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つまり、全部『ミロウ』という怪物のせい。

ep.38”いつもとは違う冒険者会議”の続きです。

 S級冒険者である俺——ブラウスは、瓦礫の山になった冒険者ギルドを見ながら茫然としていた。


 この瓦礫の山の原因は、突然始まったレドとアンドリューの死闘によるものである。

 あいつら二人は青い髪の女性(ミロウという名前らしい)のせいで、いろいろとおかしくなってしまった。


 突然戦いを繰り広げたと思ったら、突然いなくなったり……何が何だか訳が分からん。


(ああ。レドは最初、かわいい後輩だと思っていたのに……)


 俺はレドがS級になった時のことを思い出した。

『レドです。冒険者になったばかりで、至らない点もあると思いますが、どうぞよろしくお願いします。』


 そう言って、レドはペコリと頭を下げていた。その様子を見て、俺はついに常識的なS級冒険者が誕生したと喜んでいた覚えがある。


 それが、ほんの数か月見ないうちにあんな性格が変わるなんて……


 先ほど向けられた絶対零度の眼差しを思い出して、少々心にダメージを負う。

 かわいがっていた後輩が変わってしまった悲しさは、何とも形容しがたい。


 なんだか無性に悲しくなる。

 S級冒険者は性格が破綻する運命にあるのだろうか……


「どうしたの? 元気がないわね、ブラウス」

 そう言ってひょっこり顔をだしたのはマイリンだった。


 こいつはパーティーを組んでいないのだが、いつもどこかのパーティーにいつの間にか混ざっていたり、いつの間にかいなくなっていたりする。猫みたいな奴だ。


 俺のパーティーにもいつの間にか混ざっていたことが多々あるため、今更部屋の中に突然現れても驚かない。いや、驚きはしないのだが……せめて気配を消して入ってくるのはやめて欲しい。


「そんなブラウスに、報告があるわ。」

 マイリンぶんそう言って、どこからともなく報道紙を取り出した。

 今日の分の記事だろうか?


 正直見たくはないが、国と国を飛び回って移動している冒険者にとって正確な情報を得ないことは命取りだ。読むしかないのだろう。正直物凄く読みたくないが……


 そんなことを考えている俺の前で、マイリンは無情にも話し始める。


「竜神国の王宮で起きた事件の話、知ってる?」


「なんだそれ……すでに聞きたくないんだが……」

 顔を顰める俺を見て、マイリンはニコニコ微笑む。絶対に俺の反応を見て楽しんでるだろ……


「なんと、侵入者が王宮の間にもぐりこんだみたいなの!!」


「は?」

 嘘だろ⁉ あの、ダンジョンより難攻不落で鉄壁の守りが固められた城に潜り込んだだと? どこの化け物だ、それは。


「それだけでなく、城の人間を一斉に気絶させたみたいよ。魔力による威圧だけでね。」


 威圧だけで⁉ どんな魔力量だよ。話を聞いているだけで寒気がしてくるんだが。


「私、この記事を読んで面白いことに気づいたのよ。」


 ”面白いこと”というが、マイリンのいう面白いことは俺にとっては決まって”恐ろしいこと”なのだ。正直耳を塞ぎたくなるが、聞かざるを得ない。


「ほら。ここ。」

 そこには、指名手配された侵入者の特徴などについて示された文章があった。それがどうしたというのか。


「見て。犯人の欄に書かれている特徴、アンドリューちゃん達が言ってた”ミロウ”って人の特徴に一致していない? 」


 そこに書かれていた特徴は、青い髪に黒い角。そして炎の魔石を散りばめたような瞳とある。


 言われてみれば、アンドリューもそんなことを言っていたな。


 つまり、城を襲った犯人とS級冒険者達の性格を破綻させた犯人は同じということか? なんだその最大級のホラーは……


「そう言えば、侵入者以外にも一人指名手配されているが、これは誰のことだ?」


「こっちは指名手配じゃないわよ。城からいなくなった人の捜索ですって。なんでも、竜神国に嫁いできたウォードライト帝国の姫君が、いなくなったとかで……」


「ウォードライト帝国の姫君と言えば……クローナ様かクローネ様だな。」


 すると、マイリンは意外そうに目を丸くした。

「へぇ。物知りなのね、隣国の姫君の名前を知ってるなんて。……そう言えばあなた、ウォードライト帝国の出身だったかしら?」


「ああ。いろいろあって今は竜神国に来ているが、少し前まではそっちで活動していたな。」


「どうしてこっちに移動してきたの?」

 マイリンはきょとんと首を傾げる。


「ん~。いろいろ情勢が悪かったからな。」


「そういえば、ウォードライトのダンジョンからドラゴンが出て来たとかで騒ぎになってたわね……」


「それもそうだが、俺が国を出たのはそれより前からだ。」


 ウォードライトでは、ドラゴンが出て来る前からいろいろと異常事態が発生していた。ダンジョンの中で透明人間をみたって噂や、謎の城のようなものが現れたという噂が立っていた。ろくでもないことが起きる前兆だと思って、すぐに隣国に移ったのだ。


 その話をすると、マイリンは妙に真剣な顔で何かを考え始めた。


 いつも飄々としていて掴みどころがないマイリンだが、実は物凄く頭が回る。そこに天性の勘の良さが相まって、未来視のスキルでも持っているんじゃないかとも噂されている。本人によると全くそんなことはないらしいが、実際のところどうなのかは知らない。


「私、思うのだけれど、最近起こるイレギュラーは、すべて一つに繋がっている気がするのよね。」

 

 つまり、全部”ミロウ”という常識外の怪物のせいということか。


「ねえ、あなたも冒険者だから知っているとは思うけれど、勇者様が死んで、今年でちょうど二千年。もし勇者が言い残した通りだとすれば……魔王と勇者の復活するはずなのよね。すべて、その前兆なんじゃないかと思うのだけれど……」


「さ、さすがに考えすぎじゃないのか? そんなの、ただの言い伝えのようなものだろ。」


 確かに、勇者と魔王についての記述は二千年経った今でも残っている。だが、そんなものはただの迷信のようなものだし、二千年経ったせいで内容もほとんど残っていない。各地に様々な伝承などがあるが、そのほとんどが作り話であるとされている。


「それもそうだけれど、少し……予感がするのよね。嫌な予感が。考えすぎだといいのだけれど……」



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