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本当の名前

追っ掛けられるヤンデレが増えてしまったが、ツンデレの味方ができた勇者アシュレイ。そう言えば、関係ないですけど作者はヤブ蚊にとっても刺されやすいです(・∀・)


 「どうだった?」



 「ふん……」



すっかり日も暮れた頃に、俺達はゴーンゾーラと言う金持ちばかりが住まう街にたどり着いた。何もかもが高級で、物価も税率も世界最高と呼ばれ、各国のお偉いさん別荘もたくさんある。町の入り口は厳重に警備されており、入街許可証の無い一般人は門前払い……入ることすらできない。そんな場所であるが、俺は前述の通り(忘れた人は思い出してね)「マスターパス」を持っているため、街の中に入れるどころか殆どの施設やサービスを無料で受けられるのだエッヘン!


 大ピンチを救ってくれたクロノには、たっぷりお礼をしなければと思い、俺はその権利を利用して街で最高級四ツ星ホテル「エルトン・レブ」に当日チェックインをし、そこにあるこれまた四ツ星レストラン「アリーサイド」で料理をご馳走した。しかし、食事を終えた後にホテルの部屋のバカデカいふかふかベッドに座り足組み腕組みをしている彼女の表情は相変わらず険しいものだった。


「何だよ、最高級料理を食って不満なのかよ?」



「あんた、その程度で私を釣れると思ってるわけ!? 自分で払わずに国税使ったくせに!!」



「う……」



確かに、マスターパスで使った分は発行元のアルタロス王国が立て替えて支払う。しかも、それには国民の税金も使われているのである。基本的にカードを使った際は使用目的を記入した請求書を発行しなければいけないので、何に使ったかは国側にもわかるし、良心の呵責と言うものもあるから何でも出来ると言っても実際はそこまで自由には使えないのだ。ちなみに今回の件は「緊急たる要人警護」と言う目的で請求書を発行していた。これは、あながち間違いでは無い……何せ、リファはまだしもセトナ達は何をしてくるかわからないのだ。これくらい警備の行き届いた施設を利用しなければ実際危険なのである。



「それに、私は今まで7ツ星とか8ツ星とか食べてきたの! あの程度のレベルじゃ、驚いたりしないんですから!」



「7、8? 何それ、聞いたこと無いんだけど」



「そーいう店は世間に公表しないもんなの! ホント、田舎者よねーあれ位の料理で満足するなんて」



「おいおい、そー言うお前だって美味しそうにはむはむ食べてたじゃないか!?」



「ふん……まあ、味自体は悪くなかったし……でも、満足するのとは別の話よ!」



「流石ツンデレ、素直じゃねえの」



足をパタつかせるクロノに俺はいつになくシリアスな顔をして言う。



 「じゃ、そろそろ教えてもらおうか……お前らの素性をな」



「……ふん、仕方ないわね。こうなっちゃったら、もう秘密にしてる場合じゃないし」

 「へー、なかなか理解力があるなお前」



「誉めたって何も出ないわよ」



 「へいへい」



 「じゃ、改めて自己紹介するね…………私の名前は、クロノ=フォン=ヴィンターハルト。フレミス島からこの大陸に渡ってきたの……あんたでも、わかるでしょ? この姓名が意味する事くらいは」



「……ああ……」



 聖導国家エールレイゲンはフレミス島と周辺のクシアナ諸島を統治する一大国家である。建国者はかつて勇者と共に魔王ゼトラを倒した騎士王ルーシアス。ヴィンターハルト家はその子孫であり、代々最高指導者……実質的な国王として何千年もこの国を統治してきたのだ。「世界の教育機関」とも呼ばれるこの国は、アルタロスが勇者を後押しするのに対し、騎士や魔法使い、僧侶の育成支援に力を入れている。専用の学校も多数存在し、ここから世界に名を馳せた人材も数多い。また、そこで発生する教育費などの一部を国が徴収しているため、財政も世界でトップクラスであり、前述の通り沢山の優秀な人材が集まり、その多くが最終的に兵士として国に仕官するため軍事力も高い。とにかく領地は広くないが非常に優れた国なのである。



「なるほど、ツンデレは名家のお嬢様が多いって話だがお前もそれに違わないってわけだ。何か他の奴らと雰囲気が違うと思ったら、なるほど上流者の気品ってやつか」



「そういう事。バカ勇者のくせに嗅覚はいいみたいね」



「辛い言い方ですこと……んで、そんな超絶お姫さまが一体何が楽しくてあんなワケわからんギルドに入ってたんだ? 親への反抗期とかか?」



「違うわよ、私達は国を捨てて逃亡してきたの」



「え? だって、あの国はアルタロスに並び劣らない優良国家で通ってるだろ? 不自由無いどころかサイコーな身分なのに何でそんなことするんだ? 実に勿体ない」



「あんたは表向きしか知らないからそんなこと言えるのよ。私もはじめはそうだった……あの国が、エールレイゲンが裏でどれだけの陰謀をめぐらせているかを知るまではね」



「ふーん、なんかシリアスな話になってきたな。この物語は一応コメディなんだけどなー」



「何よコメディって!?あんた、人がマジメに話してるのに……馬鹿にしてんの!?」



 「いえいえ……ホンマ、すんましぇん」



成る程、こいつは世界観破壊的な言動に乗る気は無いようだ。まったく、クソ真面目なお嬢様である。


「とにかく! あれ以上黙って、のうのうとあの国に居ることはできなかったのよ……セトナをあの国から助けださなきゃいけなかったの……」



「助け出す……? やっぱり、ただのギルド仲間じゃなかったんだな」



 クロノは頷いた。しかし、その表情は今までのツンツンしたものとは違う。何かを憂うような、心に刻まれたジュクジュクとしたまま癒されない傷跡の痛みを耐えるような表情だった。どうやら、相当マジな事情らしい。そうなると、流石のハメハズシマンな俺でもここはなるべく真面目に聞いてやらねばならない。いや、こんなバリカワイイ子が真剣に話すのをチャカせるマイペ男なんてこの世に数えるほどしかいないんじゃなかろうか? おそらく、倒すとレベルが40も上がると言われる「激逃げパルピー」並の希少生物だと思う。



「そうだよ。セトナは小さい頃からずっと家に住んでいたんだ」



「お前んちに? 何だよ、あいつもお偉いさんなのか?」



「ううん、違うよ。あの子はね……あの子は……」


「何だよ、そんな言いにくい事なのか?」



「あの子は……セトナは人間じゃ、ないんだ」



「むむっ!?」



「あの子の本当の名は<成体成就作第127号−セトナ−>……ホムンクルス<ゼトラの雫子>の一体なの……」



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