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疑念

アシュレイと別れたクロノとセトナは……

「ホントに良かったの?」



「別に」



セトナとクロノは夕焼けの草原を歩きながら話す。


「あんたこそ、残らなくて良かったの?」



「アシュ君のお姉ちゃんとして、クロちゃんをほっとくわけにはいかないんだよ」



「もう、あんたは戦わなくていいのに」



「グングニルも覚醒したし、あのリファとやりあったんだから頼りにしてくれてもいいんだよー? 」



「こら! 脇腹をつっつかないでよ! くすぐったい!」



「それにさ……もう一つ理由があるんだ」



「え……?」



クロノは足を止めて、セトナの方を驚いた猫のようなパチクリした目で見た。


「どういうこと……?」



「クロちゃんは、これからラキシスに立ち向かうための準備をするつもりなのはわかってる……けど、あたしはあたしでラキシスに用があるわけ」



「あんたは、お兄様と関わらない方がいいってわかってるでしょ? 戦艦の中で言葉も交わさず私とバカ勇者の家に残ってお兄さまとはバイバイしたわけだからそのつもりかと思ってたんだけど……違うって言うの?」


 「あの時、リリエンタールが言った事が気になってね」


 「あの時……」


 「ほら、あたしがまだヤンデレ状態だった時だよ……リリエンタールは確かに言ったんだ。ラキシスは私を、本当に、愛しているって……」

 

 「あ……そういえば。でも、あんなのは、あんたを説得するための出まかせじゃないの?」



 「クロちゃん、リリエンタールがそんなことを言う人間だと思う?」


 「思う思わないでいったら、思わない……かな。お兄さまとは違って、あの人は嘘は好まない武人だから…………じゃあなに? お兄様の野望は私の思ってるのと違うって言いたいわけ?」



 「うん。ひょっとしたら、もっと奥深い何かがあるのかもしれない……」



 「……」



 セトナの言葉が否定できないクロノは、神妙な顔つきで、これから進むべき道の先をじっと見つめた。自らの兄である人物がどこまでも掴みどころが無い人間である事に歯がゆさのようなものを感じて……

  

 





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