなり弱いのだ。人混みを嫌う原因の一つでもある。

「……おいおい、耐性ねえなお前」

「いや……今お前、他の支部でもって……世界中に俺が晒される? ふざけんじゃ……」

 おまけに目立つのをかなり嫌っている。――と言う割に、シャウティアに乗っているときはあまり気にしていないようだが。

「まあとにかく、まだ開始時刻までは少し時間がある。今のうちに呼吸を整えとけ」

「整える前に死にそうなんだが……」

「気合で何とかしろ。ほれミュウ、早いとこ片付けるぞ」

「さっきからやってるわよ。そっちも口じゃなくて手を動かして」

(身分の違いは在れど従兄妹だからそういうのは気にしないのな……)

 そう思いながらイナは用意された席に座り、目を閉じて気分を落ち着け――られなかった。

 耳をふさいでも遠慮なく鼓膜を揺らすであろう隊員達のざわめきは、まるでねっとりとした油の様な感触を覚え、気味が悪かった。

「お、そうだ」

 また唐突に、アーキスタが口を開いた。

「ちと構成を変更する。あんまり気にしなくていいが、打ち合わせ無しでもやれるようにする」

「どんな感じに?」

「そっちが合わせてくれりゃいい。することはあんまり変わらんからな」

「ああ、うん……了解……」

「心配だねえ、まったく。ま、どんなに強い力を持ってても、中身は子供ってことか」

「うっせえ……」

 気の抜けた声で返事するとアーキスタは苦笑し、ポケットからトランシーバーのようなものを取り出した。

『あー、あー。テステス。――よし、お前らそろそろ時間だ。ここで軽くガイダンスをしておこう』

 どうやらトランシーバーと思しき物はマイクらしく、部屋に設置された大型スピーカーから音量の大きいアーキスタの声が発せられている。

 その声を聞いた隊員達は即座に黙る。

(統率力……)

『本授業では野次を飛ばすのは禁止する。まあいつものことだが……その代わり、質問は自由だ。もちろん拒否権はあるから、イナ。お前も答えたくないものや、答えられないものはばっさり切ってもいい』

「へーい……」

 一瞬イナに視線が集中し、彼は胸に槍が何本も刺さる気がしていた。

『てことで開始時間までに軽く構成内容を伝えておこう。まずこいつは入りたてホヤホヤのド新人だから、ウチのことを紹介する。その後でメインイベントだ、しっかり聞いとけよ』

(さっき言ってたのはこのことか……まるで俺は転校生か何かだな)

 そんなことを思っていたら――スピーカーからアーキスタの声ではなく、学生には聴き慣れているであろう、授業の始まりを告げる鐘の音が鳴り響いた。

 アーキスタはポケットからもう一つマイクを取り出し、イナに投げる。

『授業開始だ。着席』

 数秒前とは打って変わった雰囲気を出すアーキスタに、イナは不思議と気圧されていた。緊張することも忘れてしまうくらいに。

 イナは無意識の内に背筋を伸ばし、向かい側に座るアーキスタと顔を合わせた。

「スタンドがあるだろ、そこにマイクを置け」

「あ、ああ」

 恐る恐るマイクをスタンドに設置し、イナはそのスイッチを入れる。

 ブツン、と言う音で――授業は始まった。

「さて、改めまして――ようこそ、イナ・スレイド。ここは反連合組織プレイス・日本支部だ。所在地は千葉県、戦争の被害に遭ったこの場所を修復して基地として使用している。他の支部と比べてもここが一番豊かであるのは、日本が平和主義であるおかげであり、ここがプレイスの総司令部とも言える場所であるからだ。隊員は全14652人、その内、約四千人がヒュレプレイヤーであり、約六十人がヴェルク搭乗者だ。特に制限が無い代わり、裏切り行為の類は一切認められない。説得の余地なし、発見次第処分される」

「安心してくれ、俺は裏切らない」

「ま、これまでに裏切りが起きたことはない。それもウチの自慢の一つだな。――支部の話に戻そう。ここは過去市街地だったものを修復して利用している。大きく分けて東区、西区、南区が存在し、東区にはホテルを利用した居住区があり、近くには支給部がある。西区には部品開発工場だったものを利用した格納庫や開発研究部がある。最後の南区がここだ。東区から近く、食堂や講義室、大浴場があり――まあ、用途は様々だ。講義室はブリーフィングルームとしても使うから、位置を覚えておけよ。まあ、区なんて言ってもさほど広くはないんだが」

「あ、ああ。了解」(大体は同じか……にしても、東区とか名前あったんだな。つか、実質大学部分は南区だけなのか)

 細かな部分に感心している間にも、アーキスタは次の話題へ移行する。

「次に、主要な支部を伝えておく。イギリス、フランス、韓国――まあ、他にもあるにはあるが、ここに匹敵する規模じゃない。イギリスとフランス、と近いのは近くに連合の重要な基地が多数存在するからだ。韓国も同様だ、すぐそこに中国があるからな」

(これも、同じ)

 イナは黙ったままアーキスタの言葉を一つずつ噛みしめるようにして、相違点を探す。

「そうだな――ここに居る奴だけでも十分だろう、ヴェルク搭乗者は出てこい」

 アーキスタが隊員達に視線を送ると、その中から約十人が立ち上がり、前に出てくる。

 屈強そうだったり、知的だったりする男がいる中で、そこには当たり前のように、レイア、シエラ、アヴィナ、そしてディータがいた。

(シエラ……やっぱり来てたか……)

「さすがに全員じゃないな、まあいい。こいつらは隊員の中でも地位の高い搭乗者――江戸で言えば武士の様なものだ。搭乗しているヴェルクが改造されているかどうかは関係なく、皆同じヴェルク搭乗者。それだけで十分のはずなんだが――まあ、いるんだよ。才能持ってる奴が」

 アーキスタは視線で、その才能を持っている少女達を見る。

 その少女達は苦笑したり、微笑んだりしている。

「レイア・リーゲンスに、シエラ・リーゲンス。姉妹揃って搭乗者で、数日でヴェルクを乗り回すようになったバケモンだ。シエラは経験が足りんからまだだが、そう遠くない内にヴェルクを改造する予定だ。アヴィナは言わずもがな、小柄な体躯に見合わない筋力と並外れた火器管制能力が買われて、最近シアスに改造された。ディータはコツコツと努力して、シエラ同様に改造の予定がある。他の奴らは改造を望まなかったり、まだ経験が足りなかったり、だな。その代りにパーツ交換で独特の機体に乗っている」

(ああ、格納庫で見た独創的なヴェルク……)

 昨朝のことを思い出し、イナは何とも言えない顔になる。

 だがふと疑問が生まれ、空気を読んでから口にする。

「質問良いか?」

「どうぞ」

「それだけの手練れがいるんだろ? ここの守りは十分じゃないのか」

「そう言うと思ったよ。だが残念だったな、殆んどかこの戦いからのダメージが修復されてないから、まともに動かない。昨朝の戦闘だって、本来ならもっと出せたんだぞ?」

「でも、整備員とかはみんな頑張ってたけど」

「そりゃ修復作業中だからだろ。奴らに休みはほとんどないぞ」

「そう、か……」(答えはアニメと同じか)

 イナが考えを整理すると、アーキスタは「そういえば」と手を叩いた。

「お前もしょっぱなからエイグ乗り回してたよな。おめでとう、お前もバケモンの仲間入りだ」

「え。あ、おう……」

「ふふ、仲間だな、イナ」

「バケモンなんて言われて嬉しい気はしないけどね……」

「ま、大体こんなもんでいいかね。戻ってくれ」

「はぁい」

 アヴィナが返事して、ヴェルク搭乗者達は人混みの中へ帰っていく。

 珍しくアーキスタが溜息をつくが、すぐに元の表情に戻る。

「さぁて、前座はこの程度で良いだろ。メインイベントを始めようか」

 アーキスタはにやりと笑い、イナに期待の視線を送る。いや、彼だけでない。他の隊員達も皆期待の視線をイナに集中させている。

「…………」

「どうした、黙ってちゃつまんねえぞ」

「あーもう、分かったよ」

 半ば自棄になりながら、イナはスタンドからマイクを取って隊員達の方を向いた。

 おお、と歓声が上がるが、イナはなんとか耐えて口を開けた。

「俺はイナ・スレイド――本当の名前は瑞月伊那だ」

 唐突な告白に、隊員達がざわめく。それはシエラ達も例外ではなかった。レイアとアーキスタはやっぱりか、という顔をしているが。

「へえ、どうして偽名を?」

「それはまあ、なんというか……」

「なるほど若気の至りね、お前ら察してやれ」

「ああもう! そういう言い方すんな!!」

 アーキスタの余計な言葉に顔を赤くして、イナは叫ぶ。

「ま、そういうことなら話は早い。イナ、ちっと話すのは待ってくれ。ミュウ、検索結果は?」

 名前を出されたミュウは口も開かず、両手で×を描いた。どうやら、瑞月伊那という人間もいないらしい。ということはつまり、やはりイナがこの世界の人間ではない可能性が強くなってきた、ということだ。

 また隊員達から歓声が上がる。

(そんなに珍しいかよ……)

「つーことで、そこのミヅキ君に説明を頼もうか。ちなみにお前としてはどう呼ばれたい?」

「……スレイドでいいよ。差別化したい」

「じゃあスレイドで。お前ら間違えんなよ」

 それぞれ言葉は違えど、タイミングの一致した返事。

 イナはもうなんだか面倒になってきたが、なんとか自分でやる気を出す。

「今度こそ、説明を頼もう。お前はどこから来た」

 急にシリアスな雰囲気を出すアーキスタの表情も相まってか、イナの中でやる気が溢れようとしていた。

 イナは深呼吸して、言った。

「俺は西暦2055年の、地球からやってきた。『やってきた』、という表現が正しいのか知らんが……」

「……西暦、2055年? 何かの冗談か?」

 アーキスタだけでなく、皆が目を丸くした。その反応はとても正常なものである。なぜならこの世界は今、西暦2032年であるはずなのだから。

 つまり彼らにとって、イナは未来人であるということになる。

 この反応が想定内だったイナは、落ち着いて言葉を続ける。

「真実だ。未来から来たのなら、現在――2032年で合ってるか?」

「あ、合ってるが」

「なら、俺の戸籍データが無いのも当たり前だ。そこの話をしたいのは山々だが――とりあえず、俺の知る地球のことを話そう」

 イナ以外の隊員達は皆息を呑み、次の言葉を待った。

「俺の知る地球には、実質国が一つしかない。国連が発表した、世界統合の結果だ。世界統合というのは、まあなんというか……平和になったから、その念押しって感じだな。特に変化もない」

「国連が、ねえ。……続きを」

 顎に手を当てて、アーキスタはイナに説明の続きを求める。

「そうだな……こっちの国連はアメリカにある。最近じゃ兵器を作ってるって噂があるが……」

「兵器?」

 ミュウが首を傾げた。疑問を持つのは彼女だけでなく、世界統合の話を聞けば誰でもそうだろう。

「あくまで噂だ、誰も信じちゃいないさ。……お偉いさん方は、相変わらずだがな」

「そいつはこっちもだ。政治家なんてのはいつだって憎まれ役さ――おっと、すまんな」

「いや、いい。つっても、何話したら分からないんだが。何か知りたいことがあれば、聞いて欲しい」

「聞きたいこと、ねえ。お前らあるか?」

 アーキスタが聞くが、隊員達から質問しようとする者は居ない。

「世界情勢もまあ、平和みたいだし……テロとかはなかったのか?」

「全然、だな」

「となると、特に知りたいことも無いな。次に進もうか」

「次……」(アニメの『シャウティア』の話か)

 イナにとっては、ここからが本番である。世界統合の事しか話せていないので、まだ彼は話したりていなかった――緊張など、とうに忘れて。

「そうだな。年代や過去あった出来事も、大体はここと変わりない。色々と見たが、差異が無いのはよくわかった。さっきお前に教えてもらった通り、今もアニメの始まりも2032年だ。……詳しいことは言えんが、この世界と俺の知る世界は別物なのかもしれない」

「まあ、理由は色々考えられるが……たとえば?」

「展開が違った。昨日俺が入隊してすぐにブリュードが来たが、アニメではツォイクの空戦部隊が来た。レイア、アヴィナと共に撃退したのは確かだが――ブリュードが来るのは、もう少し後のはずなんだ」

「なるほど」アーキスタが腕を組む。「展開の省略……かね。ちなみにこの後はどうなる?」

「制圧戦だな。そこに至るまでは今と同じだ」

「地味なとこは省かれた、ってことか」

「らしいな。……その言い方だと、神でもいるような――」(――神?)

 イナは自分で発した『神』という単語に、自ら反応する。

 『シャウティア』における神とは、呆気ない黒幕として視聴者の印象に残ったであろう黒い龍iaのことである。

 その力をあまり見せることなく撃破されてしまったのだが、本来ならもっと人知を超越した能力を持っているはずなのである。

 もしこの世界にもiaがいるのだとしたら、今回の件に関わっているかも知れない――イナはそう考えたのだ。

「どうした、神がいるとでも?」

「……もしかしたら、な。すまんが、やっぱり詳しくは言えん」

「言動から神が居るかも知れないことが分かって嬉しいさ。続きはあるか?」

「いや、ない……けど、最後に話しておきたいことがある」

「ほう、どうぞ」

「俺がここに来るまでの過程だ。しょうもなく思えるかも知れんが……俺は、父親に『主人公』をプレゼントされた。そのプレゼントを受け取るときに、俺はいつの間にかこの世界に来ていた」

「ふむ……主人公、ね。大方、この世界に主人公として君臨させたかった、ってところか。となると、お前の父親はこの世界という舞台を『用意』したことになる」

「用意?」

「お前の言うアニメの世界によく似せた、ヴァーチャル世界……なんてな」

「まさか」

 イナはアーキスタの考えを鼻で笑い飛ばした。アーキスタも同様に笑う。

(ヴァーチャルなら、現実とは無関係だから無視しても構わない……そう言いたいのかよ)

 彼の考え方を知るイナは、言動からなんとなく察す。しかし、真実は定かではない。

「ともかく、お前の目的は戦いながら父親につながる手がかりを探す、ということか」

「そうなるな。ま、あんまり期待しちゃいないが」(色々気がかりはあるがな……母さん……千佳……)

 たった一日見ていないだけで、ここまで不安になるものなのかと。イナは身近な人と言う存在を思い知らされた。

 しかし、父親・孝一はその限りではなかった。あまり人間性を知らない上、現時点で自分をこの世界に送ったかも知れず、疑いの標的でもあるのだから。

「つまるところ、お前は未来から来たとは思ってないと」

「つか、そもそも俺らの世界で第3次世界大戦なんて起こってないし、隕石も落ちてない。情報操作で何とかなるレベルじゃないだろ、これ」

「だな……ま、その辺は個人の想像にお任せするか。それより俺が気になるのはこの世界に来た手段だな。異世界へ移動する術があるわけじゃないんだろ?」

「当たり前だろ」

「いや、そもそも異世界、という解釈がおかしいのか? むしろ平行世界……」

「アニメを平行世界扱いするの? それなら、人は腐るほど世界を生み出しているし何度も平行世界を潰されてるわよ」

 今まで黙っていたミュウが口を挟んでくる。彼女も話したくなったのだろう。彼女はホログラムの表示制御役で前にいたのだが、まだその役割を果たすエイグやこの世界の話題になっていなかったので、暇を持て余していたのだろう。

 尚、隊員達の殆んどが頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げている。

(あれ、この話なら……俺の考えを出せる?)

 イナは誕生日に、孝一に話したことを思い出す。

「――俺の考えだと、アニメに限らず、漫画や小説の話は必ずどこかの世界で起きていることなんだ。それを作者が自分の世界に無意識のうちに伝えているだけで」

「でもそれなら、平行世界を壊す世界が存在してるんじゃないか?」

「誰も、同じ平行世界とは言っていない。――例えば、別の誰かが作った世界が干渉できないものだとしたら」

「随分と限定的な条件ね。けど、面白い解釈」

「そりゃどうも」

 ミュウに褒められ、イナは頬を軽く掻く。

「でもこのままだときりが無さそうね。私の出番も来ないし、次の話題に進めてもいいかしら」

「あ、ああ。すまん」

 少し不機嫌そうなミュウを怒らせまいと、イナとアーキスタは顔を見合わせて頷いた。

「じゃ、ここからは私が先導していくわね。イナ、アンタはエイグの解説を省いたからあんなに短くなったようなもんでしょ。違いがあったら遠慮なく言いなさい」

「……へい」

 イナが返事をする傍で、アーキスタは部屋の隅に移動する。彼はポケットからリモコンを取り出して、プロジェクターの電源を入れる。イナが試しに電源を入れた時に差しっ放しになっていた記憶端末のデータが立体映像として部屋の中に映される。

 ミュウは壁にあるスイッチを押して、部屋の照明を落とす。立体映像を見やすくしたのだ。

 イナは、まるでプラネタリウムでも見ているような気分になる。

「まず『エイグ』という存在についてと、ついででこの世界のことも軽く説明するわ。皆も、復習がてら聞いておいて」

 アーキスタがフォルダから『エイグ』というそのままのタイトルのデータを開く。どうやら従兄妹での連携らしい。

 データには、塗装のされていない灰色のエイグ、または巨大なマンボウ――戦艦型の画像が表示されている。これがエイグの元の姿なのだ。

「エイグ。約40mの人型起動兵器、または全長1000mを越える巨大戦艦を指すわ。そのどちらも、3年前に振ってきた小型隕石群『ドロップ・スターズ』からもたらされたものよ。もちろん戦艦型のは結構大きかったけどね」

「ちなみに、隕石と言っても宇宙の彼方から飛んできたかどうかは不明だ」

 壁にもたれているアーキスタが、マイクを使って口をはさむ。

 イナはそれに頷く。

「大気圏内に突如現れた、だったか」

「そう。それでも降ってきたことに変わりないから、世界中で大規模な被害が発生したの。そこで連合軍が結成されたけど、その目に余る行動に耐えかねた私達は動きだし、現在に至るってわけ。なんで破壊活動なんてしてんのかさっぱりだけど、どうせアンタは知ってるんでしょ?」

「正しいかはさて置きな」

 イナは自嘲気味に肩をすくめる。

「まあいいわ、エイグの説明に戻る。言っておくけど、ウチに戦艦型は無いから人型の方しか説明しないからね」

「お任せするよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて。人型の各部位は同一の規格になってて、自由なカスタマイズができるわ。格納庫に入った時に見たでしょ、色んなの。カスタマイズドって呼ばれてるんだけどね、あのパーツもドロップ・スターズからもたらされたものよ」

 人型エイグの画像が拡大され、様々な文字列が現れる。しかしイナには一切理解できない。

「それとは違う、一線を画したのが改造エイグ。パワードとも言われるわ。他の支部でも少ないし、シフォンやシアスがあるだけでも十分なんだけどね」

 今度はシフォンとシアスの画像が現れる。シフォンは大型のスラスターを、シアスは様々な火器を携えており、どちらも個性的なヴェルクであることが窺える。

「こっちはエイグ関係の部品に人類の技術を加えて、それをカスタマイズに使った結果。作るには搭乗者の豊富な戦闘経験が必要になるの。使いこなす技量という意味でも、クセに合わせた改造をするという意味でもね。……あとはそうね、エイグの仕様かしら。ここが一番で――メインディッシュってところね」

 エイグの仕様、それは謎を挙げればきりがない。BeAGシステムや高性能AI、超小型映写機など、この世界の人類には実現不可能なだけに、ミュウやアーキスタには興味の塊であり、メインディッシュと形容する言動からその心情が窺える。

「アンタも乗ったから大体は知ってるでしょうけど、それはほんの一部ね。早速BeAGシステムから説明していくわ。これは人類が勝手につけた名前で、『エイグになる』という意味の英語で『Be AG』の大文字部分を読めば――バグ、欠陥ってことね。つまりは皮肉よ」

 説明するミュウ自身も呆れている。恐らく、名付けたのは今の連合軍の誰かなのだろう。

「これは搭乗者と搭乗エイグをイコールで結ぶものだけど、そのイコールは完全じゃないわ。アンタも分かるでしょ、AIとの、なんて言うか、意思疎通」

「ああ、戦闘中とかよくするけど」

「あれはつまり、二心同体ということ。イコールで結ばれた結果という解釈もできるけど、完全なイコールと言うには少し怪しいわね」

「……それだけか?」

「まさか。エイグには心臓や肺に当たるモノはあっても、それ以外は無いわ。あっても形だけの紛い物よ」

「……どうせ、貫いたら死ぬんだ。どうでもいいだろ」

「ま、その考えもアリね。そう、エイグは自らの受けたダメージをイコールで結ばれた搭乗者にも与える。破損した部分は体中に埋め込まれた超小型映写機によって機能を止められ、医学的な対処は不可能になる。唯一の手段は、パーツを取り換えることだけ。それも不可能になるのは、肺か心臓、首、頭脳の破損。ここまで来れば分かると思うけど、エイグなんてのは、人間の体長を40mにするだけの道具。――知ってる? プレイスの『ヴェルク』、連合の『ツォイク』、二つ合わせて『ヴェルクツォイク』……ドイツ語で『道具』って言うのよ」

「――知ってる。所詮エイグも戦争の道具でしかない。そういう意味だろ」

「やっぱり知ってるのね、つまんない」

「つまんないのはいいんだが、映写機云々はいいのか?」

 イナが何気なく言うと、それを嫌味か何かに受け取ったのか、ミュウが怒るように頬を膨らませた。

「言われなくてもするわよ。まだ誰も乗ったことのないエイグに人間がコクピット『コア』に入ると、その中でエイグから超小型映写機を体中に埋め込まれる。上手い言い方がわかんないけど、映写機の発射回数は一回だけ」

「質問」

「……はい、どうぞ」

 不承不承と言った感じに、ミュウはイナの発言を許す。

 そんな彼女の態度に少し話しにくくなるが、ここで言わないと機嫌を悪くしそうなのでイナは大人しく言う。

「その映写機を与えたエイグ以外に乗るとどうなる? 例えば、シエラがシアスに乗ったりとか」

「できるわよ。けどおすすめはしないわ、無改造のものはともかく、そいつの癖や好みに合わせてある改造エイグやカスタマイズドにいきなり乗ったら、感覚の違いでまともに戦えなくなるわよ」

「できるのか……」

「ん、何か違うとこあった?」

「あ、いや。アニメじゃ基本的に『専用機』扱いだったんだ。最初に乗った人間にしか、そのエイグは操れないっていう」

「まー、よくある設定ね。でも、ここではそうじゃないわ。ていうか、そのシステムだと自分のエイグがどれか分からなくなるんじゃない? 皆カスタマイズドにしないと区別つかないでしょ」

「アニメだから、って言っちゃえばおしまいだけどな……」

「身も蓋もないわね。まあいいわ、次に行きましょう」

 ミュウの発言に合わせ、アーキスタが『AI』というタイトルのデータを開く。そこにはエイグの頭部の拡大画像がある。

「全エイグに共通しているものの一つ、頭部搭載のAI。はっきり言って、これなしで戦闘をするのは不可能よ。なぜなら、AIは人間で言う脳に当たる器官だから」

「イコールで結ぶものが無ければ、機能しない。そういうことだろ」

「そ。AIは脳。搭乗者が指一本動かすにも、それをイコールで結んでエイグに伝えるにはAIを経由しなければならない。AIの仕事はそれだけじゃなく、搭乗者の思考の処理の補助や整理をしてる。アンタ、ヒュレ武器作ったけど、あのエイグに3D画像データとか入れてなかったでしょ? どうやったの?」

「どうって、記憶の参照? だったっけ」

 イナが思い出しながら言うと、アーキスタとミュウがぎょっと驚いていた。

「おいおいおい。そう言えば忘れてたけど、お前ヒュレプレイヤーじゃねえか。そこら辺は――」

「今はその話じゃないでしょ、置いといて。ええと、海馬内に存在する記憶という情報の塊の管理もしてるわけね。記憶の参照はそれを利用してるの」

「へぇ……」(なんとなくはわかるけど……実際は結構めんどくさいんだろうなあ……)

「質問は無い? じゃあヒュレ関係の話もしたいからさっさと終わらせるわよ」

 ミュウがアーキスタに視線で指示し、『対処』とというタイトルのデータを開く。

「まあここは省いてもいいんだけど、念のためにね。ダメージの共有で機能しなくなるとかいう話したでしょ? あの対処法。ここでは基本的に、損傷の少ないパーツを優先的に別のパーツに付け替えてるの。ちょうど先日のシエラみたいにね。ああいう場合は一度外して新しいパーツを付けるから、ま、人間に置き換えて考えてみれば痛いのは目に見えてるでしょ。だから軽く麻酔をかけて、眠っている間に付け替えるの。そうじゃない、全壊だったりパーツそのものが無い場合は、コネクタが生きてたら形だけのハリボテでBeAGシステムを騙すの。乗っても動かせなくなるけど、死亡は防げるわ」

「質問」

「はい」

「例えばエイグの右腕が取れたとする。そうしたら搭乗者も右腕が機能しなくなる。ではその搭乗者の右腕を切断したらどうなる?」

「やったことないからさっぱりね。けど腕を切ったら、その状態のエイグには乗れるだろうけど、腕を付けたら動かなくなると思う。イコールで結べないことによるバグね」

「なるほど……」

「さて、こんなところかしらね。言うまでもないけど、人間で言う心臓のあるところにコアがあるから、コアを貫かれたら問答無用で死ぬわよ」

「おうおう……やだねえ」

 イナはふと、隊員達の方を見る。静かだ。たぶん、話にあまりついて来れていないのだろう。大丈夫なのか。

 アーキスタは別のフォルダを開き、『ヒュレ』というデータを開く。

 ヒュレと言えば、ヒュレ粒子、ヒュレ武器――『シャウティア』の重要なキーワードの一つである。

「ヒュレ粒子。ヒュレ・バーソンが発見した粒子で、脳から想像という信号を受け取ってその通りに擬態する性質を持つわ。ちなみに擬態、というか実体化したものは『ヒュレ映像』って言うの。バーソンは人間の呼気から――つまるところ、肺で粒子が生成されていることも発見したの。つまりこの世界は、既に粒子で満たされているわ。人間はもう何年もこの地球で呼吸をしているんだもの」

「でも、最初のヒュレプレイヤーがいつ生まれたのかは不明なんだろ?」

 アニメでの知識を持ちだしたイナに、ミュウは頷く。

「そうね、かなり昔からいたのは確かなんだけど。それはともかく、今じゃ3D画像データを想像と同一の信号に作り替えて、その信号を発する機械――映写機ね。その開発が進められているの」

(――待てよ?)「映写機はまだ完成していないのか?」

「ん? そうよ。だからエイグの超小型映写機なんて夢のまた夢よ。どうも想像の信号を解析するのが難しくてね」

(アニメじゃ完成していた……なんだ? 何が違う……?)

 ここに来て明確な相違点を見つけたイナは、驚きを隠せないでいた。だが話を止めることなく、落ち着いてミュウに続けるように言った。

「どうやら相違点を見つけたみたいね。ま、聞くまでも無いみたいだから続けるわ。さっきからヒュレプレイヤーと言ってるけど、それはヒュレ粒子を利用して想像の実体化ができる人間の事。世界中にいるけど、どちらかと言うと先進国に多いみたい。発生確率は不明だけど、『欲の強さ』がキーだと踏んでいるわ」

(アニメは『生まれつき』なだけで、それ以外の説明はなかったな……)

 イナはこれが授業であることも忘れて、ミュウの話に釘付けになっていた。

「ヒュレプレイヤーは想像を実体化するけど、制約があるらしいわ。まず気体やエネルギーなんかの、見えないものは実体化できないわ。これは化学変化を利用すればいくらでも作れるからいいんだけど。あともちろん、人間を始めとする生物も無理。あと、機械なんかの『完成品』は実体化できない。鉄の塊や木材程度の、資源ね。ま、材料が腐るほど出せる分、いくらでも完成品を作れるんだけどね」

 そうやって、この世界は発展してきたのだ。

 そんな中でも、格差が存在する。先程イナが食堂でレイアに聞いた話だ。

「さて、さっきも言ったけど、プレイヤーは先進国に多いの。むしろプレイヤーがいる国が先進国と言ってもいいわ。となると途上国にはプレイヤーが皆無と言うことになる。その分発展も遅れる。貿易をしようにも、先進国は貿易の必要がほとんどないから、できないと言ってもいい。となると残された手段は?」

 イナはレイアの話を思い出した。

「戦争か」

「そう。過去に起きた世界大戦はそんな国同士の戦争。2度も起きてようやく国際連盟を作ったんだから、平和になったかと思ったんだけどね」

「ドロップ・スターズか……」

 平和など一瞬だと、まやかしだと。そう言いたいかのような、突然の飛来。結果的に世界は再び戦争を始めている。理由は違えど、平和から遠のいていることには変わりないのだ。

「じゃ、最後にヒュレ武器についてね。ヒュレ武器は生身でも作れるんだけど、基本的にはエイグ搭乗時に作る武器の事を指すわ。ただ剣を作るだけならいいんだけど、割と複雑な構造を持つ銃火器なんかはAIや画像データの補助が無いと作れないわ。少しプレイヤーの話に戻るけど、能力が強力なプレイヤーはぱっと想像するだけで出るわ。アンタもそうかも知れないわね」

「でも俺、今まで想像を実体化させたことないぞ?」

「そこが謎ね、まあ、これからじっくり解明すればいいと思うわ」

「……終わったか?」

 長々とし過ぎて主催者がうんざりしかけていたらしい。アーキスタが呆れた顔でミュウに言う。

「ええ、こんなものでいいでしょう。イナ、アンタがよく理解してなくても、記憶を整理してるAIの方が覚えててくれるから、心配しなくていいわ」

「あ、ああ」

「そう言えば、お前の乗ってる赤いヤツの説明してないな。……まあ、別にいいか。お前自身よく分かってないんだろ?」

 アーキスタの言葉で、イナも思い出した。シャウティアは主人公機である。それだけ重要な役割を果たしていたのだが――それを忘れるほど、授業に熱中していたらしい。

 だがいざ説明しろと言われても、彼の言う通りイナ自身不明な点が多い。本来、シオンの叫び声に反応して現れ、シオンの乗機となるはずだったのに、あの場所にシオンはおらず、その上イナの声に反応した。謎すぎるのだ。

「悪い、その通りだ」

「別に謝ることはないさ」

 アーキスタはプロジェクターの電源を切り、ミュウは部屋の明かりをつける。

『以上でこちらの番は終わりだ。質問のある者は?』

 アーキスタはマイクの音量を上げ、隊員達に聞く。

 照明に照らされはっきりと見える彼らの顔は、無表情。そこにどんな感情があるのかは見えないが――おそらく、呆れに似た感情だろう。

『そんじゃ解散だ。いつ戦闘になっても良いようにしておけよ』

 パンパンと手を叩き、アーキスタは授業終了のチャイムの代わりをする。

 それを合図に、隊員達は各々何かを言いながら、がやがやと騒ぎつつ講義室を後にしていった。

 そして部屋に残ったのは、イナ、ミュウ、アーキスタ、レイア、シエラ。

 リーゲンスの姉妹は拍手をしながら前に出てきた。

「見事に独走していたな、お前ら。理解していたものはほんの一部に過ぎんだろう」

「それはそれで、隊員達の知識不足が浮き上がってきて心配なんだがな」

 アーキスタが苦笑して腕を組む。上に立つ者として、こういうことも悩みどころなのだろう。

「でもイナ君、これでみんなにもっと知ってもらえたね。期待、裏切らないようにね」

 シエラにそんなことを言われ、イナも苦笑する。彼は期待されることがあまり好きではない。期待に応えられなかった時が怖いからだ。

「ま、これで少しは隊員達との距離も縮まったでしょうね。これからも頼むわよ、ミ・ヅ・キ・ク・ン」

「そうだな」

「普通に無視されたっ! 耐性も何もない!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぐミュウを放って、イナはプロジェクターを持ち上げて講義室を出た。それにレイア、アーキスタと続いたので、シエラは仕方なくミュウを慰めて講義室を出たのだった。

 イナ「一人なのはともかく、俺である必要はあんのかね、これ……『互いの世界を知ったプレイスとイナ。少しずつ距離を縮めていく組織と一隊員の元に、脅威が襲い掛かろうとしていた。次回、絶響機動シャウティア第4話「怒りの心、静める涙」。』…………」

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