訪問者
夏の日。エアコンはやっぱり不調。部屋は28度あるらしい。
足元のカップ麺を蹴り飛ばさないよう、足を動かしたが何も当たることはなかった。
あまりの暑さに寝返りを打っても変わりない。寧ろ寝ている方が暑いくらいだ。
それでも昨日の酒が残っているのか、今日も昼過ぎまで寝てしまった。
バイトもないし、このまま好きなだけ寝よう。そう決めた所だった。
ピンポーーーーーーン
インターホンが鳴った。
宗教の勧誘か、保険の売り込みか、買取か。
いずれにしろ出る気にはなれなかった。布団を押し除けつつ、ドアに背を向ける。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドン
いつになくしつこい訪問者だ。だんだんイライラしてきた。
絶対に出たくないという強い意志で無視を決め込む。
かみじょうさーーーん?かみじょうあつきさーーーん??いらっしゃいますよねーーー?
これはまずい。いよいよ本名を叫び始めやがった。
どうも勧誘ではないらしい。ひとまず相手を確認しようと思い、布団からでた。
枕元のメガネがない。すぐには見当たらないので諦めてそのまま進む。
散らかったはずの床はなぜか綺麗で、すんなり玄関まで歩くことができた。
今思えば荷物も不自然に壁によっていたはずだ。
その時の自分には、そんなことに気を払うほど頭は冴えていなかった。
ドアまで息を殺しながら近づく。
居留守を勘付かれないよう、細心の注意を払ってスコープから外を覗く。
警察だ。
それもなかなかの人数がいる。
声が出そうになるのを抑えながら、ドア前に座り込み考えを巡らせる。
何も盗んでない、誰も殴っていない。水道料金だって家賃だって払った。
地元の親も元気だし、バイトで揉めてもない。
ドンドンドンドン
かみじょうさーーーーん?お話があるんですけどもーーーー!
外では警察がドアを叩き続けている。近所迷惑にも程がある。
神経質な隣人がネチネチと文句をつけてくる顔が浮かんだ。
これ以上の居留守は自分の立場が悪くなるだけだ。
そう覚悟を決めてドアを開けることにした。