新しいスキル
ドラゴンの鋭い歯が突き刺さり、鈍い痛みが走る。
その途端、目の前にウィンドウのような画面が現れた。
《あなたの『死』により、スキル発動の条件が達成しました。》
《ドラゴンを摂りこみますか? 【はい・いいえ】》
最初の時と同じ画面だ。
私は【はい】を選ぶ。
すると、前回と同じく吸い込まれるような感覚がした。
私の能力は、ひと口に魔物を摂りこむといっても、その方法は二種類ある。
初めに、敵から魔力を抜いて使う方法。
これが、普段から使っている攻撃の方法だ。
だがドラゴンを見たとき、この方法では無理だと直感した。
ドラゴンは、魔力が物凄く多いだからだ。
さすがに、これほどの量の魔力は一度には吸い込めない。だから、もう一つの方法を試そうと思った。
それは、敵を肉ごと吸収してしまう寸法だ。
これはどちらかというと、私が魔物を摂りこむというよりも私が魔物に摂りこまれると言う方が表現としては近いだろう。説明は難しいが、私そのものが魔物になるような、ドラゴンの体を奪うような、そんなイメージだ。
魔力だけでなく体まで吸収してしまうので、角や鱗が出てきたりと大変なことになるが、ドラゴンそのものになれるため、ずいぶんと便利だ。
今回はダンジョンの最下層の時と同様、この方法を使ってドラゴンを摂りこんで吸収した。
(私、何回ドラゴンに食われるんだろう……)などと考えていると、だんだんと目の前が鮮明に見えるようになった。
辺りを見回すと、すぐ隣にエイスがいた。
良かった。ドラゴンには飲み込まれていないようだ。
肩を揺さぶってみたが、反応はない。
大丈夫だろうか。
竜に食べられたショックのせいで、気絶してしまったようだ。
――ちなみにエイスが倒れたのは、ミロウが竜を吸収した時に巻き添えを食らったせいで、完全完璧ミロウのせいだが、本人は気づいていない。
呼吸を確認すると、僅かだが息をしている。
無事だったようだ。胸を撫で下ろす。
安心したせいか、どっと疲れが沸いて来た。
私は地面にぼふっと倒れる。
(エイス、無事でよかったなぁ。)
だが、ずいぶんと薄着なせいで寒そうだ。
外に出る時は厚着しろと言っていたくせに自分は薄着なのかと突っ込みたくなったが、やめておくことにした。
たぶん、私にコートを貸してくれたせいで自分が着る用のコートが無くなってしまったんだろう。
私は祭りに来る前にもらったふわふわの白いコートを握りしめた。
雪の上でこの格好でいては、凍えてしまうかもしれない。
(何とかできないかな……)
考えていると、またもやウィンドウが出現した。
《雪を溶かしますか?【はい・いいえ】》
雪を溶かす⁉
そんなスキルも使えたっけ?
《白竜のスキル【氷操作】が新たに追加されました》
なるほど。氷操作か。
せっかくだしやってみよう。
火を出す時と同じ要領でできるだろうか……
指に青い魔力を集めると、雪がふわふわと集まって来た。
この大量の雪は、白竜が魔力を集めて作ったものなのだろう。一瞬で溶けて、うっすらと光り始めた。恐らく、元の状態の魔力に戻って行っているのだろう。
氷操作ができるようになった。
やはり私はチートすぎないだろうか。
というか、なんで覚えたばかりのスキルを使いこなしてるんだろう、私。
謎は深まるばかりである。
魔力を集め、体の中に吸収すると、辺りの気温が少し上がったように感じた。
(あったかい……)
私はわずかに残った雪の上で、ほっと一息ついた。
◇◇◇
ミロウ様を探して早一ヵ月。
私は宿のベランダから、外を眺めていた。
「ミロウ様は一体どこへいらっしゃるのでしょうか……」
「そう言うのならお前も探しに出かけたらどうだ?」
レアルドがこっちを睨んで来る。
だが、いくら探しても見つからなかったのだ。私の心はすでに折れかけている。
ぼんやりと空を見上げていると、少し魔力の揺れを感じた。
「あれ? 北の方の空が光っていませんか?」
かすかに、空が光っているように見える。
「……気のせいだろ」
レアルドは私が指差した方角を向いた。
「まさか、ミロウが何か面白いことをやってくれたんじゃないか?」
アンドリューがどこかわくわくした顔を浮かべる。
「行ってみるか……」
レアルドが呟いた瞬間、突風が吹いて来た。
「うわぁあ!!」
慌てて服を押さえる。
一体何が起きたのかと思い横を見ると、レアルドが消えている。
辺りを見回したら、ものすごい遠くまでジャンプしていた。すでに数十メートル先を走っている。
恐らく風魔法でスピードを上げたのだろう。
「よし。俺も行くぞ!!」
アンドリューは地面に氷を張り、その上を滑るように移動を始めた。
私は慌てて二人を追いかける。
「二人とも本当に楽しそうですね……」
私は楽しそうな二人に、ちょっとムカッときた。
走って追いつかなければならないこっちの身にもなって欲しい。
誰もが魔法で簡単な移動手段を持っているわけではないのだ。
「早くついてこい。」
レアルドの声が聞こえてくる。
それはさすがに理不尽過ぎないだろうか。
文句を言おうとしたときには、二人とも見えないような場所まで走って行ってしまった。
「ミロウ様ぁ……」
こういう時、ミロウ様なら私を置いて行くようなことはしないだろう。
レアルドもミロウ様の前なら、急に走り出したり、暴走したりはしない。
手綱を握ってくれるミロウ様のありがたさを再認識する。
ミロウ様に会いたい。
本当に、切実に、そう思った。




