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画面越しの片想い

作者: Tom Eny

画面越しの片想い


第一章:健太の片想いと二人のVTuber


ごく普通の男子高校生、佐藤健太は、憧れのマドンナ・星野美咲にひそかに想いを寄せていた。少しボサボサの髪に、いつも同じリュックを背負った健太は、美咲と話すときは声が小さくなってしまい、目が泳いでしまう。健太は、美咲がクラスで笑うたびに、自分の居場所ではないどこか遠い世界を見ていた。彼の安息の場所は、ひびの入ったスマートフォンの画面の中だった。


健太は知らなかったが、美咲は癒し系の人気VTuber「ルナ」として活動していた。美咲のクラスでの明るい笑顔とは違い、VTuberとして配信するときは少し甘えた声になる。健太は、その二つの顔を持つ美咲に夢中だった。


しかし、健太の恋の相談相手は、もう一人のVTuber「ヒナ」だった。クラスメイトの佐倉陽菜は、健太に少しでも近づきたい一心で、VTuberとして活動を始めたのだ。ヒナは、美咲とルナが同一人物であることを知る唯一の人物であり、健太の不器用な片思いを陰から応援するという、切ない立場に置かれていた。


一方、イケメン男子の田中隼人は、美咲への一途な想いから健太の動きを監視し、その都度、健太の不器用な恋路を邪魔していた。田中は、健太を密かに見つめる陽菜の存在と、彼女の健気な恋心にも気づいていた。


第二章:交錯する想いと田中の気づき


新学期が始まり、健太は美咲との関係を進展させたいと、VTuber「ヒナ」の配信に匿名でチャットを送った。


「夏休み中、美咲さんと話す機会が全然なくて...どうすればまた自然に話せますか?」


陽菜は、健太のチャットを読み、胸が締め付けられる思いで彼の恋を応援する。親友として美咲の好みを熟知している陽菜は、美咲がVTuberとして話していた趣味の話と結びつけ、健太に届くように、そして美咲に気づかれないように慎重にアドバイスを送った。


「美咲さん、最近美術の授業でデッサンに夢中みたいですよ。もし見かけることがあれば、さりげなく話しかけてみてはどうでしょう?」


陽菜は、親友である美咲のことが好きで、健太を応援する気持ちに嘘はなかった。しかし、その陰で、健太が美咲に惹かれていくことに切なさを感じていた。


健太は、美術室でデッサンに夢中になっている美咲を見つけ、勇気を出して話しかけようと近づく。美咲さんの周りだけ空気が違う気がする。デッサンの筆が紙を擦る音が、まるでBGMみたいに聞こえる。ポケットの中で、ぎゅっと拳を握りしめている健太は、頭の中で言葉を探す。「デッサン、うまいね、とか…?」


その時、健太の動きを監視していた田中が先に声をかけた。


「美咲、またデッサンしてるんだ? よかったら、僕の描いた絵、見に来ない?」


健太は、またしても田中に先を越され、呆然とする。美咲は「あ、田中くん! 見たい、見たい!」と明るく盛り上がり、健太は蚊帳の外だった。田中は美咲に笑顔を向けていたが、健太が落胆して立ち去るのを見ると、その笑顔がほんの一瞬だけ曇った。


その帰り道、田中は教室の窓から健太が落ち込んでいる姿を遠くから見つめる陽菜の姿を目にする。陽菜は、すぐにスマホに何かを打ち込み始めた。その直後、田中が偶然見ていたVTuber「ヒナ」の配信が始まった。


「元気出して! 失敗は成功のもとだよ!」


ヒナは、まるで健太を励ますかのような配信を始めた。田中は、このタイミングの不自然さと、健太への健気な視線から、陽菜がヒナであると確信した。田中は、美咲への想いと、ヒナの健気な愛への共感の間で苦悩する。彼は、健太の恋を邪魔し続けるべきか、それともヒナの恋を応援するために健太を助けるべきかというジレンマに陥っていた。


第三章:新たな一歩とそれぞれの決意


その日の夜、健太はヒナの配信でチャットを送った。


「あのっ、ヒナさん…えっと、また失敗しちゃいました…」


しかし、健太の心は折れていなかった。


「でも、ヒナさんがアドバイスしてくれたおかげで、美咲さんの好きなものが知れた。本当に、ありがとうございます!」


陽菜は、健太の感謝の言葉に涙を流し、健太の不器用な優しさに心を打たれた。彼女は、これからもVTuberとして健太を支え続けることを誓う。


その様子を見ていた田中は、健太がヒナに感謝していることに気づき、美咲への想いだけでなく、健太を応援するヒナの健気な姿に心を打たれた。


田中は、健太とヒナを応援することを決意する。


第四章:エピローグ


その後も、健太はヒナのアドバイスを実践し、美咲との関係を少しずつ進展させていった。ある日、健太が美咲に渡そうとカバンから取り出した消しゴムを、緊張のあまり落としてしまう。田中は、その消しゴムを拾い、健太の手にそっと握らせた。健太は驚き、田中は何も言わずに微笑むだけだった。


さえない女の子・陽菜は、健太と美咲が仲良くなっていくのを見て、心の中で涙を流しながらも、二人の幸せを願っていた。「これで、良かったのかな…」陽菜は、VTuberとして健太を応援したことを自問自答する。健太が自分に気づかないと知りながらも、ひたすら彼の恋を応援し続けた。


そして、健太は、美咲への憧れを募らせる一方で、自分を支えてくれるVTuber「ヒナ」の存在の大きさに気づき始めていた。


健太、美咲、陽菜、田中の物語は、それぞれの心の中で、少しずつ、しかし確実に、次の章へと進んでいく。

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