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少女達の一時間

コマンド入力のために動けなくなるアシュレイ。クロノの死により我に返ったセトナと○○党〜山○太郎と仲間たち〜(仮)は、彼をサポートすることになった……

 俺がボタンを押し始めると、俺の周囲に巨大な青い円形のフィールドが現れる。これはいわゆる射程範囲というやつかもしれない……思っていたよりも広くほぼコロシアムないの大半を覆ってしまうほどだ。リファを範囲内にとどめておくのは難しくない。あとは、俺がボタンを押し終えるまで時間が稼ぎができるかにかかっているといって良い。仮に高○名人ばりに一秒間16連射をがっつり続けたとしても5万回押し終えるには大体1時間くらいかかる計算だから、それだけの時間をセトナたちには何としても頑張ってもらわなくてはならない。大変な話だが信じるしかない。



 ……と、言うことでここからは俺視点だと状況が分かりにくいので、ちょっと視点を神視点に変えます。


 暫くのあいだ、女の子達の頑張り物語をどうぞご覧ください〜



 ◆



 「まだ、私と戦う気なの?」



 「悪いね。でも、さっきとはちょっと目的が違うんだなー」



 そう言うセトナ達4人はリファを取り囲む。



 見た目はまるで集団リンチのようだが、優劣はむしろ逆だ。何億人の兵士がかかってきても、彼女は難なく全て駆逐するほど圧倒的な力を持っている。それを「たった4人」で捌くのだからしゃれにならない。



 「最強の相手と戦えるなんて……フフッ快感ね!!」



 「呑気だなぁエディアは……」



 「世界が無くなる瀬戸際になったら深刻になるだけ馬鹿らしいですからね」



 「世界が終わる……か」


 セトナは、まだ迷いが残っていた。アシュレイの言葉で目を覚まされたものの、状況がまだ呑み込めきれていないからである。そして自分の能力に自信が持てない部分があった。



 「セトナ、これからの私達の行動は全て世界の命運がかかっていますからね。アシュレイを守りきらなければリファの力は暴走し全てが終わります」



 「……あの子を止めないと<テラストラ>が無くなるの……本当に?」



 「彼……勇者アシュレイの言葉に偽りは無いでしょう。それに、今のあなたなら信じるはず」



 「そうだね、私もアシュ君を信じる……大事な弟の言うことだからね! それなら絶対に何とかしなきゃ!」



 セトナの覚悟は固まった。ただ、問題は自分の能力だ……<完全依存(パーフェクトディペンド)>は再び発動できる状態にあることは体感で分かったが、リファにいとも簡単に消された事実がある。能力が無効化されてしまうと、並かそれ以下の力しかないため場合によっては他の足を引っ張る事になる恐れがあるのだ。



しかし、クロノの無念を晴らすためにも、世界を救うためにも、何としても最善をつくさなけれはならない。



「うーん、どうしたものかな? エディア。あんたはヤンデ連盟の頭脳だし、ちょっと良い意見聞かせてよ」



「そうね、私が牽制をするからセトナは私の傍でサポートすると良いでしょう。あのリファちゃんよりもスピードに関しては自信がありますからね」



「ふーん」



「まあ、あなたはあまり無理をしないほうがよろしいかと。牽制は基本的に私やあの弓使いさんに任せてサポートに回ってくださいな」



「なーんか嫌な言い方だね。けど、文句言ってる場合じゃないか」



「フフッ……そういう事……」



エディアは妖艶な笑みを浮かべると鞭をビュンビュンとしならせた。



「それじゃあ、打神鞭ちゃん……私の大事な肉便器候補を奪ったあの子に、お仕置きしちゃいましょうね!」



それは怒りなのか熱情なのか、新体操のリボンのように鞭は螺旋を描き、その身に紅き炎を纏う!



見惚(みと)れる程の火焔の饗宴、その身に焼き付けなさい……<炎華龍舞陣(えんがりゅうぶじん)>!!」



現れた巨大な二頭の紅き炎龍が、互いを交わらせながらリファに踊りかかる!出来上がる炎の(かご)の中に閉じ込められれば、並みの人間ならその高熱によってあっという間に黒灰になってしまうだろう。まさに問答無用の火葬場である。



「すごいじゃん!! スピードだけとか言っといて全然攻撃もいけてるよ!!」


「フフッ、悪いけど驚いてる場合じゃないわよセトナ……ほら、こっちに来ますから」



セトナがエッと言うのも束の間、炎の檻を、リファはバッサリと切り払った。その体は、白い煙が立ち上るものの火傷のひとつもない。魔力で作られた炎は完全に無効化されてしまった。



「効くとでも思ったか……愚かな人の皮被りめ……!!」



「嘘でもいいので少しは熱がってくれると、私としては嬉しかったんですけどね?」



「……愚弄するか、冒涜者の分際で……貴様のような奴は魂ごと纏めて地獄に落とすか相応しい……」



「地獄ですか。それは興味深い……沢山の亡霊が阿鼻叫喚の声を上げる様は想像しただけで心が踊りますよ」



「……そう……ならば、今すぐ望みどうりにしてあげるからねぇぇええ!!」


リファはギョロリと目をひん剥いて、大剣を両手で持ち剣先を地に擦らせながらエデイアに向けて突撃する。強烈な摩擦熱で地面からは7色の火花と煙が上がった。





 「シィェネェェェェエラァ!」



狂気の声を発しながらリファが剣を振り上げると、強烈な衝撃波がエディアとセトナに襲い掛かる! 寸でのところで2人は回避することができたが、驚異的な剣圧でそのまま吹き飛ばされた。後方にそり立つ壁は衝撃波により豪快にめり壊され、背後の異空間を曝け出す。



「くうーっ! やっぱとんでもないなこの子!」


「油断しないでセトナ、追撃が来るわよ!」



態勢を持ちなおすも束の間、尚もリファが2人に迫る。このまま近づかれれば危険だ!



ギィン!



その時、背後からレーザーのような光の矢がリファを襲った。貫く程の威力は望めなかったが、態勢を崩すには十分だった。



「くけえぇっ!?」



リファが鬼気迫る表情で振り返ると、その先には弓聖リリエンタールが雷上動を構えて凛々しく立つ。


「やらせはしません! ご覚悟を!」



そして、さらに重ねるように蒼く輝く雷の玉がリファにボウンと音を立てて命中する。仕掛けたのはアータンだ。



「わたつだっているんでチよ!」



「キサマァ……小娘の分際で!」



「ち、ちいひっ!! あ、あんただって小柄じゃないでつか!!」



「随分怯えた声だねぇ……わたしが怖いの?」



「そ、そんなこと!」



「あのの、臆病者は、真っ先に死ぬものなんだよ。情けない卑怯な嘘つきな臆病者……」



「そこまでボロクツに言うなんてひどいでツ!」



「ならば、まずは、お前からだぁ!!」



「ウワー! 聞く耳もたずでつ! こっちくんなでツー!!」



リファに標的にされたアータンは的に背中を向けて逃げ出した。その足は勇者アシュレイにも劣らない速さ……こと逃げることに関してだけは、彼女は優秀なのであった。セトナは鼓舞するように声を張り上げる。



「アーたん! 壁ぎわに追い込まれないように注意して!!」



「わーってるでつ! わーってるけどそううまくいかないでつ!」


「あぶなーいっ!!」


反射的にアータンが右にスライディングをすると、いままでの進行方向であった先の壁はゴバァと言う音を立てて粉々に破壊される! 振り返ってその状況を見たアータンは青ざめ、体からは冷や汗が滴れてきたが、止まったら死ぬので必死に逃げる。


「まずい、何とかしないと! 散千掴縛<サウザンド・レイヤー・ハング>!!」



リリエンタールは、自慢の弓技で足止めをしようとするが、完全に標的を定めたリファには全く効果が見られない。



「この程度の技では捕らえきれないか……それならば……纏めて動きを止める!! <<超重力の(ハイパーグラビティアロー)>!!」



繰り出したのは、矢の雨で周囲に結界を張り、その内部の重力を上昇極限に上昇させ、動きを止める高等技だ。ズシンと言う音とともに地面が陥没し、流石のリファも態勢を崩した。



「やった、効ぃたでチ!」



「アータン! 今のうちに距離をとって!」



「あ、えーと、ワタツぁも動けんとです」



「えっ!?」



アータンも範囲内にいたのだ。強力な重力の前では彼女の華奢な体は微動だにできなかった。対して、リファはゆっくりとだが前進している。仲間のピンチにセトナはちょっぴり戸惑った声でエディアに問う。



「どうしようか?」



「心配しなくても言いわよ? ほとんど動けないのなら……当てれば良い」



そう言って、知的な少女は鞭を触手の如くビュンビュン振り唸らせた。すると、無数の火炎の玉が次々に生まれてリファに向かって絶え間なく飛んで行き小爆発を繰り返す。


「なるほど、攻撃で足を止めて時間を稼ぐわけね」


「ええ、ダメージは与えられないと思うけどうまくいけばかなり保つでしょうね」



これならいける。時間が十分に稼げる。セトナはそう思った……しかし、その楽観的な見解は、20分後無残に打ち砕かれる事になるのだった。




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