青椒肉絲
うちの社食の人気メニューの1つなんですよ。食べた事はないですけど……定食アンケートでベスト3に入ったから週1ペースで出てきますが、魚派の私は当分手に付ける事は無いでしょう。おいしいのかも知れないけれど、当分食べる事は無いでしょう。
そんなわけで、今回のタイトルは内容とまったく関係無いのであります。
扉の先に続く道はやがて広くなり、蛍のように軟らかな点の光が明滅し彷徨うする黒天の空間に変わった。
「あれ、オーロラかな?」
クロノは、さっきの誤解をさっぱり水に流したように地平線の先を指差して俺に言う。この引きずらないところはコイツの美徳の一つと言える。
「あの先に……あっ!」
向こうから俺たちと重なるように歩いてくる3つの影……その影の主はどいつも見覚えのある姿だ。
「あ、アシュレイでツアー! ここであったが百ゥ年めい!」
「アータン! あいかわらず滑舌とかなんやらかんやらおかしいぞ!! 」
「失礼でツね!! 今度こそ死んでもらうでつ!!」
「お前、発言の中身がすっからかんだぞ……そう思うよな?」
俺は、他の連れ2人に意見を求めた。デバ子そっくりのフィーンセルト通称フィーちゃんは何も反応無しだが、エディアさんは妖艶微笑む。
「フフッ……一緒にしないでくださいね」
「勿論ですよ、ドSなエディアさん」
「お互い3人ね、これは仕組まれた事だと思う?」
「確かに、そうかもしれませんね……それで、俺達をどうするつもりですか?」
「まあ、クロノも一緒にいることだし虐め殺してあげましょうか」
「……ん、でもリファとセトナがいませんけど? それだと、こっちがそんなに不利って事も無いと思いますが」
「果たして、そうかしら?」
エディアさんは、手に持つ鞭をビュンと真横に降った。すると、10メートル先で炎の柱が上がった。クロノが目を丸くして猫驚きする。
「あんた、やっぱり神器を使いこなせるのね」
「おかしいかしら?」
「あんたのそーいうトコ感じ悪いのよ!」
痴話喧嘩がはじまりそうになったので俺はさっさとそれを止める。
「エディアさん、残念ですが無駄な争いをしている場合ではありません。あなたならわかってくれると思いますが……」
「あら、私に一体何言いたいのでしょうか?」
「いいですか……リファをこのまま放っておくと世界が消滅します」
「……ほぅ」
エディアさんは、鞭を下ろし片手を腰に当ててモデルっぽいポーズをとった。表情も、今までのニヒルな感じとは少し違う。どうやら真面目にこちらの話を聞いてくれるようだ。
「天地神明に誓って嘘ではありませんよ」
「その下りを使う人は大抵偽りがあるものだけど。どうやら違うようですね」
「ですから、手を貸してください」
「これは、随分な発言ね……嫌だ殺すなんて言ってもおかしくない相手なのに?」
「いえ、エディアさんは協力してくれるはずです。何故なら……あなたはどSだからだ!」
「そんな理由ですか」
「いえいえ、こっちはマジなんですよ。何かをいたぶる事に快感を覚えるような、他人事のように楽観的に展開を見る人にとって、全てが消滅するという結果は好ましくない。何故なら何もなくなってしまえば面白くもなんともないんだからな! ただ漫然と終末を求めるのなら、戦意を捨てて聞くなんてことはしない! 必要がないからだ! 必要の無いはずのことにわざわざ耳を傾ける時点であなたは心の中で俺を肯定しているはず!! 違いますかエディアさん!?」
俺に押し問答を突き付けられた彼女は、目を狐のように細めてクスクスと笑った。
「フフッ、大正解とはいかないけど、まあ及第点と言ったところですね」
「じゃあ!」
「良いでしょう。リファとセトナのところに案内してあげますよ」
「ああ、恩に着るぜ!」
「ちょ、ちょっと待っでチェ!」
あまりに素直に話を飲んだエディアにアータンが戸惑いの声を上げた。
「こいつらはブッ殺さなくちゃいけないんじゃなかったんでツ!? 最強のヤンデレを目指すんじゃなかったんでつか!?」
「アーたんのクソバカ野郎ッ!」クロノがキレる。「あのねぇ! 世界が滅んだら最強のヤンデレになるもへったくれもないでしょ!?」
「あ、そうでツね」
「わかったなら、だまって協力しなさい!」
「はいでツ!」
アータンはビシッと敬礼した。うーん、勇んだ割にいとも簡単に言い包められて前言撤回するこのペラさは案外機転が効くと褒めるべきなのだろうか……とりあえずこいつを政治家にしたら大変な事になるだろう。もっとも、求心力なんてまるで無さそうだから二世議員出もないかぎりまず選挙で当選しないだろうけど。
「んで、フィーちゃんも勿論来てくれるよな?」
「……恍玉の令嬢の思惑、千里を駆ける」
「はい、OKってことで! じゃあエディアさん、案内お願いします」
「フフッ……案内と言っても簡単な道程よ。あの、きらきらと輝くオーロラを目指すだけなのですから」
5人の美少女に囲まれて、俺は暗天の先の七色の光に向かった。それに近づけば近づくほど周囲は七色に輝きだし、やがて七色の霧で覆われる。
「このまま、まっすぐ歩いてください」
「えーと、曲がるとどうなるんですか? エディアさん」
「さあ……私もここのことを熟知しているわけじゃありませんから。まあ、どうなってもいいのなら試しに曲がってみてはいかがかしら?」
「じゃあ、やめときます恐いし」
「フフッ、流石は賢明な勇者様……ほら、見えてきましたよ」
七色の先にまばゆい白光が見え、近づくたびにその光は強くなる。俺は瞳を閉じ、体の感覚だけで道を感じ取り前進する。
いよいよだ……
この先の地でいよいよ、この微妙に長かったった逃走劇は終わる。リファとの清算がつくのだ。
必ず、絶対にハッピーエンドで終わらせてやる……それが勇者であるの俺の使命だ。あれコメディなのに展開がシリアスによってない? とか思ってたり思ってなかったり読者様を読破後モヤモヤさせないために俺は頑張るので、どうか最後まで応援よろしくお願いします(ペコリ)




