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獣人国でやりたいこと

 右手を前に出して、そこから雪を出す。

 キラキラした氷の球体が空中に浮かび、虹色に光った。


(よし。氷属性もだいぶ上手く使えるようになったね。)


 今日は森の中で野営ということで、私は魔物が来た時のために見張りをしていた。ずいぶんと暇だったため、せっかくだから新しく手に入れた氷属性の練習していた。


 今までは闇属性で魔物を魔力で飲み込むか炎で焼き尽くすかがが主流だったけれど、次からは氷で固めた方が早いかもしれない。そっちの方が魔力が少なくて済むし、ずいぶんと効率が良い。


 そんなことを考えていると、リリサが小屋(スキル木材加工で作った即席の部屋)から出て来た。

 魔法を使っていたから起こしてしまっただろうか?


「おはようございます、ミロウ様。朝早いですね。」


「おはよ~。」

 私は氷をふわふわと浮かしながら答えた。

 リリサはそれを見て、目を輝かした。


「すごいですね! もうこんなに氷を操れるようになったなんて! 向かうところ敵なしです!」


 すると、木の上からガサガサと音が聞こえて来た。一つしか家を作る暇がなかったので、エイスには木の上で寝てもらっているのだ。


「朝早くから魔法の練習か?」

 エイスは木の上から降りてくると、楽しそうな顔で笑った。


「エイスもおはよう。そう言えば、二人に見せたいものがあったんだよね。」


 私は地図を取り出して、その裏側を二人に見せる。


「じゃーん! 獣人国でやりたいことリスト!」

 暇だったから書いてみたのだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 その1 冒険者になる。

 その2 お金を稼ぐ。

 その3 レアルドを探す。

 その4 強い魔物を吸収する。

 その5 ダンジョンの宿(支店)を開く。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リリサとエイスは紙を覗き込む。

 文字を読んで、二人は呆れたような顔を浮かべた。


「前半三つはまだいいとして、後半二つはなんだ?」


「今度は何をやらかすつもりですか?」


 二人とも怪しむような顔で私を見て来る。


「心外だなぁ。私、そんなにトラブルを起こしたりしないよ?」


 別に、巻き込まれやすいだけで自分からトラブルを起こしに行っているわけではない。そう思ったのだが、リリサ達はジト目で私を睨んでいる。一体なぜだろうか。


「それじゃあ四つ目の、強い魔物を吸収するというのはなんですか?」

「もっと強くなりたいから、ダンジョンで魔物を吸収しようと思って。」

「お前……これ以上強くなってどうするつもりだ?」


 これ以上も何も、私は弱い。実際に竜も、食われなければ倒せなかった。


「そんなことないよ。私なんてまだまだ弱いよ。」

「んなわけあるか!!」

 

 正直に思ったままのことを言っただけなのだが、エイスはありえないとでも言うような表情を浮かべた。リリサも苦笑いで私を見ている。


「だがまあ……一つ目の冒険者になるという部分だけは賛成だな。」

「そうですね。現状、それ以外にお金を稼ぐ方法なんてなさそうですし。」


 リリサとエイスの息がぴったりだ。ちょっぴり疎外感を感じる。


「ひとまず、冒険者ギルドに登録しに行くか。」


 おお! 冒険者ギルド! 少し憧れていたのだ。

 ダンジョンにいた時に何度か侵入したことがあったけれど、昼間に堂々と入るのは初めてだ。

 

「二人とも、獣人国のギルドの場所って知ってるの?」


「獣人国のギルドは初めて来ますからねぇ。でも、恐らくダンジョンの近くにありますよ。魔力の多い方へ向かえば見つかるでしょう。」


 リリサは随分冒険者ギルドについて詳しいようだ。頼りになる。


 私たちは荷物を持って、獣人国へと進んで行く。一日しっかり休んだからか、足取りは軽い。


 途中で結界のようなものが張ってあったけれど、なぜか普通に通ることができた。意外と警備は緩いようだ。これでは、森から大量に魔物が入ってきてしまいそうだが大丈夫だろうか。


 森の外へ出ると、巨大な街があった。木の中をくり抜いたような建物が並んでいて、まるで森をそのまんま街にしたようだ。その中心に、数前年もの時を刻んだであろう、巨木がそびえ立っていた。


 リリサに言われた通りに進んで行くと、すぐにギルドは見つかった。

 

 ギルドの中は、数百人の人でひしめき合っていた。武器の手入れをしたり、依頼書を見たりしている人が多い。ちょうど昼食時だったからか、食事を取っている人も何人かいる。全員が獣人だからか、耳やしっぽが付いている人が多い。


 中に入ると、視線が入り口に集まった。探るような視線が向けられる。だがそれは一瞬のことで、すぐにその気配はなくなった。


(ふ~む。結構強そうな人が多いね。)

 

 周りを見渡して、強い人を探していると、突然声を掛けられた。


「君達、余所者?」


 エイスが睨みつけるような視線を向ける。

 その底冷えするような視線を受けても、彼は顔色一つ変えない。


「安心して。取って食ったりしないよ。」


 そう言うと、彼は私の角を後ろからツンツンとつついた。

 いつの間に背後に回られたのだろうか。全く見えなかった。


「なるほど……竜人国から来たの?」


「ふぇっ!!」

 なぜ分かったんだろう。目を丸くすると、彼は反応を楽しむようにクスクスと笑った。


「角が付いているから、すぐ分かるよ。」


 そう言えば、竜神国ではみんな頭に角を着けていたため、私も角は消さずに歩いていたのだ。そのまま角を消すのが面倒になってしまっていた。


 焦っている私を見て、彼は楽しそうにほほ笑んだ。


「で、何を言いたい?」

 エイスが不機嫌そうに聞いた。


「ん?」


「俺たちは確かに竜神国から来た。だからなんだ?」


「う~ん。警戒されてるなぁ。」

 そんなつもりもないんだけど、と彼は付け加える。


「僕は、忠告しているんだよ。」


「忠告?」

 一体何の忠告だろうか?


「この獣人国では、強い者しか生き残れない。どうやって竜神国の国境を通ったのかは知らないけれど、ここに来るのが初めてなら、誰か案内役をつけた方がいい。」


 なるほど、知らなかった。だが、わざわざ案内をしてくれる人なんているのだろうか。


「あら? じゃあ私が案内しましょうか?」

「ちょ、ちょっと待て!!」


 後ろに振り向くと、真っ赤な髪の女性がいた。


(か、かっこいい……)

 背が高くて、体も引き締まっている。

 スラリしているが、出るところは出ていて、大人の女性って感じだ。

 思わず、私の崖と比べてしまう。

 べ、別に気にしてないよ。私は赤ちゃんだからね。これから大きくなるもんね。


「ごめんなさい。挨拶が遅れたわね。マイリンよ。どうぞよろしくね。」


 彼女はそう言って、手をひらひらさせた。


「ミロウです。どうぞよろしくお願いします」

 冒険者の先輩だ。ちゃんと挨拶をしておかなければならない。


 ふと見ると、マイリンの後ろに男の人が一人、私を見ながらプルプルと震えている。

 一体なぜ震えているのだろうか。私は首を傾げた。

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