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再会でびでは〜


エールレイゲンの権力者ラキシスを味方につけた勇者アシュレイ。飛行戦艦に乗り込み、ついに聖地アンブルシウスに辿り着く……

聖地アンブルシウス。天高くそびえ立つ白山「ケウロシェン」を中心に美しい自然と町並みが融合する古の地。この世界の文化遺産登録第3号であり、景観は何千年も変わらぬ状態で保護されている……もっとも、あくまでも外観が変わっていないだけで、建物の内側は結構近代化しており、住民は別段質素な暮らしをしているわけでもない。



空中戦艦をこの保護区に侵入する事は禁止されているため、少し離れた丘陵に停めて、歩いて聖地に足を踏み入れた。聖剣覚醒のためにここを出てからもう1年以上経つがこんなかたち……聖剣を持たない状態で戻って来ようとは想像もしなかった。



「ふーん、なかなか良いところじゃない」



街並の真ん中を走る真っ直ぐな道の先にグンと立ち誇る雲の傘を被った山を眺めながら、クロノは腕組みをして言った。



「だろ? この風景を見て悪い印象を持つ奴はいねえ。かの巨匠エウリンツォーペもここを訪れて感銘して、一枚の絵を描いた」



「<極の門>でしょ? その程度の基礎知識で私を感心させようなんておもったわけ!? バカにしないでよね!」



「何だよその不貞腐れた言い方は。そりゃお前の兄貴と俺の圧倒的知的会話についていけなかった悔しさはわかるけどな」



 「んににー! べ、別に、あんたのペテン話に加わるのがバカらしかっただけなんだから!」



 髪の毛を逆立てて、強がるあたり、本当に素直な奴だ。ちなみに、それとは正反対のクールな兄さんであるラキシスは何か準備することがあるらしく、俺たちを先に行かせて自分は戦艦に残った。何か悪巧みでもしてるんじゃないかと思う方もいるだろうが、多分あいつはそんな事はしない。あいつは小悪党ではないからだ。勿論、俺たちを置いて離陸し、どっかに逃げ去る事も無いだろう。あいつは、無意味なことは好まない……と、言うかこの状況を楽しんでるからわざわざそれをつまんない方向に持ってくはずがないのだ。多分、散策しつつこのツンデレで遊んでいていればそのうち追い付いてくることだろう。とか考えていたら、聞きなれた声が遠くから聞こえてきた。



「わーっ!! アシュレイさんだ! アシュレイさーんっ!!」



手を振りながらそいつは、もう一人の長身女性と俺に近づいてきた。



「キーニャ! ジェリア!」



背の低くい、羽根帽子を被った少年みたいな女の子は、俺の腰にしがみつく。この人懐っこいヤツがキーニャ=エマリシー。俺の仲間の1人でスライムテイマー。スライムを生み出したり、操って色々したりするめずらしい職業に彼女は就いている。スライムっていうとファンタジー世界では大抵ザコモンスターだが、彼女の扱うスライムは普通のものだけでなく、銀でできたシルバースライムや毒素を含んだポイズンスライムなど色んな種類があり、これが非常に役に立つのだ。実際魔王の配下、特に十二災将「厄火のデーィーゲレンデ」との戦いでは、アシッドスライムの包囲網を作り出し、相手の炎の力を封殺しなにもさせない大活躍ぶりだった。昔、オークの群れに絡まれていたのを救って以来、俺の事を尊敬してくれている可愛い後輩だ。



「心配してたんですよ! アシュレイさんは強いですけど、流石に1人で大丈夫かなって。やっぱりボクもついて行ったほうがよかったかなって、ちょっと後悔してたんです」



「ありがとな。お前はホント気遣いがあるやつだぜ」






ただ、残念ながら恋愛感情を抱いたことはない。師弟関係みたいなものになっているため、そこから抜け出してはいけない感じの暗黙の了解もあるし、あまりにもムネペチャでボーイッシュすぎるからあんまり色気を感じなかったのだ。ただ、暫く見ない間にちょっとは女の子っぽくなった気はする。とりあえず全国の男の娘好きにはたまらない見た目をしているのは間違いないと言える……



「……久しぶりね」



もう一人の、ネッカチーフを首に巻いた黒ずくめの暗殺者風の女性が、ジェリア=イーグル。かつて世界的に有名なギルド「パールシェバー」に所属し、その中でもナンバー3の実力を持っていた。その腕を見込んで俺が半レンタルでスカウトしたのだが、目に狂いはなかった。十二災将を全滅させることに大いに貢献してくれたし、「パールシェバー」との繋がりもできた。総じて優秀な彼女の職業は「マジックガンナー」で、銃と魔法の両方を得意とする遠距離のスペシャリスト。その性質上、近距離戦闘は不得手で間合いを詰められると脆いちょっとピーキーなところはあるが、そこは味方の連携によって補えるのでそれほど問題ではない。最大の弱点は、その化粧っ気の無さだろう。カッコいい見た目なのだが、女性的な魅力を一切放たないというか殺しているらしく、俺が恋愛感情を抱く事はなかった。久々に会ってもコイツは全然変わっていない。カッコ良さと色っぽさの両方を兼ね備える弓聖リリエンタールさんをちょっとは見習ってほしい気がする。


そんなこんなで欠点はあれど、二人とも俺の最も信頼のおける仲間だ。聖剣覚醒の旅にあえて一緒に連れていかなかったのは、こいつらならば留守の間に魔王がこの辺をを攻めてきてもなんとかしてくれる見込みがあったからである。それだけ信頼がおける存在なのだ。



「いひひ〜」キーニャは急にいたずらっ子のように歯を出して笑った。



「ん、どうしたんだよ?」


「しかし、アシュレイさんも隅に置けないなあ。いつのまにかこんなカワイイ女の子と仲良くなるなんて」



「にゃっ!?」



キーニャがジロリンと流し見たクロノは、またもやと顔を真っ赤にする。



「ななな、何言ってんのよ!! 私はこんなゲスの事なんて何とも思ってないんだから!! たまたま、しょうがなく同行することになっただけよ!! ちょっと、何なのよその顔は!?」



「ぷぷ〜隠さなくても良いんですよ〜? ボクもジェリアも恋敵なんてやるつもりはありませんから」



「だから、違うって言ってるでしょ! このチビキノコっ!」



「ぷぷぷ〜まるで子供みたいな発言ですね〜ちゃんと学校通ってましたか?」


「むにゃー!」



子供みたいな奴に子供っぽいとからかわれて真に受けるクロノって一体どんだけ純粋なんだか……ま、何か微笑ましい光景だから別に構わない事ではある。ほっといてジェリアと話すとしよう。



「アシュレイ、聖剣は覚醒できた……?」



「見てのとおりさ」



「確かに、持っていない……しかし、情報では魔王はお前に倒されたと聞いた。一体、何があった?」



「それはもう大変な目に遭ったぜ。詳しいことは賢者様のところで話すつもりだからおまえらも一緒に来てくれ」



「わかった。では、あの御方にも伝えるとする………」



「え、誰だよあの御方って?」



「エグセーダ様が、今此処に滞在していらっしゃる……」



「な、なにっ!?」



俺は血の気が引き、背中をゾクッとしたものが走った。まさか、俺の母さんが、ここに来ているとは……


「嬉しくないの……?」



「うーん、嫌ではないんだけど……色々理由はあるが、第一に、聖剣を持たない状態で会うのは勇者の掟的にすごーくまずいんだよ」



 「なるほど、そういう事……」 「だから、呼ばないでくれないかな? 今、俺がいることは内密にして……」


「無理」



「え、なんでさ!?」


「手遅れ……既にお前の背後にいる」



「んきゃーーーーー!!」


俺が目んたま飛び出るほど驚いて振り向くと、そこにはとても懐かしく、そして変わりない顔があった。最後に見たときからまったく見劣りしないその凛々しく美しい顔が。



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