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蒼海のソード・ライダー

リザ子のジャイアニズムにより、ギッタンギタンのメッタメタンされた勇者アシュレイ。



しかし、等身大パネルやチケット、衣装をほぼ自分1人で用意するなんて頑張り屋さんだなよあ〜そのバイタリティが八百屋を大型スーパーに伸しあげたわけか……






「はぁ……」




真っ青な海を見ながら俺はため息をついた。俺は今、揺れる船の甲板(うえ)にいるのだが、別に船酔いをしているわけではない。ヘコんでいるのだ。



リザ子との最悪の夜が明け、俺はハーマーの計らいで大型蒸気船を出してもらい海原へと飛び出した。ガウナ大陸を去り、迎う先はガープ大陸……賢者マーレガット様の住まう聖地アンブルシウスだ。しかし、そこに辿り着くまでは確実に、俺はあのジャイアント兄さん顔負けいやそれ以上の暴走特急リザ子と寝食をともにせねばならない。それが、もう最悪極まりないのだ。このままだとマジでメンヘラになりそう……



ほっぺたの絆創膏をさすりながら、再びため息をつく。そういえば、リファはどうしているのだろう? リザードマンの集落に入った以降行方を眩ませていて不気味だがあの無敵少女も流石に単体でこの大海を泳ぐなんてことは出来まい。残念だが追いかけっこもここまでだ……ただ、船に乗ってるのが皆リザードマンだから、あの見た目萌少女の事が恋しいとも思う……



そんな事を考えていると、遠くから大きな波がこちらに押し寄せてくるのが見えた。わりと荒れることが少なく平穏といわれるこのファール海域にしては珍しい高さだ。もっとも、そんなものがザバンと来たところで、ブルーな俺の心が揺さぶられる事は無い。ただ、それだけだったらば。



「む……むむむっ!?」


しかし、それだけでは無かったのだから俺は驚いてしまった。いや、普通この光景を見たら誰だって唖然としてカメラ小僧なら写真を撮るのに躍起になるに違いない。なぜなら、人が大剣の上に乗ってサーフィンをしているのだから。そして、それは紛れもなく、あのヤンデレチート巫女のリファだった。馬鹿な……ファールデクスを海上移動に使うなんて、あいつはどこまで人間離れしてるんやがるだっ!?



俺が唖然としている間に、リファは波を華麗な動きでかき分けて船に接近する! そして、至近距離になると同時にやってきた高波に乗っかり、ボード(聖剣)とともに波の勢いで太陽を目がけるかのように翔んだ。そして空中で108℃(テンエイティ)を決めると、そこで仮面バッタ並にアクロバティックに体を回転させながら剣を手に握りなおして重力に身を任せ下降、甲板の上にシュタッと綺麗に着地した。オリンピックだったら金メダル確定だろう。「聖剣乗り」なんてドマニアックな競技があればの話だけどな。



 「見つけた……アッシュ!」



 「まさかこんなとこまで追ってくるとは思わなかったぜ」



「さあ、聖剣ファールデクスにあなたの高ぶる血を捧げなさい……」



「……」



 俺は一定の間が開いたその場から動かない。そして、こう口を開く。



「リファ、周りを見てみろ」



「えっ……?」



俺の言葉に素直に促されて、少女は可愛らしくキョロキョロと百八十度見回した。勿論、いるのは俺以外みんなリザードマンだ。


「ほわわ! と、トカゲさん!? トカゲさんがいっぱいだょう」



明らかにヤンデレモードからオドオドする普通の女の子に戻ったリファ。並はずれたチート能力者のクセに気付くの遅すぎだろ! とツッコミたくなるが、ま効果テキメンなのだからよしとしよう。



「ほわわ……来ないでよう! トカゲさん近づかないでよう! アッシュ、助けてぇ!」


「いや、悪いな。下手に助けたら死ぬし」



「そんなこと、いわないでよう」



「よし、やはり爬虫類にはマジで抵抗ができないようだな……じゃあ、リザードマンの皆様方! この子を捕まえて縄かなにかで縛り上げちゃってください!」



そう言ってはみたが、何だかこっちが悪者みたいだな……しかし、これでリファを動けなくして、聖剣を取り戻し賢者様のところへ連行すれば万事穏便に解決出来るに違いない。つまりハッピーエンド確定! よかったー死ななくてホントよかった。昨日までの地獄の日々を思うと涙が出そうだ。運命神アシュキテア様は俺を見捨てていなかったらしい。ありがとうございます! あとで、沢山寄付金を出させていただきますっ!



リザードマン達は、リファを円陣を組んで追い込む。リーダーはリザ子らしく、正面から少女に迫った。ちょっと情けないが、そのリザ子の後ろで、俺は一部始終を見守る。



「きゅ!」リザ子が鳴く。



「ほわわ、こないでえ」リファは涙目。



「きゅるうううい!」



リザ子が変な声を出した。その時、リファの泣きそうな目が急にカッと見開いたのが見えた。



「邪魔しないでよ……」


「きゅ?」



「アッシュが自分のもの? ふざけるなあ! アッシュは私のモノなんだ! 私がアッシュを殺すんだ! 」



おいおい、なんでリザ子の鳴き声を翻訳できるんだよ……いや、そんなことより何かとてもヤバい感じなんですけど……



「きゅうう!」



「お前、どうしても邪魔をする気なんだね立ちふさがる気なんだ……わかったよ、それなら息の根を止めてやる! 例えトカゲだろうが、お前は万死に値する!!」



「キシャー!」



おいおい、何勝手に非公式ラブ争奪戦をおっ始めようとしてんだよ……しかし、そう言いたくても2人からでる強大な怒りのプレッシャーにより口に出すことはできなかった。どうやら……リファは俺への「愛」を邪魔する者に対しては、苦手もへったくれもなくなるようだ。



俺は、真っ青な顔で呆然と、ただただ事の成り行きを見守るしかないのであった……




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