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少女の秘策

ヤンデ連盟は髪の色がカラフルな5人組。性格も服装も個性的だが、バリバリのツンデレが混じっています……





※ちなみに「ヤンデレンジャー」はまた別のお話として企画があります。かなり前から出た案だけど色々理由があって現在保留中なんですよね……(汗)



魔王ダイムライガがリファによってあっさり倒され、彼の遺言により魔王城にある隠し部屋のワープゲートにダイブした俺が辿り着いたのは、ガープ大陸の南端にあるマレーネの丘だった。(ちなみに、ワープゲートは一方通行で魔王城には戻れない仕様らしい。まあ、戻れたらそこから攻めこまれる可能性もあるし妥当か)曲がりなりにも、聖地アンブルシウスの賢者様には近づいたわけだ。ただ、ワープしてすぐにこの事に気付くほど地理には精通していなかったので、俺がまずしたことは、あてもない北上だった。理由は、迷っていたら何時リファが同じところにワープしてきてもおかしくなかったからだ。とにかく、到着地点から距離をとらねばと判断したわけだが、この読みは正しかった。リファはあっという間に俺の後方に姿を現わしたのだった。逃走劇は再開したのである。



俺はアメリカのアニメに出てくる赤毛の七面鳥みたく足が渦巻きをおこすかのように逃げまくり、それをリファはひたすら何かを喋りながら追っかける。その最中、また沢山の犠牲者(うち8割はおじさん)が出たのは言うまでもあるまい。もし、コーカラの村を見つけ、休息をとらなければ、体力が尽きて死んでいただろう。リファの「街や村では手出しをしない」が徹底されているのはせめてもの救いだ。



コーカラ村の人は親切で、勇者の俺を大層丁寧におもてなししてくれた。特に名物のカブラゲバブは最高のB級グルメで、その肉とハムポナ葉のハーモニーは絶品だった。是非ともアレを全国展開していただきたい。いやはや、風来坊のとこで食べた果実といい世の中にはまだまだ知らないマイウなものがいっぱいあるもんだ……って、俺は旅する笑顔がステキなぽっちゃりグルメ研究家かっ! と、1人ツッコミして話を戻すが、そんな村の人達が更に親切に地図を見せて場所を教えてくれたおかげで俺はこうして位置情報を知ることができたのだった。マキナさん一家のところで一泊ホームステイさせてもらい、次の日に再び俺はリファから逃げつつ北上をはじめ、太陽が真上を大分過ぎた頃に、このエルカンダリアに辿り着いた。そして、俺が街の門をくぐろうとしたときに、待ってましたとセトナが目の前に立ちふさがって「門の上から見ていたけど何で女の子に追っかけられてたの? よかったら教えてよ」的な事を言ってきたので、それをOKした結果今にいたるわけであった。ちゃんちゃん!



「へぇー、世界に君臨する魔王を簡単に倒しちゃったんだ、あの子。しかも、予想どーりのヤンデレなんだね」



話を聞き終えたセトナは、椅子にもたれかかるようにして座り、口に手を当ててなるほどと理解したような態度をとった。しかし、そこに深刻に受けとめた感じは全くなく、あくまでも他人事。推理ゲームでもやってるような雰囲気だ。



 「成る程、お前それで俺に近づいてきたわけか。リファのことが目当てだったんだな」



 「そ。ヤンデ連盟がヤンデレを見過ごすなんて、牛飼いが牛を育てないのと同じでしょ?」



 「まあ、それもそうか」


 「勿論それだけじゃないけどね〜アシュ君のことも気になっちゃったんだよ。君を見て、この子私の弟に決定! って直感したわけです、はい」




 「取って付けたようなフォローありがとうございますーとにかく、今は賢者様の知恵を頼るしか案が浮かばねえ。ただ、あそこに行くには、ここからだとアランケント山脈を越えなきゃいけねえ。あそこは険しく危険な雪山だから正直通りたくないんだけどな……」


「けど仮に、それを回避して海岸添いを進むとしても、遠回りになる上もっと危険な<竜のくびれ>を通らなきゃならない……か。なかなか、おもしろい事になってるじゃないですか。ねえ、エディア?」



メガネをカクカクして、紫髪サンバイザーさんは艶めかしく微笑み、口を開く。



「ええ、実に興味深い話ですね。しかし、アシュ君が<疾風の勇者>とは驚きですね……改めて、お会いできて光栄に思います」



「エディアさんに知っていただけているなんて、こちらこそうれしいですっ!」



「なになに、これでも知識は当ギルドで最高と自負しておりますので……その位のことは常識も常識ですよ。やはりあなたは、期待を裏切らない方のようですね」



 「エヘヘ……それほどでも……」



誉められて照れてる俺に対し、ツンデレがバーカと言ってきたが完全に無視してやった。あのマシュマロ野郎には、まずは放置プレイがベストと言える。



「凄いでスー。早く最強ヤンデレ様を拝みたいでスー」



「国民的アニメの三歳児みたいに言うとは呑気にも程があるぜアーたんよ……お前等、とにかく悪いことは言わねえからあいつには関わんな。殺られるぞ!」


 「わーい、楽しみでつ!」


俺が警告しても、みんな聞く様子はない。むしろ火に油を注ぐように、好奇心が増すばかりのようだった。フィーセルトに至っては「ファイアウオール」という相変わらず意味不明ボソリとつぶやく始末だ。



「アシュ君、あの子……リファちゃんを止めたいんだよね? 聖剣、取り戻したいんでしょ?」



「まあな……」



「じゃあ、お姉ちゃん達がひと肌脱いおっかなー?」



「やめとけっていってるだろうに……何だ? まさか、何か策でもあるって言いたいのか?」



「まーねー、目には目を! 歯には歯を! ヤンデレにはヤンデレを! ってやつよ」



「わかるようなわからんような……」



「だから、善は急げ! 明日、早速決行しちゃうよ! 皆もいいね!」



 他のメンバーはこの時だけはコクリと頷く事で一致した。俺はまだ了承していないのだが、この流れだともはや制止できそうにそうにない……それに、アクが強く未知の存在であるこいつらなら何かやってくれるかもしれないという淡い期待も生まれていた。とりあえず、やらせてみるしかなかろう。



 「ったく、これだけ言ってるのに命知らずだよな」


 「ま、アシュ君の為だけじゃないしね。やっぱり究極のヤンデレになるためには、最強のヤンデレは避けて通れない存在でしょ?」


 「別に否定するつもりもないぜ……避けて通ってもまったく構わん気はするが、そこまで言うんだったら試してみな」



 「まかせてよ! お姉ちゃんのネゴシエーション力を見せてあげるからね! …………んじゃ、それは置いといて今からアシュ君をの歓迎会おっぱじめよっか!」


「結構重要な事をサラッと横置くんだなお前……ま、もてなしてもらえるってんなら嬉しい話だけど」


「アシュ君はもうこのギルドの一員みたいなもんだからね! さ、みんな準備するよっ! 早く着替えて着替えて〜」


「ん、何をする気だ?」


「決まってるでしょ? コスプレだよコスプレ!」


 「決まってはいないと思うがな……そのサービスは素晴らしいと思うけど」


 「ちなみに、アシュ君もコスプレしてもらうからね! どれ着せちゃおうかな〜メイドはベタすぎるしナース服はちょっとお姉ちゃんの好みじゃないしぃ……」



「女装前提かよ……まあ、美青年なのは間違いないけどな。男の娘と言っても通じるだろうし」



「わぁー、自画自賛ですか〜じゃあその自信にお答えしてダークインキュバスの格好してもらおうかなー?」



 「う……なんか、すごーく嫌な予感がするな……」


 そのあと、マジでトンでもない姿にされた俺は、少女達とアカモモや潜伏チェス、聖地奪還ゲームなどをして楽しい夜を過ごした。クロノが俺を頑なにお花畑(トイレのこと)に入れようとしなかったり、アータンの作ったピザがクッタクタになっていたりフィーちゃんの思考時間が長かったりと色々問題もあったが、リザ子との地獄の一夜と比べれば全然おちゃのこサイサイ……我が人生の上でも実に有意義で幸せな時間だったと思う。



それにしても、セトナのあの余裕はどこから来るんだろうか? まったく理解しがたいが、あの気楽さと自信満々な表情、思慮を感じさせる所作には不覚にも本当のお姉ちゃんのような心強さみたいなものを感じてしまった。一人っ子だった俺だが、兄弟ってこういうものなんだろうか? 昔は羨ましいと思ったこともあったが、その気持ちはあながち間違っていなかったのかもしれない。



エルカンダリアに再び太陽が昇ったとき、街と共に彼女と「ヤンデ連盟」の「実力」と「本質」が明らかになる……その時は、眠れる暗伏(くらぶ)せの園に射し込む光と戯れる小鳥達の(さえず)りと共に瞬く間に訪れた……

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