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輝く夢のラグタイム

勇者アシュレイに全てを託し魔王は倒れた。世界に平和が訪れ……るほど甘くはなかった。


魔王の無敵のバリアまで一閃のもとに切り伏せたリファには、一体どんな秘密が隠されているのだろうか?

 「こっちだよ、アシュ君!」



「おいおい、あんまり早く歩くなよ! ここに来たのは初めてなんだからよ!」



 人々の雑踏と熱気の中で、いま天上にある深い青を宿す空のような色をしたミディアムショートヘアーの少女は、まだ会ったばかりの俺を馴々しく手招きする。過去と未来的が入り交じるような不思議なデザインの白と赤半々のワンピース、そのやたら短いスカートが東南の柔らかい風でひらひらと揺れていた。



彼女の名は、セトナと言う。自由都市エルカンダリアに惹かれた若者の一人だろう。セバル山脈を西に望むこの希望の街には、多く冒険者達の夢、希望、野心が持ち込まれる。それは立ち並ぶ風車の風に乗り瞬く星に連なるか、風車の音と共に時の静寂(しじま)に消える。



この街を語れば幾千万の物語が出来上がり、飽きること事が無いだろうと有名な叙情詩人ペリオドスは言った。「世界の図書館」と呼ばれる聖都デプシオン、「世界の食料庫」になぞらえて「世界の増幅機関」とも呼ばれる理由が、俺にもすぐに理解できた。人の活気が今まで訪れた街や村のどこよりも並はずれているのだ。都市としての大きさもさることながら、メイン通りの至るところで様々な人種の様々な格好の老若男女が話し、笑い、勝負したり、遊んだり、取引したりと好き勝手にやっている。治安もへったくれも無さそうな物騒な側面もあるが、皆目を綺羅綺羅とさせて楽しそうで、何か俺の心にもそれが伝わり、不思議な高揚感を得ていた。



「ねーねー、遠慮せずにセドお姉ちゃんって呼んでいーんだよ?」



「悪いが、どー見ても、お前の方が年下に見えるんだけどな」



「いやーん、アシュ君のエッチ! 今、お姉ちゃんをオカズにイケナイ事考えたでしょ!」



「考えてねーよ! 何で話がそっちに向かうんだ!」



メイン通りから外れると階段だらけの傾斜地が現れた。その階段の先を登りきった高台には建物の一団がある。遠くを見るとあちらこちらに似たような凸凹がある。実に不思議な造りの街だ。色んな物を寄せ集めて無理やりくっつけたようなツギハギ感……しかし、それでいて不思議な一体感がある。矛盾しているようで矛盾していない一塊(いっかい)の都市。



「最初はね、この階段の先にある部分からはじまったんだよ。この街はあそこ……〈ゼロ・コミュート〉から長い歴史の中でどんどん広がって、大きくなっていったの。向こうに見える壁に囲まれたところは〈ウェル・ヴァーレ〉。昔、クレンザー帝国がここに攻めてきた時に急場凌ぎに作った防衛施設だったんだ。外敵から身を守るために拡張することもよくあったみたいだね。最近は、カジノとかパチコンとかギャンブル施設を増やすのがほとんどなわけだけどさ」



「ふーん、お前物知りなんだな」



俺より少し上の段を登っているセトナは、こちらを振り向くとエッヘンと自慢げに両方の腰に手を当てた。



「どう? お姉ちゃんってなかなかデキる子でしょ。もっと褒めてくれたまえよ、弟君!」



「うーん……さっきからずーっとパンツ丸見えな奴をこれ以上褒めるのはなぁ……しかも、その柄はどうかと思うぞ」



 「えー? このお姉ちゃんバリお気に入りのハナ柄パンテイにエロスを感じないですと?」



「いや、だって、花じゃなくて鼻だろ? フラワーじゃなくてノーズの方だろ? おまけに部分的に鼻毛が出てるし」



「そこが良いんじゃないですか。アシュ君はまだまだ子供だねえ〜」



「大人子供の問題じゃ無いだろうに。それに興奮するなんてどんだけのマニアックなフェチズムの持ち主なんだよ……あと、少しは恥じらえ! さっきからずっとおパンツ丸見えだぞ! 清楚な顔してんだからちょっとくらいは隠そうとしたほうが逆にそそられると俺は思うがな」



「これは、見せパンなんですぅ。この子、何でわかんないかなー? じゃあ、お姉ちゃんが後でじっくりその辺含めて教えてあげちゃおっかなあ?」



「こ、こら!」



遠慮なく顔を俺の目の前に持って来て艶やかな瞳で見つめてくるセトナ。さすがにここまでされると、この手の女の子がタイプじゃない俺でもドキッとしてしまった。



「アシュ君の知らないあんなコトやこんなコト、いっぱいいーっばいレクチャーしてあげる。なんなら…先の延ばしせずに……」



「おい、おいおいおい! 話が脱線しすぎだぞ? これ以上階段で立ち止まってたら邪魔だし、そろそろ行こうぜ? お前達の〈ギルド〉にさ」



セドナはちぇーっと残念そうな顔をしたが、すぐに身を翻して階段を上り始めた。相変わらずパンツは見えたままだったが、どんな破廉恥な話をしても、どんなに恥じらい無くイタい行動をとっても、そのすべてに清涼感があるのは、この血縁なんてまるでない自称「俺のお姉ちゃん」の美徳なのであった。



「はーいな! もーすぐ着くから安心したまえ!」


「ところで」俺は背中ごしに聞く。「お前のいる〈ギルド〉の名前は何て言うんだ?」


セトナは、あーと顔を少しだげ持ち上げて、俺の方を悪戯(いたずら)っ子みたいに流し見て応えた。



 「私達のギルドはねぇ、その名も〈ヤンデ連盟〉って言いまーす!」



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