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デスクリムゾン(クソゲーじゃないよ)

せっかくだから、俺はこの紅の魔王を選ぶぜ! (チャラッチャラッチャラッチャラー)


 扉の先にあったもの、そこは左右におぞましい悪魔の絵が描かれた大きな部だった。松明が一直線に列をなして燃え盛りその先にある大きな玉座に続いている。その玉座にどっしりと腰を下ろすのは、勿論かな世界に名を轟かせる魔王はダイムライガだ。



まさか、こんな形でこんなにも早く宿命の相手と対峙することになろうとは誰が予想できただろうか? これを読んでくれている皆さんの中に、もしこの展開をはじめの方で予想できた人がいたら、空想デジタルカメラを差し上げたいところだ。



前に進むたびに、何か電流のようなものが体を走る。ティエルのお父さんや、ジグルド、サイファス、コーラル、読者様の知らない散っていった者たちの仇が目の前にいるのだ……



テラストラに君臨してきた数多くの魔王の中でも屈指の実力を持つ大魔王は、体長5メートルはあるだろう大男であった。しかし、それ以上に体から沸き起こる禍々がしいオーラでその数倍以上に大きく感じる。筋肉隆々の体は燃え盛るように赤く、頭に生えた大きな漆黒の角もまた怪しく光る。時に、「紅の魔王」と呼ばれるが、成る程、(たが)わない見た目である。しかし、違わないのは見た目だけでは無いだろう。圧倒的な炎の力を操ると言う噂は有名だ。魔王の放つ豪炎は、極限覚醒した聖剣の理力や全てを弾き返すと言う「デュライの大盾」、或いは究極クラスの防護魔法や禁呪の1つで水属性の「アクエリアテンペスト」などで対抗するしか無いと言われている。灼熱ね炎をまともに食らえば、黒焦げどころか灰にすらもならず消滅してしまうだろうと母さんは言っていた。



「……貴様……何者だ?」



俺を、赤い魔眼で見下ろしながら魔王は辺りに響く超アルト声で言う。表情には怒りはない。蟻を見るかのような冷めた視線だ。それでいておぞましい。並の人間なら良くて発狂、悪ければ死んでしまいかねない眼力であるが、幸い俺は勇者なので生まれつきこの手の精神攻撃に耐性を持っている。その上、リファと言うモストデンジャラスな存在を知り、彼女に追わ続けてすったもんだがあった結果、元々弱くはなかったメンタルが更に鍛えられて、冷静に立っていられるどころかタイマンで臆せず話す余裕まで有しているのだった。



「俺は、アシュレイ。勇者エクセーダの息子だ」



「ほう……あのぎっくり腰になった女勇者の子供か」



「う……有名なんだな、ぎっくり腰の件は」



「フハハハ! まったくもって情けない話だからな……さて、そんな阿呆の子供がノコノコとここに来るとは、どういうことかね?」



「ふうん、聞いてくれるのか? 意外と物分かりが良いんだな」



「お前のような若造など、すぐに殺せる。生憎暇をしておるから、遺言代わりに聞いてやるのさ」



「さいですか、じゃあ、ようく聞いてくれよ」



魔王はグフフと邪悪なる笑みを浮かべながら、いいだろう話すがよい……と言った。



「もうすぐ、ここに1人の少女がやってくる」



「ほう……命知らずが他にもいるのか」



「ああ。それでだ、魔王さんには俺より先にそいつの相手をしてもらいたい」


「……我に指図するとは、小僧にしては大した肝を持っているな」



「もし、そいつを倒せたなら、俺を殺せばいい。とにかく、まずはその少女と戦ってくれ」



「なかなか面白い事を言う……つまり貴様より実力があると言うことか」



 「ああ、間違いねえよ」


 強気な姿勢を貫くと、魔王は玉座の手すりに肘を立ててニンマリと頬を引っ張った。



 「よかろう、そやつが現れたらまずそちらから葬ってやる」




上手くいった。流石は舌先の錬金術士(自称)、魔王すら言い包めたぞ! エッヘン! これで魔王とリファを戦わせることができるわけだが、あくまでもこれは第一段階であってこの後をどうするか……どうやってこの先生き延びるかまでは決めていない。仮に俺が死んでも、魔王さえ倒されればとりあえず世界の為になり勇者の仕事としては上々だがやっぱり死にたくはない。だから出来る限りの延命手段を俺は探さねばならない。



「どうした、難しい顔をして」



「いやいや、なんでもないッス!」



「まあ、いいだろう……ところで、さっきからそこで黙っているが、挨拶は無しかな? かつての忠臣、エルドレットよ?」



魔王は、視線をゴゴゴと動かしてデュラハンを操りっぱなしの風来坊に語り掛けた。すると、鳥人間は鎧から飛び出して大きくなり、魔王の玉座の下に駆け寄ると、しゃがみこんで(こうべ)を垂れた。元に戻ったデュラハンは、魔王の気配に怖気づいたのかスタコラ部屋の入り口の方にに逃げて行く。



「お久しぶりでございます」



「エルドレット……まさかこの小僧に付いてきたわけではあるまいな」



「その、まさかでございます」



「我らが人に組するは御法度と、お前が一番わかっているはずであろうに。恥を知れ!」



「申し訳ありません。しかし、私は全てを捨てた身であります。勝手はお許しあれ」



 「……ふむ」



魔王とこのように話すとは、やはり風来坊は只者では無いらしい。しかし、エルドレットて……そんな本名があるんなら俺にバードマンなんて名乗らんで良かったと思うんだが、何か理由でもあるんだろうか?



「エルドレットよ。頭を上げい」



「はっ」



「お前、もしや小僧の言うようにこれから来る小娘とやらの事を知っているのか?」



「細かい事は存じ上げませんが、見たところ只者出はないと思いました。あの底知れぬ力、警戒されたほうがよろしいかと」


「そうか、お前が言うのならば真摯に受け止めるしかあるまいな」



魔王は眉をひそめ、さっきよりも真剣さを帯びた表情になった。



「なるほど……確かに、この気配は……ククク、面白いではないか!」



魔王がそう言った時に、背後から扉の開く音が聞こえた。灯りに照らされて不気味にゆっくりと迫り来るのは、勿論も勿論、話題の張本人であるリファである。



「アッシュ……追いついたよ」



魔王を無視して、俺にだけ視線を向け、リファはニヤリと笑った。

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