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ハピープヒーブヒヒ!

 戦いは終わりましたぜブヒヒ~おいらは、もうすぐ市場に運ばれてハムにされちまうからこの前書きが最後の仕事になりそうだブヒ~運命だから受け入れているけど、せめて美味しく食べていただきたいブヒ~(by松本養豚場のブタT302号)


俺の意識が再び戻ったとき、そこは空の布団の中ではなかった。太陽の匂いが染み付いた羽毛と生地のぬくもり。どうやら俺は普通の布団の中にいるのでは無いかと思ういや間違いないですファイナルアンサー!


がばっと飛び起きて辺りを見回すと、そこは俺の故郷の俺の家の俺の部屋……違うのは、机の椅子にエラソーにクロノがむちむちした足をクロスさせて座っていたり、セトナが本棚のエロ本をあさってたり……ってちょっと待て!!



「おめーら俺ん家で何してんだよ!?」



「はー、やっと目が覚めたのね。まる1週間もエロ男がダラダラとふて寝して……ずっと監視してた私の身にもなってちょうだい!」



「んなこと、知るか! ってか、なんで生きてるんだお前!?」



「失っつ礼ね! 私が生きてて悪いわけ!?」



「いやいや、だって、お前あのとき真っ二つにされて……まさか今までの最終決戦丸ごと夢オチとかじゃねーよな?」



「違うわよ! 生き返ったの!」



「ほへ……?」



クロノはポンと椅子から立ち上がり、両手をグーにして腰のスカートの付け根あたりに押しあて、相変わらずの不機嫌そうな顔でこっちを見た。正直、今すぐ抱き締めたいくらいなのだが、俺は我慢してダメ人間的対応をする。



「あそこは、いくら死んでも生き返るトコだったの」



 「ほへへ?」



「お兄様は、早い時点で気付いてたみたいだけど、あの場所は練習ステージだったのよ」



「……ほへへー、どういう事スかそれ?」



「少しは自分で考えろっ!!」



「むがっ!? こら、ぬいぐるみを投げんな!! 俺が小さいころから大切にしてるエプロンオニギリザムライパンダさんのぬいぐるみをこんなふうにぞんざいに扱わないでくださいよー!!」



「急に草食ぶんなこのエロ勇者がっ!! ぬいぐるみを大切にしてるとか絶対口から出任せのウソっぱちでしょ!?」



「ウソじゃないもん! ホントだもん!」



「そこまで次はぬいぐるみじゃなくて斧を投げますけどよろしいですか!?



「口では言うけどどーせ投げねーだろ」



「言ったわね! じゃあ手始めにそのベッドの足を……」



話が脱線しかけたところで、まーまーとセトナが俺たちの間に割って入ってきた。



「気持ちはわかるけど、クロちゃんもアシュ君も落ち着きなって」



「おう、流石はヤンデ連盟のリーダー。しっかりしてますな」



「えっへん! ところで師匠、礼の件ですが」



「うむ、なんだね?」



「リファのおパンティーの件です。私もあの時は精神的に錯乱しておりまして見ておりませんでしたからぜひ教えていただきたく」


「ああ、そのことか。うむ、このオパンツ師範改めオパンティー師範は、魔法少女のわさわさスカートの中さえも透視可能なのだだ。勿論ぬかりなく見ておいたぞ!」



「じゃあ、はよ教えてください!」



「それは……純白レースの生地の中心を紅のラインが隔て、漆黒のリボンが蝶がようにそのラインに沿って連なる。あれはまさにヴァルハラの縮図と言よかろう!」」



「おお、それはすばらしい!」


「もー!! こんのスケベザルエロバカ師弟が!! この期に及んで何おかしな方向に持ってってんのよ!!」



クロノをおちょくっていると、部屋の扉が開き、エプロン姿の母さんが得意料理の焼きハム(笑)を持ってきた。いつもの刺激的な格好も何だが、この普通のお母さんルックも若造りな顔と相まって、息子の俺が言うのも何だが危険な男性一発撃沈的フェロモンを発している。ただ、俺にとっては皿の上の焼きハム(笑)のほうが圧倒的に興味があるわけだが。



 「母さん! 大丈夫だったのかいろんな意味で!」


 「ああ……あの後だが、私はあの壮年男性達に連れられて異世界の競馬場にワープしていたのだ」



 「競馬場……カサマツですかチューキョーですか?」



 「それは知らぬが、帰る方法も見当たらく無駄に動いても仕方が無いと判断した私や共に飛ばされた賢者とラキシス坊やは彼等壮年男性と共に暫く競馬を楽しんだ」



 「仕方なく楽しんだのかよ……俺たちが大変な事になっている間に」



 「なかなかあれは面白いものだな。向こうの金は持っていないから賭けることはできなんだが、色々な馬が走っているのを見ているだけでも心が躍った」



 「ハマらないでよね、ギャンブル中毒とかなってヤミ金から取り立て来る勇者とかありえんので」


 「中でも白くてひときわ小さな犬のような馬は凄かった。あの体であれほどの馬力があるとは驚いたぞ」


 「……えー、お聞きしますが、その馬の名前は何とおっしゃいましたか?」



 「ああ、観客は皆あの馬が出てくるなりマキバ……」



 「ごめんなさい、そろそろハムをいただきます」



 「ああ、友達とみんなで食え。おかわりもたっぷりある」



「はーい!」



大量のハムをむしゃむしゃと食べながら、俺は母さんからここまで俺を運んでくるまでの経緯を聞いた。


まず、最初に石にされた3人+1匹だが暫くたち石化は勝手に解けたそうだ。そして、キーニャはスライムを召喚してスイッチに乗せトラップを通過したらしい……その手をもっと早く気付けばよかったのだが、みんな気が焦っていたから誰も気付かなかったのは何ともオチャメである。(ラキシスはどうせ気付いてたけどわざと隠したのだろう)



そのキーニャに、競馬場から戻ってきた(おじさんたちが再びワープさせてくれたらしい。なんだ、あいつら善人だったんですね。)母さん達が合流したそうだ。そして、俺たちのいる前の砂漠的な空間にやってくると、そこにはいつの間にか俺たちの前からフェードアウトしていなくなっていたフィーちゃんがまっていた……そして、俺たちのいるところまでやってきたわけだが、この時すでに、俺はリファの力であの夜空だけの空間に飛ばされていたため、あの場からいなくなっていた。


いたのは、セトナ達「ヤンデ連盟」の面子とリリエンタールさん……遠くに吹き飛ばされたアータンは謎の力で入り口に引き戻され、エディアさんとリリエンタールさんはいつの間にか体力が全開し、クロノに至っては前述の通り完全な状態で生き返った。



「それで、暫くその場で事情を聞いていると、空間が歪曲しはじめ、私達はフィッシャロ湖に戻された。」



「もぐもぐ」



「そして、暫くそこにいると急に、目の前にフィーンセルトと同じ姿の少女が現れた。彼女は<コードブロッカー>と名乗った」



「もぐもぐ」



「そして、私達にあの場所……<プラクティス>について教えてくれたのだ。あそこは、かつてこの世界がゲームであった時、初心者プレイヤーに操作の基礎などを教える場所だったのだ。だから、死んでも生き返るし、トラップも飾りみたいなもので時間が経てば解除される仕組みになっていた」



「もぐもぐ」よく考えたら和訳するとまんまだね。



「そして、説明が終わると、彼女は強い光と共に意識を失ったお前とリファを出現させ、消えた。そして私達はラキシス坊やの空中戦艦に乗せてもらい、ここに帰ってきたと言うわけだよ」

「ごっくん! ……なるほどな、コド美が何も言わなかったのは、安全な場所だから言う必要が無かったと言うことか」



「ただ、リファの暴走を止めなければ世界は消滅していた。それだけはどうすることも出来なかったのだから、お前の行為は無駄ではない。よくやったな息子よ……お前の力でこの世界は救われた。ハインカスタードの名に恥じぬ立派な勇者だ。私も誇らしく思うぞ」



「そこまで何か照れるなぁ〜てへぺろ☆」



 俺の死語(多分)を聞いたクロノは、お茶を両手で持ち、ハムの油を潤さんとすすりながら、ふーっと息を出した。



「でも、あーいうカラクリはやっぱり先に教えてほしかったな。おかげでスッゴく恥ずかしいトコ見せちゃったじゃないのよ……」



「んなこと、気にすんなよ……寧ろ、こっちは貴重なものを見せてもらって良かったと思ってるしさ」



「もー、そう言うのやめてよね! そんなこと言われたら、余計に、恥ずかしくなるでしょ!」



わかりやすく真っ赤になったクロノを見て、あははとセトナは笑った。自分がも半狂乱で泣いていた事を棚にあげるあたりは、こいつらしいと言うか何というか。



「んじゃ、クロちゃん。アシュ君の元気な顔も見たことだし、そろそろ行こっか?」



「え? お前らどこへ行くつもりだ?」



「それはナイショ!」



「また、変な事考えてんじゃねーだろうな?」



「もう、ヤンデレは目指さないから安心してよ」



「は、ってのが引っ掛かるんだけどな……せっかく命拾いしたんだから、危ないことに手を出すなよ? 特にそっちの純ツンデレは危なっかしいからな」



「ふん!」



 クロノは心なしか口元が緩んでいるように見えた。そして、俺から視線を背けて母さんに話し掛ける。



「お母様、美味しい食事をありがとうございました」



「うむ、気をつけてな」


「はい……」



2人の少女は部屋の入り口に向かう。俺は内心引き止めたかった。しかし、それは出来ない事だと、クロノの華奢な背中は語っていた。あいつは何かを覚悟している……きっとラキシスに関わることなのだろう。止められない俺に、せめて言えることは……



「何か困ったらいつでも相談に乗る! また会おうぜ!」



クロノは、こちらを振り返らず、小さくうなずいた。そして、こう言い放つと、颯爽とと扉の外に出ていった。



『あの子の事、絶対に大切にするのよ!』



対照的に手を振りながらバイビーと呑気に去っていくセトナの姿が扉の奥に消えると、俺は窓の外を見た。故郷の空は青く、春の太陽に照らされた渡り鳥達が綺麗な隊列でゆっくりと飛んでゆく。



コンコン



ドアをノックする音が聞こえた。その音は控え目で、やさいしい音だ。



俺は、それが誰なのか容易にわかった。母さんの横を歩き抜けて扉の前に立ち、目を瞑りこう言う。



「……リファ、入ってこいよ?」




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