内容整理1
先ほどまで人の出入りでざわめいていた客室前も、医療ロボが遺体を運び出した途端に、急に冷え切った空気を取り戻した。
シンイチはエイシムが戻って来るまでの間に一通り事情聴取を済ませる。今の所二人とも不自然な行動は一切なかった。
一通り聞き終えた所でエイシムが帰って来たので現場検証を行うので二人には出ていって貰うことにした。
船長は「俺は俺でこの件を会社に報告せねばならん」と軽く頭を下げ部屋から出ていく。
アリアも「私も亡くなった事を報告しないと……」とフラフラとした足取りで部屋から出て行った。
シンイチとエイシムは、静まり返ったダフニの部屋にいる。エイシムは落ちていた安楽死銃を証拠品として体の何処かに収め、部屋全体を改めて録画している。
シンイチは窓の電源を入れて外の宇宙空間と言う虚空をじっと見つめる。
「……さて、エイシム。今のところの見立ては?」
「遺書あり。凶器あり。侵入の形跡もなし。死亡推定時刻も誤差がありますが、ブラックアウト中の2時間の間で起きたと考えられる程度には常識の範囲に収まっています。論理的には“自死”で説明がつきます」
「だよなあ。お前もそう思うか」
軽いため息を吐いてエイシムの方を見る。今は部屋の全体のスキャンをしておりもうすぐ終わりそうな状況だった。
「ええ」
そしてそのままスキャンが終わり、現場の再現を行う、投影装置から安楽死銃とダフニが投影されたのを確認すると、エイシムがモノアイからシンイチを見つめる。
改めて現場を確認してここで『自殺だ』と断定すればそのまま調査は終わるだろう。
――だが。
「だが、違和感はある」
「ふむ。何故そう思うのです?シャーロック?」
エイシムがわざとらしく聞いてくる。
「彼女の遺書に『私の遺体は必ず故郷の墓に葬ってください』とあった。それならば故郷に着いてから死んだ方が自然じゃないか?」
「そもそも彼女は帰郷とお見舞いが目的だったはず」
「なのに何故、故郷の土を踏むどころか星すら見ずに自殺したんだ?」
「それはおそらく、ブラックアウトが最も確実だったからですよ。恐らくですが、今回の自殺はこれが始めてではありません」
「遺書に『夫が何度別れを告げても決して別れてはくれず』とある通り何度か別れようとしてますね。文字通り『離婚する』と言うのもありますが、自殺や失踪と言う意味合いも言葉としてあります」
「その証拠に遺書の続きに『私は次こそ最後まで逃げます』と言う言い回しもしています」
「加えて大きな理由は到着後の護衛もあります。4人で会話した時に言っていたのですが……覚えてませんか?」
頭を捻る。記憶力は良い方だと思うが、機械と違って覚えている所と覚えてない場所がある。
「なるほど……覚えていないようですね。大丈夫です。映像記録はプライバシーやら容量やらメモリの問題やらに加え、私達の諸事情より記録はしてませんが、音声ログは残っていますよ。もしかしたら何か気付くことがあるかもしれません」
「そうだな。頼む」
「了解しました。 ……ログを再生します」
読者諸氏はきっと過去の会話の内容が気になっているだろう。ただ、中にはひねくれ者——もとい、鋭い推理眼の持ち主——が「この探偵自身が犯人では?」という信用ならない語り手トリックまで疑っているかもしれない。
そこで作者として誓おう。このログには一切の嘘も誇張も省略もない事をここに宣言する。
(正直、これをちょっとやってみたかっただけである。)
お試しはここまでです。では2月8日(日曜日)に行われる広島文学フリマく-42で、お会いしましょう。




