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ルース視点 ギルド職員の慌ただしい日々 2

「あ~疲れた。今日は早く帰りたいなぁ」

 今日も仕事の鬱憤を吐き出すように愚痴を付く。

 昨夜よく眠れなかったせいで瞼が重い。今すぐ机の上で居眠りをしたいのを我慢して、書類を開く。


(それにしても、あいつの幼馴染ってどんな人なんだろう……)

 昨日、あいつは『S級冒険者になりたいって言っていた友人がいる』と言っていた。彼女に友人がいるなんて知らなかったので、内心すごく驚いていた。


 幼馴染のことを話している時のあいつはなんだか楽しそうだったけれど、もしかして幼馴染とやらのことが好きなのだろうか。


(なんだろう、なんだかもやもやする……)

 昨日から全然仕事が進まない。

 一つため息をつくと、後ろから肩をポンッと叩かれた。


「よう。ちゃんと真面目に仕事してるか?」

 そこにいたのは、ギルド受付の先輩だ。


「わざわざ言われなくても、ちゃんとやってるよ。」

 睨みつけると、彼はニヤニヤとからかうような顔をした。


「聞いたぞ、ルース。彼女に振られたんだって?」

 はぁ⁉ 何それ、知らないよ。

 と言うかなんでみんな同じこというんだよ。店長も昨日、そんなことを言ってたし。


「振られてないし。というかそもそも、彼女なんていないんだけど?」

 ただ事実を言っただけなのだが、可哀そうなものを見るような目で見られてしまう。


「そうかそうか。めげるんじゃないぞ。強く生きろ。」


「煩い! 仕事に集中できないでしょ!!」

 抗議すると、彼は呆れたような表情を浮かべた。


「いや、最初から仕事に集中してないだろ……」

 うっ。痛いところを付いて来る。


「何しに来たんだよ!」

 まさか後輩をからかうためにわざわざ席から離れて来たなんて言わないよな⁉


「ああ、ちゃんと仕事の話をしに来た。お前、昨日話してたパーティーの専属受付係になってくれるか?」

 『昨日話してたパーティー』と言うのは、竜人国から来たであろう三人組のことだろうか。


「えっ! なんで俺が?」

 専属受付なんて、そんな面倒な仕事やりたくない。そんなもの、別の人が代わりにやってくれればいいじゃないか。


「ほら、お前にはパーティーの専属になった経験がないだろ? 勉強になると思ってな。」

 確かにそうだけど……


「それに、他に仲いい冒険者パーティーなんていないだろ、お前。」

 確かに、仕事をこっそりサボり続けている俺を専属受付として選んでくれる冒険者なんていないだろう。


「分かったよ。受付の仕事をすればいいんだろ? 分かったから!!」

 面倒なことに、あのパーティーの専属として選ばれてしまったようだ。



 ◇◇◇



 それからしばらく受付の仕事を続けていたら、この前の冒険者達がやって来た。

 前回は三人だけで来ていたが、今は七人に増えている。


(羨ましいなぁ。俺なんて、パーティーを組んでくれる人が一人もいないのに……)


 どこか俺を仲間に入れてくれるパーティーがいれば冒険者としての仕事ができるようになるのだが、なぜか誰もパーティーを組んでくれない。

 それなのに、こいつはたった数週間でこんなに人数を集めたなんて。

 ちょっぴり悔しく感じてしまう。


「……ダンジョンに潜る依頼を受けようと思って。」

 その言葉に、思わず眉を顰める。


「ちょっと待ってよ。その人数じゃダンジョンには入れないよ?」


 そう言えば、まだギルドのルールについて説明をしていなかっただろうか。

 面倒だが、一から説明する必要があるだろう。


 別の部屋に移動して、講義をしてあげることにした。


(へぇ。二人とも文字を読めるのかぁ)

 本を開いて文字を追い始めた二人を見て、少し驚いた。


 文字を読める人は少ない。普通なら文字を学ぶ機会なんてほとんどないのだ。俺は実家が商会だったおかげである程度文字が読めるが、大体の冒険者は文字が読めない。だが、こいつらは二人とも文字が読めるようだ。


(もしかして二人とも、貴族だったりするのかなぁ)

 魔力も多いようだし、その可能性は高いだろう。


 基本的に、魔力を持っている人は貴族に多い。

 それは、二千年前の歴史が関係しているそうだが……それは別にいいだろう。

 別に貴族でも冒険者になれるのだし、あまり詮索しない方がいい。


 それにしても、彼らは本当にやる気がない。

 いくら文字が読めるからと言って、やる気がなければどうしようもない。

 片方はどこかうわの空だし、もう片方は眠くなったのか机の上に突っ伏している。


「聞かないならここら辺で切り上げるけど。……こっちの人も聞く気がないらしいし。」

 そう言って寝ている方の頭を叩くと、二人とも本を開いて勉強を始めてくれた。これは楽で助かる。


 数十分後、ようやく講義が終わった。

 長かった。

 銀髪の方が眠ろうとするたびに叩き起こさなければいけないのが面倒だった。

 こいつはマイペース過ぎないだろうか。


 それから、彼らは二つに分かれてダンジョンに潜って言った。

 最初にいた三人で一緒のパーティーを組むのかとも思ったが、そうでもなかった。

 どうやら男女別に四人と三人で別れたようだ。


 そこで、俺ははっとする。


「もしかしてこれ、両方のパーティーの受付をやらなきゃいけないってこと?」


 まさか、仕事が二倍に増えたのではないだろうか?

 今更ながら、かなり後悔してきた。

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