世界を見守る者
…………
「まさか、このような事があるとは思わなんだ……」
「また会えて嬉しいわ、エルドレット」
「私もだ……」
閑かな村の裏道で、鳥人は少女に話し掛けた。皆には「エディア」と呼ばれていた、その少女に。
「シェリル、お前はあの時確かに死んだ。私に看取られて、この手の中で……」
「ごめんなさいね。私もあの時知らなかったのよ……この肉体には強力な脱皮蘇生能力があることにね。どう? 昔よりも若く見えるでしょう?」
「ああ、昔のままの美しさだよ……しかし、なぜ今度の事に首を突っ込んだ? なぜ、あの少女たちと?」
シェリルは、やさしい目をしてしゃがみこみ、路肩に咲く小さな白い花と見つめあった。
「セトナの成長を見たかったの」
「ああ、あの青髪の子か」
「あの子は私と同じホムンクルス。あの子がこの先運命に打ち勝てるのか……それを見ていたの」
「そうか、お前にとっては……」
「ええ、年は離れているけれど大切な兄弟のようなものよ。だからセトナには、乗り越えてほしかったんだけど……その、願いは叶ってくれそうね」
「アシュレイ達がいるからか?」
「そう。アシュ君もクロノも、あの子を大切に思ってくれている。私もちょっと手心は加えちゃったけどね……」
「思いやる心か……」
シェリルは花びらを撫でたあとゆっくりと再び立ち上がり、穏やかな目で鳥人を見た。
「そう、ホムンクルスを正しい進化に導くもの……それは、愛よ」
「愛……」
「それは、あなたが私にくれたものでもある……ありがとう、エルドレット……ずっと、あなたのことを愛していたわ、これからもずっと愛してる」
「シェリル……! 私と来てくれ。もう、お前を離したくない!」
「ええ、私も……ただ、その前にやりたい事があるの」
「……それは?」
「あの坊やよ。あの子が何をするつもりなのかに興味があってね…………あの笑顔と余裕の奥に秘めるものが何なのか……考えると心がときめくのよ」
「そういうところも変わっていないんだな、お前は……」
「ふふっ、だから、しばらく待っていてちょうだいね」
シェリルは悪戯な笑顔を浮かべながら、村の外へと歩きだした。




