スペランカー(クソゲー的な意味含む)
【個人的なクソゲーの定義】クソゲーは色々致命的な欠陥や問題点はあるが、ネタになる要素や魅力的があって楽しめるものを指す。欠陥や、問題点があってかつ魅力も無ければ面白くもないものはダメゲーに分類される。
「小娘……この紅の魔王を無視するとは、大した魂だな」
「アッシュ、もう、逃がさないよ。私に、早く、心臓をちょうだい」
「こら、聞かぬか……」
「さあ、こっちにおいでよ、アッシュ。隠れてないで出ておいで。さあ、さあ……」
「聞っけーーーーーーーーーいぃ!」
部屋中に響き渡る魔王の怒声。あまりの声の大きさで部屋が振動し、灯りは揺れ、天井からはパラパラと石が落ちてきた。そこで、やっとリファは魔王に視線を向ける、その眼は感情が全く感じられず、魔王の邪眼よりはるかに不気味で恐ろしい。俺はリファに「このラスボスを倒せばもう聖剣覚醒させなくても大丈夫だと思うぞ多分!」と言いたかったが、言ったら魔王に炎で灰にされかねないので、暫らくは黙って様子を見ることにした。
「何……邪魔するなら、殺すよ?」
「言ってくれる……しかも、貴様が持っているその剣は、もしや十二聖剣が一つ〈順応者〉ファールデクスではないか?」
「……」
リファは答えないが、全くその通り、大正解です。流石は魔王、俺も知らなかった聖剣の通り名(カッコ内のやつ)まで知っているなんてなかなか博識な奴だ……って、仲間もとい人類最大の仇的を褒めてる場合か俺のバカンオタンチンめっ!
「まあ、いいだろう。見るところ真の力に目覚めてはていないようだしな……覚醒しておらぬ聖剣など木偶の棒同然。我が力で粉々に粉砕してやろう」
ボス発言キターやっぱ魔王はこうでなくっちゃ……いやいや、だから沢山の罪もない人々を殺した悪の元凶なんだってばよ俺のクソアンポンタンめっ! ポカンだポカンだ!!
「言ったね。聖剣を冒涜する害虫め、その喧しい音を出す羽を切り刻んであげる」
リファの語りはまるで感情がこもっておらず、機械人形或いは量産型クローン人間のようだ。魔王などまるで眼中に無い、ただの邪魔な障害物でしかないかのような扱いだが、魔王の方もそれに笑みを浮かべる貫禄ぶり……ヤベェ、この2人規格外のアルティメットだわ。今の俺に入り込む隙間なんて全く無い。
「我を矮小な虫に例える奴はお前が初めてだ! 面白い面白すぎるわ……貴様には我を愉しませた礼として地獄の炎でジワジワと身を焼かれる地獄をプレゼントしてやろう!!」
魔王はズンと立ち上がる。そして、右手を掲げると頭上に大きな黒い核とお玉杓子のような無数の邪気がまとわりついたが火球を生み出した。それはみるみる大きくなり、さながら小さな太陽のようにギラギラと輝いた。その熱気は俺のところまで届く……クソ眩しくてクソアッチー! でも、我慢して目の前で始まるアルティメットバトルを見届けるしかない! 今できることはそれだけです!
「食らうがよい!ダァーークネス・サンセットォ!!」
巨大になりきった火球は、ドラフト一位指名の豪腕投手が投げる直球並のスピードでリファ飛んで行った。かわすことなど出来そうにない当たればアウト、ゲームセット! ……しかし……
ブンッ
一振り。リファが聖剣を一振りしただけで、灼熱の火球は瞬く間に消滅してしまった。反らしたわけじゃない、いとも簡単にアイツは魔王の攻撃を薙払い、打ち消したのだった。一兆を軽く超える攻撃力(勇者スカウターによる推定値)と言うは、やはり伊達ではないらしい。
「なにっ!」
かの大魔王も、これには動揺を隠せないようだった。
「こやつ……」
「刃向かうなら、消えろ……羽虫があッ!」
反撃とばかりに今度はリファが魔王に飛び掛かった! ……しかし……
キイン!
リファは、魔王を包み込むように現れた黒く輝く透明なバリアーみたいなものに弾かれ、火の粉を纏いながら後方に飛ばされた。これが、かの有名な「豪魔焔壁」。覚醒した聖剣以外の全ての攻撃や魔法をシャットアウトするだけでなく、触れたものに攻撃を加える、大魔王最大の防御システムだ。




