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AZTへようこそ

謎の少女セトナが語る謎の組織「ヤンデ連盟」とは……ああ、受信料はまた今度まとめて払いますんて勘弁してください。本当に今お金ないんですよ。ここ数日、夕御飯がうまい棒一本だけでして……ちなみに昨日はやさいサラダ味でした(涙)




ギルド……それは、風車、ギャンブルに並ぶエルカンダリア3大名物の1つである。とーっても分かりやすく言えば、同じ考えや目的等が一致した冒険者達が作る団体の事で、それぞれにルールを作り、それに沿って宝探しや、レア魔物猟り、俺の仲間であるジェリアがかつて所属していた「パールシェバー」のように魔王軍などとの戦争やテロリストの武力鎮圧に参加することを生業とする傭兵まがいの事をするものもある、ファンタジー世界ではポピュラーな組織でもある。


 エルカンダリアはかなり昔からこのギルド及びそれに参加する者達を後押ししていて、仲間を集めるための交流の場や、本拠地とするためのアジトの安価貸出し等を行うなど土壌もよく整っている。幾千もの物語の多くはそんな無数にあるギルドが紡いだものなのである。ただ、今のエルカンダリアを統治する「都市政府機構」にとっては、夢を追う者達を応援すると言うよりも、財政を潤す金蔓(かねづる)として搾り取ろうとしている思惑も強くなっているような気はするが……



そんな裏の事情はさておき、とにかくこの都市には非常に沢山のギルドがあるわけなのだ。名前も様々で「蒼竜騎士団」や「ブラッドファング」などかっこいいものや、「レスキューエンジェル」とか「埋蔵金発掘旅団」など目的に則したしたものなど個性に溢れている…………が、しかし、そんな中でも「ヤンデ連盟」と言う名を持つギルドは明らかに異彩を放つ存在である。正直、世の中をナメいるとしか思えない……どっかのオンラインストラテジーとかで冗談のつもりでつけたかのようなネーミング。「二次元@ふば」とか「桜園の近い」とか「R18師弟」とか「ふば☆ちゃんねる」みたいな感じである。(ただそーいう団体に限って強者揃いだったりするんだけどな……)



「もう少しまともな名前、思いつかなかったのか?」



「まー、他にもいくつか候補はあったんだけどねー〈ヤンデ連合〉とか〈ヤンデレンジャー〉とか……」


「それ、大して変わらんだろ……大体、仮にレンジャーにするとして、ちゃんと5人いるのか? ちゃらんぽらんな感じのお前に付いてくる奴らがいる気がしないんだけどよ。まさか、アジト着いても中はスッカラカンで実に私だけでしたー君がギルドのメンバー第1号でーすパチパチパチなんて事は無いよな?」


「まっ、しちゅれいな! お姉ちゃん、これでも人望に厚いんだかんね? 見て驚くなかれ。それに、戦隊ものでも3人のやつもあるしー」


そう言ってルンルンヒラヒラとスカートをたわつかせながら俺の前を蛇行するセトナ。後悔したいところだが「聞きたいことがあるからギルドに来てよ」とキラキラした可愛い目で言い寄ってきたこいつに萌負けてひょっこり付いてきた俺も俺なのだから、今更引き下がる事はできまい。


階段を上り終えると、真っ直ぐな一本道が現れた。道沿いの建物は、なかなか歴史を感じさせる古風で美麗なアンティーク感漂う建物が軒を連ねている。まるで絵画の中のような風景だ。



「へぇ、すごいな……町全体がアンティークって感じじゃねえか」



 「わかる? ほとんどの建物は築百年以上なんだよ! ここは政府の保護地域で、昔の町並みをそのまま残してるの。ま、文化遺産みたいなもんだね!」



 「ふーん、名前に似合わず随分とセンスの良いトコに居を構えてるんだな……ヤンデ連盟ってのは」


「アジトも中々のもんだよ、もう近くだし早く行こっ!」



2番目の十字路を右に曲がる。道は行き止まりになっていて、その丁度突き当たりになっている部分にヤンデ連盟のアジトはあった。


 建造物達に囲まれた暗がりの中、隙間から射し込む小さな(ちり)の飛び交う陽の光に照らされて、真ん中に大きな時計の付いた小さな学校のような煤けた色の横長二階建て木造建築のお屋敷は、どっしりと腰をおろすように堂々と立っていた。立派な御影石でできた門には獅子の彫像が乗っかっており、その緻密かつ芸術的な造形は、これを建てた者、そしてかつてここに住んでいただろう誰かが只者でないことを(うかがわ)せるには十分だった。この前見た魔王城は強烈な見た目だったが、それを上回る程の印象深さと兼乳首……もとい建築美を持っていると言って過言は無い。



「私のアジト〈洛月亭(らくげつてい)〉へようこそ……アシュ君!」



にはっと犬歯を出してセトナは笑う。それは無駄なくらいに清々しかった。



「どうやって手に入れたかは知らんが、お前の手に余るタテモンだよな」



「そんなことないって、メンバーみんなで(たむろ)すには狭いくらいなんだから」



 「お前の仲間か……果たしてどんな奴らなんだろうな?」



「ま、すぐに分かるって!」


少女の細い手に背中を押されて、俺は屋敷の入り口までたどり着いた。四角形の窓からはほんのり灯りが見え、声が少しだけ漏れ聞こえてくる。どうやら、ヤンデ連盟にはちゃんと他のメンバーがいるらしい。


セトナは、俺の横に立つと、どこから持ってきたのか知らない金色のベルをチリンチリンと鳴らしはじめた。



「みんなー! 帰ってきたよぉ」



そう言うなり、中でドタバタと騒がしい音が聞こえた。そして、その音は大きがなるとガチャリと鍵を開ける音が聞こえ、すぐに扉は物凄い勢いで外側に開いた。内側じゃなくて外側……つまり扉のまん前に立っていた俺はもろにその扉をドーンと体に受け、その結果ポーンと吹き飛び、そのショックで意識がポポポポーンと飛んだ……おいおい、この期に及んでまた気絶ですか。このままだと〈気絶勇者王〉って言う不名誉な称号をもらうことになってしまうかもしれない……



「ねえねエ! だいじょーブ?」



語尾のイントネーションがおかしい。誰かの声で再び意識を取り戻した俺の目の前にはセトナを含めた色とりどりの女の子の顔が接近していた。


 俺は、再び目を瞑る。そして、心の中でこう叫んだ……



 ウッパパーイ! これギャルゲーフラグ立っちゃったんじゃないの!? 立っちゃったよね!? 生きててよかったヒャッホー!! ルート次第であんなことやこんなことも出来ちゃうやん! 俺の人生いま最高潮やーー!! バンザーイバンザーイ!!



……と。




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