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港町ウォンサハン


はじまるよ〜

カウントダウン、ワントゥスリー……ああ逆か……これだとコンバインしちまうぜ!






「にーちゃん、随分お疲れの様子だねえ」



「ふぅ……まあな」



薄暗いバーのカウンターごしに、マスターから手渡された水をゴクリと飲み干す。喉の渇きが一気に潤った。港町ウォンサハンは川と海に囲まれた水に恵まれた豊潤な場所で、このおもむろに出された水ですらも、実に純度が高く素晴らしく美味(うま)い。



「ありがとう……これが無料(タダ)とは、この町もは良いところだぜ」



「いや、それは一杯500ゴルチェだ」



「なぬ!? 自分から出しといて金とるのかオイ!?」



「はい、とりますよ。警戒せず飲んだお前が悪いんじゃボケ」



「ひでえ……ぼったくる上に暴言まで吐くなんて水は綺麗だが、あんたは腐ってるな」



「あー、このダンケツ野郎。なんか微妙に上手く言っちゃってるんですけどマジウケル」



「くっそー! つーか、言葉づかいコロコロ変えんなよ! 誰か解りづらいだろ?」



マスターは、毛の一本も見当たらない、まるで大魔道フレガバリアンが禁呪フレイムバリアントを使った後の不毛地帯のように激しくハゲた頭を、ポンポンと叩いてガハハと豪快に笑った。



「ジョークだよジョーク! おまえさんが辛気臭い顔してるからちょいと励ますつもりで言ってみたのさ」



「おっさん……」



「一体、何があったんだい? よかったら話してくれないか」



「……」



「おいおい、だんまりはやめときなって! 読者さんが困るだろ」



「おいおい、読者って……分かってるけど、それ物語の中で言うなよ!」



「いやいや、やっぱ世の中わかりやすさと言うものが大切だからさ。ちゃーんと説明しないと不親切だと思われるぜ? ただでさえファンタジー世界ってのは固有名詞とか多くなるんだ。勝手に1人っ走りすると、読んでるうちに読者様がついてこれなくなっちまう。しかも不定期連載だからストーリーや世界観忘れたれて途中でやーめたって事に可能性も十分にある。とにかく、懇切丁寧に説明するのが大切な時間を消費して読んでくれるユーザーへの礼儀というものさ。良い物語というものの85%は優しさで出来ている……違うかね?」



「いやいや、色々世界観ぶっ壊すワード吐いた時点で問題ありすぎだろ……(あと15%ってなんなんだろう)……けど、言っちまったものは手遅れか。仕方ない……こうなったら全てを話すとするぜ!」



「おお、そうこなくっちゃな! よしよし、お前が舌が回って話しやくなるようにとっておきの酒を出してやるぜ」



「おう、いいねえ!」



マスターは、部屋の奧から「フルージュ」と書かれた金色の瓶を持ち出して、グラスに注ぎ、俺に手渡した。並々と注がれたその酒は、店内の淡い灯りに照らされて虹色に輝いた。


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