選ばれてないっぽい者達
セトナは完璧に能力をコピーできる能力の持ち主で、潜在魔力はチートらしい。
因みに花火の灰が目に入って眼科行きになった筆者の悪運も並はずれているとか……
「ああ、あいつら持ってるだけなんだ」
「神器は聖剣と同じで、使い手を選ぶからね。セトナは潜在魔力がいくらあっても、精霊干渉も出来ないし神に見放された存在だからグングニルが応えるはずもないし、他の子も力を引き出せてない。神器の力をちゃんと使えるのは私だけだよ」
「そうか……お前の倫理観がちゃんとしていてホント良かったぜ! じゃあ、セトナ意外はあんまり気にしなくても言いわけか」
「アータンはまあ、気合いが空回りして実力は大したこと無いし、フィーちゃんは気のみ気のままだから多分何もしないから、ほっとけばいいと思うよ。エディアも多分遊び半分で乗っかってると思うし魔力が封印されてるらしいからあんまり気にしなくてもいいかな」
「その辺は楽観的だな。あいつらとも古い付き合いなわけか?」
「エディアは半年前に出会ったばっかだけど、後の2人は学園からの付き合いだよ。国を脱出する時に手伝ってくれたの……もっとも、理由はあんまりいいものじゃないけどね」
「なるほど、おおよその事情はわかった。ヤンデ連盟が出来るの前にはすったもんだがあったわけだな……リファと接触する前に教えてくれりゃあもっと早くに何とかできたかもしれないのに」
「私だって、あのリファッて子に近づくまでセトナに細かいところは教えてもらってなかったの。まさか、あんな短絡的な理由で人を殺そうだなんて思いもしなかったよ。ギルドの名前をヤンデ連盟に変えたあたりから何だかおかしいとは思ってたけど、あんなことを考えるなんて……あの子は、自分が今まで受けてきた不条理を他人に向けようとした! それが悲しい事だってわかってるはずなのに……」
「なるほどな」
「何よ、淡泊な反応して」
「お前、セトナの事が本当に大事なんだな」
「にゃ!?」
「あの時は袂を分かったように見えたけど、内心ではアイツの事を心配してる。さっき、お前はセトナの事を孤独って言ったけどそれは違うな。アイツは孤独じゃ無かった。むしろ幸せ者だよ」
「セトナが、幸せ……?」
「お前みたいに、体張って心からあいつの事を大切に思ってる奴がいるんだからな」
「あっ…………?」
クロノは、目を大きく口を小さく開いて驚いた様な顔をした。どうやら気付いていなかったようだ……自らが自らの話の矛盾となっていた事を。
「だから、セトナは多分お前に甘えていたんだよ」
「あの子が、私を……」
コンコン
その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ん、誰だ? クロノお前、何かデリバリーでも頼んだのか?」
「するわけないでしょ!? 私の部屋は隣なんだし」
「あ、そうか」
当然と言うべきか、このツンデレは俺と一緒の部屋で寝ることを拒んだ。高級ホテルのだだっ広い部屋を2つも取るのは勿体ない話ではあるが、昨日知り合ったばかりの信用に足りるかどうわからない男の隣で寝るのは無用心でガード低すぎなので考え方は間違っていないと思う。さすがは純ツンデレお嬢様……貞操は堅固である。
「あんた、さっさと見てきなさいよ!」
「へいへい……」
こういう時のツンデレってのは梃子でも動かないのが基本だ。反論するのも無駄なので、俺はさっさと部屋の入り口に向かい、チェーンを外して、ガチャリとドアを開ける。どうせ、ルームサービスか何かだろうと俺は軽い気持ちでいた。しかし……
「こんにちは」
そこにいたのは、煌びやかな白銀の軍服のようなものを着た、俺よりも背の高い黒髪の超美青年だった。並の腐女子ならば一発でメロメロになるだろう。それくらい目鼻立ちが美しく、そしてただならぬ雰囲気をその身から放っている。コイツ……只者じゃない!
「お、お兄様!?」
背後から、クロノが声を上げる。どうやら、俺はとんでもない人物と出会ってしまったようだ。
涼しげな笑みを浮かべ、青年は俺を不気味な程優しく押し退けて、部屋に入った。俺は抵抗がせずに通してしまったのは、それが意味をなさない事が直観的に分かったからだ。
「君も隅に置けないね。ボーイフレンドと一緒なんて」
「バカ言わないで! あんなペラ男には興味ないって言うか男自体に興味が皆無なのお兄様もわかってるでしょ?」
「フフッ、相変わらずだねクロノは。そこが美徳とも言える……ねぇ、君もそう思うだろう?」
俺は、とりあえず頷いた。そして、できる限りシリアスな顔をして口を開く。
「あんた……ラキシスだな?」




