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兄のノート  作者: 青星
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二頁 愚兄

 美羽が拾ったノートを持って自分たちの部屋に戻ると、美香が美羽の分の布団も一緒に敷いてくれていているところだった。


「あ、お姉ちゃん布団敷いてくれてありがとねー」


「いいわよ別に。毎日やることだし一つも二つも変わらないわよ」


 布団を敷くことがいやなのか若干の苛立ちを含みつつ美香は言う。


「大体双子だからって部屋まで一緒にされるのはおかしいでしょ」


 美香のいつもの愚痴が始まったと、美羽も慣れたように返答をする。


「仕方ないじゃない。うちには子供部屋が二つしかないんだもん」


「その二つを私たちで分けて使えばいいじゃない!」


「そんなこと言ったってお兄ちゃんがいるでしょ」


 これも毎回繰り返される問答で美羽も美香もお互いに自然と口を動かしている。


「なんであんなダメダメな兄貴に部屋なんてあげなきゃいけないのよ。たかが数年早く生まれただけなのに、私たちの兄貴のくせして頭も悪いしイケメンってわけでもない。歌を歌えば音痴でおまけに身長も低い!ダメなとこあげたらきりがないわ」


 今回はいつもより怒りの度合が高いようで美香はやけに幸雄に対し強くあたっている。


「なんかその言い方だと私たちが顔がよくて頭いいって自慢してるみたいなんだけど……」


「い、いいでしょ別に。そんなには間違ってはないんだから……」


「まぁ、いいけどね。でも、部屋分けたい分けたいっていつも言うけどそんなに私とおんなじ部屋はいやなの、お姉ちゃん?」


 美香の若干の照れた様子に呆れつつも美羽は素朴な疑問をする。


「そ、そんなことないってば、美羽と一緒なのもうれしいんだけど、たまには、ね。一人もいいなって思う時もあるの」


「じゃあ、私がお兄ちゃんと一緒の部屋にするってのはどう?」


「ダ、ダメ、絶対にダメ!!」


「そう。じゃあ、もう部屋分けてほしいとか言わない?」


「言わない!あんな兄貴と美羽を一緒の部屋になんかさせれないよ」


 美羽の提案に慌てて自分の意見を取り下げる美香。美香にとってかわいい双子の妹が兄である幸雄と一緒の部屋になるのはどうしても嫌なことなのである。


「まったくなんでお姉ちゃんはそんなにお兄ちゃんのこと毛嫌いするかな、あれでいいとこはあるんだよ?お姉ちゃんの言う通り勉強はダメだけど優しいし、運動も一応人並み以上にはできる。あんまお兄ちゃんのこと見ないからわからないだろうけど」


「もういいよ終わり終わり、あんな兄貴の話は。……ん、そういえばあんた何持ってるの?ノート?」


 熱の冷めた美香は自分からしていた幸雄の話にはもう興味を示さず、美羽の持っているものに気づきそちらに話を振る。


「あ、そんな風に聴くってことはお姉ちゃんのじゃないんだ。さっきリビングで勉強してたからお姉ちゃんのだと思ったんだけど、違うんだね」


「ていうかなんかそのノート古いじゃん。そんなのあたしが使うわけないじゃん」


 言われて美羽もそのノートをよく見てみると廊下では暗くてよく見えなかったのかところどころ折り目がついていたり擦れていたりと、ここ一年のものではないように見える。


「あ、ほんとだ。よく見てなかった。まぁ、お姉ちゃんのじゃないなら二階にあったわけだしお兄ちゃんのだよね」


 そう言って、幸雄に返しに行くために部屋を出て行こうとする美羽を美香は呼び止める。


「ねぇ、その中身見たの?」


「え、見てないけど。なに、まさか見ようとか言うわけじゃないよね?」


「そのまさか。だって勉強もろくにできないあの兄貴がなんでノートなんか家で持ち運んでるか気になるじゃない」


 美香はそう言って美羽に近づきノートを取ろうとする。

 しかし、美羽も取られまいとノートを自分の背中へと隠して美香と対面する。


「さすがに勝手に見るのは良くないと思うよ、お姉ちゃん」


「いいじゃん、あんただって気になるでしょ?」


「う、まぁ……」


「じゃあ、いいじゃん。見よう見ようそうしよー」


「あ、ちょっと!」


 ほんのちょっとの逡巡を狙われて美香にノートを奪われてしまった美羽は、仕方ないと自分の本能に従うことにした。

 ノートを広げている美香の肩から顔をのぞかせてノートを見る美羽。双子だからか根本的な部分ではしっかりと似ている二人なのである。


「何が書いてあるの?」


「ん、よくわからないわ。なんか人の名前とそこの横にバツマークがついてるだけ。それに古い割にはあんま書かれてないよ、3ページ書いてあるかぐらいかな」


「なにそれ、よくわかんないね」


 まったく意味が分からない内容に早々に興味をなくしたのかノートを閉じて布団の上に投げる美香。

 

「もう、投げないでよ」


 放られたノートを取りに行こうとすると廊下を誰かが歩く音がする。


”コンコン”


『美羽ー、美香ーちょっといいかい?』


 廊下を歩いていた人物はどうやら幸雄のようだった。


「噂をすればなんとやらだな」


「そうだね」


 ノートを拾いながら美羽はドアを開けに行った。

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