Sky
遂に決着の時。リファとアシュレイは、互いに最後の一撃を放つ!
果たして戦いの末に待つものとは……!?
俺のからだから今まで感じたことのない強大な力が沸き起こる。それは空よりも青く、青く、青い。輝き澄み渡る風。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
その無尽蔵な力を目の前で水平に構えたファールデクスに集約させ、リファにむけて放つ。まるで巨大なビームのように拡散照射する蒼光は、膨張する月の力に覆い被さり、その進撃を止める。
「なんて、なんて力なの!? ここまで押すなんて!!」
「負けてたまるかぁぁぁああああ!」
「こっちだって!! 全てを出し尽くす!! 勝負だあああああああっ!!」
自分の全てをこの一撃に込める。何もかもを全力で出し尽くす絞りだす!!例えその結果がどうなろうとも決して悔いは残さない残させない!!
「うぉあああああああ!! ああああああああああああああああああああああああああああああ!! 風よ全てを包み込めぇぇぇぇえええええ!!!!!!!」
「はぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! 月よ!!! 全てを無に帰せよっ!!」
お互い咆哮をあげて真正面からぶつかり合う! 力と力の拮抗による摩擦で、爆発的エネルギーが発生し、激しい閃光とともに時空間が激しく震動する!!!
「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「っああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
こうなれば、重要なのは思いの強さだ。気持ちが勝負を決する。だから、おれは、自分の、心にある純粋な想いを解き放つ!!
「リファああああああああああああああああああああ!!」
「アッシュ!?」
「俺はお前のことがすきだああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「ふ、ふわわわわわ!?」
「ほっとけねえ! ほっとけねえんだよ!! ヤンデレだろうがチートだろうが過去に何があろうがお前のことがほっておけねえんだっ!! 俺はお前のことが尊くて、いとおしくて、大切でしょうがねえっ!!」
「!!!」
思いの力の中でも飛びきりの存在、それが愛の力だ。愛と正義が歪み無く重なったときそれは、
「もう悲しい思いはさせない!! リファは、俺が、必ず幸せにしてみせるっっっっっっっああああああああ!!!!!!!!!!!」
「アッシュ!!!?」
その時、力の均衡が崩れた。
風が全てを打ち破る。全ての悲劇を吹き飛ばす。そして、やわらかに月を包み込み、抱擁するようにして互いを打ち消し合い、そして消滅した。
空に残ったのは、全ての力を使い果たした俺たちだけだ……
終わった。
長かった俺達の逃走劇の全てが、終わったのだ。
「……………はは……どうだ…………大した……もんだったろ………?」
「うん……」
ゆっくりとリファが、俺のそばに来た。もはや動く事もできない俺の目の前に少女は立ち、優しく微笑んだ。目から小さな涙を頬に伝わせながら。
「残念だが……引き分けってとこか……」
「いいえ、アッシュ。あなたの勝ちです……私の命は無駄ではなかった事をあなたはその身をもって証明したのですから……」
「そっ……か……じゃあ……俺の言うことを聞いてくれるってわけだ……」
「はい……」
体が心地よさで満たされ意識が遠退いていく。おそらく、次の一言が最後になるだろう。俺は出来る限りの笑みを浮かべる。
「それじゃあ遠慮なく言わせてもらうぜ………………リファ…………生きろ……」
「アッシュ?」
「……俺と同じ時を生きようぜ……楽園じゃない場所で、生きる喜びを分かち合おう……!!」
「……アッシュ!!」
「……約……束……だ……………………」
全てを遂げると、俺は立つ力を失い空に身を委ねた。体も意識も明星に溶けてゆき、根源たる魂は安らかな何かで満たされて広がって行く。
こうして眠りにつこうとする前の今になって、ひとつ、分かった事があった。
……そうか、俺達は「そら」だったんだな……だから、こんなふうに優しく受け入れてくれるのか……ひとつになることができるのか…………
ありがとう。
ありがとう永遠なる「虚空」よ。




