事件発生
ブリッジの扉が静かに開いた。
中には二人の姿。モニターの前に立つ船長は、顎ひげを撫でながら「どうしたものか」と言いたげな難しい顔をしていた。その隣にいるのは、ワープ前に面識のあったアリア嬢だ。酷く困惑した表情を浮かべ、今にも泣き出しそうな気配だった。
――こりゃ、かなり面倒そうなトラブルだな。
シンイチはできるだけ声を落ち着かせ、平静を装って口を開いた。
「それで? トラブルというのは」
「ああ、実は――」と船長が言いかけたところで、アリアドネが遮るように叫んだ。
「お祖母様が! お祖母様が……!!」
彼女はシンイチに気づくと、堰を切ったように訴え、顔を歪ませた。ブワッと泣きそうな表情を見せる彼女を、船長とエイシムとでなだめ、改めて話を聞くことにする。一方シンイチは困惑していた。
「ダフニ・モーリエさんが……ご自室で亡くなられているのが発見されてね」
船長は言葉を選びながら告げた。
「ワープが終わってから、娘さんが様子を見に行ったら……すでに亡くなられていたんだ」
「ワープ前には生体反応があったので確かに生きていた。だから、亡くなられたのはワープ中と考えていい」
その言葉にシンイチは頷いた。
――それは自分も保証できる。ワープに入る前、確かに彼女は健在で、シンイチとエイシム、それに彼女自身を含めた四人で談笑していたのだから。
シンイチは軽く息を整え、形式的に手順を確認するように言った。
「……まずは現場の確認と、発見当時の状況整理。その後、本部への報告となりますね。ワープ後の宙域なら、到着先の惑星が管轄か……エイシム」
「問題ありません。捜査システム、スタンバイ……レディ」
「レディ」
「――捜査を開始します」




