真夏の炎天下、骸の転がった道をゆく――
真夏のよく晴れた日のこと。
ひこうき雲の背面に、モクモクした入道雲が重なって見える。
それら以外に雲が見当たらない晴れ空の下を、私は一心不乱に進んでいた。
正午になって太陽が南中し、高いところから容赦なく降りかかる日差しが私の身体を襲う。
あまりの暑さに余儀なく下を向くと、あちこちに仲間の死骸が転がっていた。
その無惨な姿に目を当てられないのだが、これが現実なのである。
(あちらは確か、近所でよく見かけたような……)
(ダメだ、私は私のことに集中しないと、私が死んでしまう)
この世界では、そんなのお構い無しに次々と死んでいく。
残酷な話だ。でも、みんな自分のことを考えないと生きていけない。
よく、知り合いとの会話の中で爆弾という言葉を耳にするから、弱った私からすると気が気でなかった。
爆弾だけは、絶対に嫌だ。
日差しを避けるように道端に立つ一本の樹の下に入り、幹に手をついて休憩を取る。
こうして落ち着く時間が今は重要だ。
――私ももうすぐ死ぬかもしれないからである。
そんなことは、ずっと前から分かっていた。
樹の足元に咲く赤い彼岸花を見て、気持ちが複雑になった。
早くこちらにおいでと招かれているような気分になったからだ。
いや。
それでも、私にはまだやることがあると自覚していた。
私を産んだ父母の思いがこの足に宿っているからだ。
木の幹を掴んだ手に力を込める。
決して生を諦めてはならない。
腹の筋肉にも力を込めて、思いを声に変えるんだ。
ここの道はそれなりにヒトの通りも多い。
ヒトからしたら私たちはうるさい存在だと思われているかもしれない。
いや、せめて五月蝿いではなく、八月蝉いと言って欲しいものだ。
そんなことを考えていたら突然、天と地が逆さまになったように見えた。
掴んでいたはずの木の幹はもう目の前には無い。
ふっ、まあ、爆弾と呼ばれずに静かに死ねるならそれでいいか。
羽を動かす力を胸部にかけても、自然が施す万有引力には勝てなかった。
見果てぬ引力を前に為す術なく、真っ直ぐに落ちてゆく。
決まり切った運命だ。
背中の強い衝撃に気付く頃には、隣に別の骸が並んでいた。
それが兄弟か、恋蝉か、近所の蝉かも分からぬ。
ただ、寿命の短い私たちからすれば、その死を悼むこともできなかった。
私は静かに目を閉じ、足も閉じて息を引き取った。
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