獣人国へ行こう!!
「荷物、これで大体まとめ終わったかな?」
部屋を見渡すと、荷物がなくなり空っぽになっていた。しばらく過ごしたこの部屋とも、今日でお別れだ。ほんの少し、寂しさを感じる。
出発は真夜中にした。誰にも見つからないようにするためだ。石を投げて来た子供達のことから察するに、私はずいぶんと村人たちに嫌われているらしい。
もう石を投げられたくはないので、誰にも見られないように行動しようと思ったのだ。
誰もが寝静まったころに、私たちは家を出た。
「申し訳ありません、ミロウ様。このような形で村を出ることになってしまって……」
村長は真夜中なのにも関わらず、わざわざ迎えに来てくれた。
「ううん。大丈夫だよ。」
「ミロウ様はこの村の恩人でいらっしゃいますのに……」
村長は悔しそうな顔を浮かべる。
村長はそう言うが、実際のところ、私は急にやってきた余所者でしかない。村人に怖がられても仕方がないだろう。
「じゃあ、結界を解くぞ。」
エイスが右手を前に出すと、半透明な球体が、天井の部分から順に消えていく。
その上から、きれいな星空が現れた。
「うわ~。きれい!」
やはり異世界だからか、星空が昔見たものと違う。
月が二つあるのも少し新鮮だ。
「では、どうぞお気をつけてください。……エイスのこと、お願いします。」
そう言って、村長は私の手を握る。
大げさだなと思ったが、その手が少し震えていた。
エイスのことが心配なのだろうか。
「うん。分かった。任せておいて。」
しっかりと手を握り返す。
星空の下でたった一人に見送られながら、私たちは村を後にした。
◇◇◇
「確かこっちに行けば森があるんですよね。」
そういえば、リリサはこの森で迷子になっていた。
「ひとまず近くの魔物を狩って、野営にするか。」
エイスは小さな結界を作り出し、中に荷物を置いた。
「リリサ、荷物を見ていてくれる?」
「もちろんです!」
リリサは結界の中にちょこんと座りこむ。ここに居ればリリサは安全のはずだ。
「じゃあ私たちは魔物を狩ってこようか。」
今日の昼はいろいろあって、魔物を狩ってくることができなかった。
仕方がないが、その場で捕まえて食べるしかない。
「行くか、ミロウ。」
「うん。どっちがたくさん魔物を狩れるか勝負だね」
「ああ。望むところだ。」
そして数分後
――私は見事に迷子になっていた。
どこだろう、ここ。
暗闇の中、魔物を追いかけていたらいつの間にか道に迷ってしまった。
エイスともはぐれてしまったようだ。
取り敢えず、近くを歩いていたホーンラビットをミズグモの糸で捕らえて引きずる。
「エイス~。どこ~」
木に囲まれた森の中にいるせいか、声はなかなか響かない。
もしかしたら、このまま会えないかもしれない。
そんな不安が胸によぎり、私は考えないように首を横に振る。
「あれ? なにこれ……」
歩いていたら、洞窟のような場所を見つけた。
入り口には、蔦のような植物が絡まっている。
なぜだろうか。
この洞窟を見て、懐かしいと思った。
来たことなんて、あるはずもないのに。
植物の隙間から、洞窟の中に入っていく。
そこにあった景色を見て、息を吞んだ。
(ここ、知ってる)
そこは巨大な空間になっていた。
自然にできた家みたいな感じだ。
中は時間が経ったせいかぼろぼろになっていて、天井の部分が崩れて月明りが差している。
それは、私が夢で見た景色と同じだった。
正夢だったのだろうか?
カラン、コロン。
洞窟の中央、月明りの示す先に、卵が五つ並んでいるように見えた。
そういえば夢の中で、私は竜の卵を五つ抱えていた。
この国の名前は竜神国。
——もしかして、その竜を育てたのは……
「ミロウ、どこだ!」
その声で、私の意識は現実に引き戻された。
私は洞窟の外に出る。
辺りが暗いせいか、周りが良く見えない。
感覚を頼りに、森の中に入って声のした方へと進んで行く。
人影が見えて来た。エイスだろうか。
「エイス……?」
小さく呟くと、エイスがぎゅっと抱き着いて来た。
ずいぶん心配されてしまったらしい。
「いったいどうしたんだ?」
「ううん。なんでもない。……なんでもないよ。」
「ならいいが……」
「そういえば、魔物を狩ったんだよ。一緒に食べない?」
糸で捕まえたホーンラビットを見せると、エイスは目を丸くした。
「もう捕まえて来たのか? すごいな!」
「狩り勝負は私の勝ちだね。」
胸を張ると、エイスはおかしそうにクスリと笑った。
どうやら子供っぽいと思われてしまったらしい。私は頬を膨らませた。
その後、リリサがホーンラビットを調理してくれた。
お肉が入った暖かいスープが出来上がる。
やっぱり、料理はリリサが一番上手い。
私も料理をしていたが、それとは比べ物にならない。
さすがはうちのメイドだ。
焚火をしながら、みんなで食事をする。
「そういえば、この後はどこへ向かいますか?」
リリサは首を傾げる。
「うーん。まだ考え中。」
私は地図を広げた。
「竜神国に戻るのはどうですか?」
「いや、せっかくだから行ったことない場所に行きたいかな。」
「それなら……こっちはどうだ?」
エイスは北東の方にある国を指差した。
「獣人国、ですか。」
「ああ。竜神国と獣人国は吹雪によって閉ざされているという話だったが、今ならもしかしたらいけるかもしれないと思ってな。」
確かに、雪を消した今なら獣人国にもいけるだろう。
「うん。いいね。獣人国にしよう。」
「ああ。」
「そうですね。」
こうして、これから向かう場所が決まった。
ちょうど、朝日が昇ってきて辺りが明るくなる。
目指すのは北東。いざ獣人国へ!!
これにて、竜神国編は終わりです。
次は獣人国編に行きます!!




