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ジジジージジージジ

脛毛神拳と、ワカハーゲ帝国との戦いは、遂に大詰めを迎えた。



ジージジ、大二郎、首領タックの3人はマルハーゲ帝国の首都プニョンペンに正面から乗り込む! 世界の運命は今彼らにかかっている! 頑張れジージジ!


(本編とはやっぱり関係ありません)

「……そういや、母さん。腰のほうは大丈夫なのか?」



「ああ、完治した。毎日<砂肝おじさん体操>をしていたお陰だな」



「いや、多分それは関係ないと思う」



「なら、<ご寵愛マザリコベリーダンス>の方だろうか? あれは背骨を動かす動作が多いからな」



「……」



俺のいない間に、何してんだよと思いつつ、断崖絶壁を方脇にする危なっかしいグルグルと山に沿って続くを登って行く。すでに歩き始めて一時間強、眼下に雲が見えるようになったが、それはすなわちもう少しで目的地に辿り着く事を意味する。



「しっかし、めんどいよな〜エレベーターとかつけてくれりゃあ良いのに」



「まったくよね」クロノが珍しく共感して頷く「こんなかったるくて長ったるい道をいちいち登り下りしてたら足に変な筋肉ついちゃうじゃないの! ホンッとサッイテー!」



「ま、お前はすでに脂肪がついているけどな。とくに胸とか足のあたりに」



「それって……遠回しにデブって言ってるのと同じじゃんこのセクハラ野郎がっ!!」



「いや、お前は正確にはムチムチと言うほうが正しい……イテテ! 引っ張るなつねるなポコポコ叩くな!」



「このノンデリカシー腐れ外道! それ以上馬鹿にしたら崖から……んにゃ?」


クロノが急にキョトンとした表情になったので何かと思ったら、目の前に太ましく毛づやのよい、右耳がペコりと折れたもちもちトラ猫が目の前にちょこんと座っていた。



「ね、ねこー! こんなとこにねこがいるー! かっわいぃー!!」



「ぶるるるにゃーん」



急に子供のように猫に近づきササッと抱き上げるクロノ。その時、初めて俺はこのツンデレがデレるのを見た。こいつ、ネコっぽい奴だけじゃなくてマジでなネコ好きのようだ。マシュマロほっぺで容赦なくネコをスリスリしまくる。しかしネコの方もまんざらではないらしく、幸せそうな顔で微笑んでいる。何かお互いがプニプニしていて実に気持ち良さそうだ。正直俺もあいつらの間に挟まりたいと思う。



「この子おとなしいねーふににっ」



「だろうな? ゴロチは頭の良い賢者様お気に入りのペットだからな」



「へーこの子、ゴロチって言うんだ。」



「わんわんを」と、ネコはネコ語で応えゴロゴロと甘えた音を出しはじめた。それにツンデレはさらにトキメキを感じたらしく、またむぎゅっとネコを抱き締める。



 「そいつ毎日毛繕いしてるからホント気持ち良いんだよなー」



「うんうん、わかるわかる! よろしくね、ゴロちゃん! ふにに」


実に微笑ましい状況である。しかし、このツンデレをほっといたら延々とモフり続けるだろうから、そろそろ止めねばなるまい。おれはクロノではなくネコのほうに話しかけた。



「ゴロチ! じゃあいつものように案内してくれよ!」



 「あぉ」



フサフサ軟体動物は俺の言葉を理解するとクロノの懐でグニグニムニムニともがき、隙間からスルリと地面にずり落ちる。そして可愛い声でニャーンと鳴き、ひょこひょこと道の先を進みだした。そして大分離れるとチラッとこちらを見る。このチラ見習性は猫って生き物のお約束的行動だ。 自分の手元から逃げてしまい残念そうな顔するクロノと共に、俺たちはゴロチの後を決して抜かさないように歩く。別に案内されなくても事足りるのだが、仮に抜かそうとすると、あの耳折れネコは経験値豊富なモンスター並の逃げてしまうのを知っているし、何より可愛らしいネコの尻尾をピンと立てて軽快に進む後ろ姿は実に癒されるのだ。最近物騒な事ばかりだったから、俺だってたまにはこうして小動物で心を和ませたいんですよう……とか、言ってるうちに目的地に着いてしまったわけだけど。


山道が途切れると、そこには、象をあしらった装飾が左右に施された洞穴が、俺たちの前にあんぐりと口を開けていた。中からは白い煙と線香のような匂いが漂ってく来て何だかアジアンテイストな此処こそが、賢者様の家である。



「やはり、老仙の住むところは違うね」ラキシスはえらく素直に感心をした。


「まあな。けど、お前も知ってるだろうが暮らし事態はそれ程人間離れしてるわけでもない。アイドル好きなエロジジイなわけだし」



「わかるよ。煩悩や俗世間を捨て去ったとしても真理真実き着けるわけじゃない。無駄と退廃にこそ重要なヒントは眠っている事も多分にある。流石は賢者様と言うことだね」



「悟ったようによく言うぜ。なにかにつけて上から目線だよなお前」



「失礼した。悪癖というものは中々治らないものだね。この立場にあってしても、修正できないんだから」



「しかし、癖の無い者が正義とは到底言えまい」母さんは静かな目をして言った。



「そうですね。しかし、悪癖はやはり悪癖であります。私もまだまだ青二才ということですよ」



「私は先程、謙遜は止したほうが良いと言ったはずだが? 貴様の尻が猿のように赤いとも、童のように青いとも思えん……煌びやかな衣装の中にある素肌の色は全く違うものだろうに」



「フフ、どうやらエクセーダ様は優れた慧眼をお持ちのようで」



なんか高度なのかどうなのかよくわからん受け答えだが、とりあえず母さんの丸出しお尻はとっても綺麗である。



といった感じのやりとりをしながら、ゾロゾロと、壁に備え付けられた灯篭のみに照らされた薄暗い道を暫く歩くと、明るい部屋がに辿り着いた。そこは、今まとは肌色の違う場所が広がっている。テレビ、炬燵、みかん、散乱する漫画本……例えるならビンボーオタクの正月の風景そのまんまと言った所だろう。これが賢者様の住みかなのである。ちなみに、サラッとテレビを挙げたが、このファンタジー世界の文明はかなり進んでいるので、別段おかしな事でもない。ただ、読者様の世界よりは全体的にちょっと技術が遅れていてアナログな部分が多く、動力に基本魔力や精霊干渉を利用する点(そのため電源を必要とすることが少なく、多くの電化製品がコードレスなのは利点と言えよう)は大きく異なる。ちなみにこの世界の電化製品版三種の神器はテレビ、洗濯機、羽扇ぎ送風機(扇風機みたいなもの)である。更にちなみにリアル三種の神器は「聖天剣ファールオリジン」、「デュライの盾」、「カシアラペの銀鎧」で何れも現在行方不明だ。



「ありゃ、賢者様いませんねー」帽子をギュッと頭に押しつけ目をパチクリさせながら俺を見た。



「多分、奥の瞑想の間にいるんだろ。魔力がやんわりと漂っているしな」



「アシュレイさんが一人旅に出てから、毎日山を降りてキャバレーとかパブとかスナックで女の子にちょっかい出してた賢者様が今日に限って珍しいですね」



「……」あのジジイ人が大変な目にあっとるときに女遊びかよふざけんじゃねえ! と、色んな美少女に出会いまくった俺に言う資格はまるでない。



 「ああ、ボクは別に賢者様に何もされてませんので安心してください」



「お前、それはある意味とっても残念なことだと思うぞ」



「えっ、どうしてですか?」



「うむ、わからんならよし。さっさと行こうぜ?」


「えーっ? アシュレイさん、勿体ぶらずに教えてくださいよ〜」



キーニャにしがみつかれながら、部屋の奥に広がる薄暗い通路に足を踏み入れた。先程までの通路と違い壁には特殊な蛍光塗料で神聖文字がびっしりと印されている。これは、結界の役割をもっており、邪悪なる魔物を退ける力を持っている……そこらのよわっちいゴブリン程度ならこの通路に入った瞬間蒸発してしまうらしいけど、まずこんなとこまでザコが侵入することはないので、そのさまをじかに見ることはまずあり得ないだろう。



その結界を抜けたところに大きな魔方陣のあしらわれたいかにも魔力充満してます的な空間が姿をあらわし、その真ん中には、目が隠れるほど長い白眉毛と、腹より下まで伸びた髭を揺らめかせ、ハゲ頭をきらりと輝かせる赤茶けたローブを着た老人が杖に両手をかけてじっと立っていた。このいかにもーなじーさんが、偉大なる賢者マーレガット様である。


俺はついに、リファに殺されずにここまでたどり着いたのだ。



「賢者様っ!」



「……おお、戻ったか、アシュレイ」老人は眉を持ち上げて窪んだ目をこちらに向ける。ネコのゴロチはその傍らにいつの間にかにじり寄って、その老体に体をすりすりと擦り付け始めた。



「お元気そうで何よりです」



「よくぞ、戻ったな……ゴホッ!」



「賢者様!?」



「気にすることはない。今朝までアニータちゃん達と徹夜カラオケしてたからちょいと喉をやられてしもうただけじゃ」



「……」このじーさんの音程が全部念仏みたいになる歌を朝まで聞かされたとは御愁傷様です。



「それで、どうじゃった? 聖剣の覚醒は叶ったのか?」



「それが……」



俺はまた、ここまでの経緯を長々と話した。読者の皆さんは、おそらく「またかよ!」って感じだと思うので大事なトコまでは勿論全部省略(ハショ)ることにします……はい、一発再生っ!



「……ふむ、剣の巫女が聖剣を奪い、それどころかお前を殺そうとしたと言うのか……しかも、その力は常軌を逸していると……」


「はい」



「確認するが、そやつは本当に剣の巫女だったのだな?」



「はい、<灯間のアスタリスク>を持っていましたし。各手続きや神殿の位置も熟知ていましたから、おそらくは……」



 灯間のアスタリスクは、剣の巫女の証明である虹色に輝く宝石が埋め込まれた装飾品である。それが本物かどうかを見分けるには、その宝石を太陽に透かせばわかる。本物は「XA」の文字を描く白い線が宝石の内部に映し出されるのだ。リファの持っていたものには、確かにそれが見えた。だから表の温厚さもあいまって、あの時は信じて疑う余地がなかったのだ。



「むう……」

賢者様は髭を右手でピーンと引っ張ってパッと離すことを繰り返す。深く考えるときに必ず癖だ。



「解せぬな……して、その者の名は何と申す?」


「リファと言います」


「な、なぬうっ!?」


老人は、眉毛が飛んでいきそうなほど目をかっぴらいて驚いた。



「まさか……そやつは……リファ=L=メルトラーデと言うのでは無いだろうな!?」



「え、そうですけど?」


「なっ、なにぃぃぃ!? そ、そ、そんな、馬鹿なっ!!」



 明らかに動揺し取り乱す賢者様。長きを行き悟りの域に入ってるエロジジイのこんな余裕のない姿を見るのは初めてだ。




「ご存知なのですか?」



「ああ……まさか……そんなことが……ありえぬ……おぉぉぉ!!」



「そんなヤバイんですか? 賢者様をそこまでテンパらせるなんて……リファは一体何者なんです!? 」



「あの人は……あの方は……剣の巫女(アシュカルブソーダー)ではないっ!!」


「ええっ、違うの!? じゃあ……」



「リファは…………勇者じゃっ!!!」

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