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プロローグ〜南へ奔れ〜


「さあ、早く、人柱になってくださいっ!」



後方から聞きなれた声がする。しかし、俺はそれに反応して振り向いたりはしない。今はただ、走り続けるのみだ。



「早くあなたの紅き血でこの剣の渇きを潤し覚醒させるのです! さあ、足を止めて!」



 南。



 俺は南に向かっている。南に向かってひたすらに逃げているのだ。勇者になりきれない男に、今はその選択肢しかなかった。



もし、他の選択をしようものなら、後ろにいるあいつに、間違いなくブッ殺されるであろう。そう、あの右手に携えた灰色の大剣でバッサリと……だ。



とにかく、俺は南に向うしかない。己の抜群の方向感覚を信じて……

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