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悪役令息の務め  作者: 夏野 零音


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第五章-5-『初めてのパーティー』


「ヘンリー様、良く眠れましたか?」

 カーテンを開けながらレイラが微笑んでいる。こんな風景もすっごく久しぶりだ。僕はフカフカのベッドに口元まで埋もれながら、パチパチと瞬きをした。


 

 おはようございます。ディラン伯爵家の三男、ヘンリーです。

 一連の首謀者である女神の使者Kが捕らえられた事で、アデルバード王国には ようやく安堵の声が聞こえるようになりました。そうして、一旦、僕達は王宮の仮住まいから王都にあるディラン伯爵家へと帰って来ていた。とりあえず、緊急の危険は無いだろうって事でね。でも、僕達 ”ディラン伯爵の息子” が王宮預かりなのは変わらなくて、それならば王宮にキチンと一家が移り住む場所を用意しようって陛下が言ったんだよね。で、この狭くは無い領地ごと、義父(パパ)の弟が継ぐ事になったんだ。元々、サポートとして一緒に領地経営してたみたいだから、引き継ぎにもそんなにかからないだろうって、陛下が言って義父(パパ)がちょっと顔を顰めてたけど、王命には逆らえないのでね。女神の使者Kが作った組織、黒い影(ブラックシャドウ)は上位神官の他に、アンチ第二王子派の貴族も沢山関わってて、僕とジェーちゃが地下牢という名の隠れ屋敷に住んでた頃、テオ兄様達が頑張ってくれて、関係者を一人ひとり当たってリストを作ったり、容疑者をディラン伯爵家の倉庫に閉じ込めたり、とか色々してくれてたんだよ!呑気な日々を送っちゃってて申し訳ない…。そのリストを元に陛下が指示を出して、関係する貴族を全部捕らえて、今 牢屋は大変な事になってるみたいだよ…!ぎゅうぎゅうだって!…ジェーちゃアンチって沢山居たんだね…それはそれでなんか、哀しい…。少しずつ裁判が始まってるけど、まあ全員貴族籍 剥奪は確実で、国外追放とか斬首とか、追加の刑はそれぞれだろうけど、王宮に勤めていた人間が ドッサリ居なくなったの。その穴埋めに新たに爵位を与えたりとか雇い入れたりとかしなくちゃいけないらしくて、義父(パパ)も王宮勤めになる事が確定したのです。テオ兄様はルーカス王子殿下の護衛だし、ティム兄様は王宮の研究機関に通うし、…僕は…僕は、なんかジェーちゃが結婚するって騒いでるし…まだ子供なのに。でも僕の能力は放っておけないみたいで、軟禁とか監視とかされるくらいなら、ジェーちゃと一緒になった方が良いのかな…って思ってるよ。で、それならば、一家で王宮に住んだ方が良いだろうって。義父(パパ)は断ってたんだけどね、王都から通うって。でも義父(パパ)だけ居ないの 寂しいって言ったら、一緒に住む事になったの!へへ。


 そんな訳で、新しい住まいが整う間での間、ディラン伯爵家を片付けて、主人交代の準備をしに戻って来たという訳。目覚めてから殆ど、このベッドの住人だったから、さよならするのはちょっと寂しいけど、また皆一緒に暮らせるのは嬉しいな!せっかく仲良くなったから、もっと一緒に暮らしたいもんね!

 

「さあ、ヘンリー様、朝食を摂ったら湯浴みをして、パーティーに備えませんと!忙しくなりますよ!」

 レイラはキラキラした瞳をして、ふんっ と力こぶをつくってる。レイラもね、新しい住まいで一緒に暮らせる事になったんだ!ヘンリーとして目覚めてからずっとお世話になってたのに、誘拐されたり 地下牢という名の隠れ屋敷に住んだり、レイラと離れ離れだったから、こうしてまた一緒に居れるのは嬉しい!…それは嬉しいんだけど…そう、今夜は『祝賀パーティー』なんだって。お昼過ぎから始まって夜中までやるみたい。勿論、最後まで居る必要は無くて、皆 キリのいいところで帰るらしい。僕は幼児扱いだからね、夕方位には戻って良いよって言われてるの。そもそも小さい子は出席出来ないんだから! でもね、僕はジェーちゃのパートナーらしくて、ジェーちゃは色んな人に挨拶されるでしょ?第二王子殿下だし、だから一緒にいる僕も、すぐ帰る訳にいかないんじゃないかって思ってるんだけど…。それに、”ヘンリー” って生まれてからずっと母親とだけ居たから、マナーとか社交とか学んで無いんだよね。だからどれくらい 手を抜けば良いか、加減が分からないんだ、中身の僕、ノアはちゃんと教育を受けた十八歳だったしね。教わってないのに出来たら怪しまれちゃうでしょ?まあ、僕はお口が上手く動かないから、キョトンとした顔してれば良いかな。


 

 なーんて、思ってたのに。

昼前に王城へ上がると、待ち構えていたジェーちゃにダンスに誘われた。

「だ、だん す ?」

「そうだ、ヘンリー。一曲だけ踊らないか?」

 フリフリがたっぷりついた水色のスーツに着せ替えさせられて、バッチリ髪型もキメた僕はレイラに抱っこされている。目の前にいるジェーちゃも水色から濃い青色のグラデーションになってるスーツをバッチリ着こなしてる。装飾も素敵だ、流石に王子様だね!…ん?もしかして、僕の衣装と色合わせになってる?それって恋人とか夫婦がやる事だよね? ジェーちゃってば気が早……じゃなくて、だ、ダンス、だとぉ?!

「ヘンリー様、ジェームズ様は ダンスが踊れるようになったんですよ!それも数時間で!天才だと思いませんか?!もっとお時間があれば全てマスター出来ましたのに!」

 ファーニーさんがニコニコしながらジェーちゃを褒めてる。ジェーちゃも「フン…」とか言ってるけど、凄い誇らしげ。て言うか、ジェーちゃって今までダンス踊れなかったんだ…、それもそうか、魔力暴走しちゃうから 部屋に引きこもりがちだったんだよね。でもなんで急にダンスを覚えようと思ったんだろ…?

「ダンスと言いましてもね!身構える必要はありません!ヘンリー様はジェームズ様の半分も身長がありませんからね、ヘンリー様は抱っこされているだけで大丈夫ですよ!」

「そうだぞ、ヘンリー。全て俺に任せておけ!」

 ハキハキ説明するファーニーさんも、パーンと胸を叩くジェーちゃも凄い楽しそう…。なるほど、ジェーちゃは覚えたてのダンスを踊ってみたくて、ファーニーさんは皆の前で踊るジェーちゃが観たいわけか。……ファーニーさんて、忠誠心が強いというより…なんか、推し活してる人みたいな時あるよね。この時代に『推し活』なんて言葉は無いんだけどさ。抱っこかぁ、まあ 確かに身長差が凄すぎて、踊るには向いてないもんね。いつも通り、右手に僕を抱えてクルクル踊る分には、失敗も何も無いしね。

 

 チラ と、レイラを見ると「うーん」て難しいお顔してる。

「れいら?」

「ヘンリー様…。…ジェームズ王子殿下、大変素晴らしい申し出だと思うのですが…私個人としましては、是非観てみたいと思うのですが…テオドール様が何と言うでしょうか…」

 えっ テオ兄様?

「おいレイラ!どうしてここでテオドールの名が出る?! ヘンリーのパートナーは俺だぞ!パーティーではパートナー同士、踊るものだ!」

 踊るというか…僕は抱っこされてるだけなんだけど。まあ それでジェーちゃが楽しいなら、僕は全然良いけど。

「…ジェームズ王子殿下、そうは言われましても、テオドール様はヘンリー様がエスコートを受け、皆に紹介されました後は、すぐに屋敷に送り返す手筈になっております。なにぶん、ヘンリー様は聖女様をお救いしてお疲れですから」

 それを聞いてジェーちゃが シュンとなる。

「それは――確かに、そうだが…」

 

「まあまあ、お二人とも。落ち着いて下さい。レイラ嬢、勿論ヘンリー様はすぐご帰宅頂いて大丈夫ですよ。ただ、紹介を受けた後は貴族共が縁を繋ごうと押し寄せるでしょう、何しろヘンリー様の能力は看過できないものです。ひとり挨拶を受けて仕舞われたら その後どうなると思われます? 我も我もと長蛇の列が出来、その全てを終えるまで帰宅する事は難しいでしょう。ジェームズ様も居られるのなら尚のこと。今回は『祝賀パーティー』であり、サイラス王国の貴族も参加すると聞いております、我が国だけならまだしも、友好国となると断るのも難しいでしょう。しかしそんな事をしていれば、あっという間に夜中を過ぎてしまいます。」

 唖然とする僕らを置いてけぼりにしてファーニーさんはペラペラと喋る。

「ですが!紹介の後、すぐにダンスを踊ったらどうなります?曲が流れれば 他の貴族共も踊らずにはいられないでしょう?その後、サッサと退室してしまえば良いのです。それなら、すぐに帰宅する事が出来るでしょう!」

 ジャーン!と効果音が聞こえて来そうなポーズでファーニーさんの提案が終わる。

「おお!流石 ファーニーだな!」とキラキラするジェーちゃと「…貴族『共』って…ファーニー様……」笑いを堪えるレイラ。そんな風に言えるの、ファーニーさんだけだよね!

「…そうですね、テオドール様にはそう言っておきます。ジェームズ王子殿下、ヘンリー様を宜しくお願い致します」

 何度か頷き、ぺこりと頭を下げるレイラ。画して僕は、初のパーティーでダンスを踊る事(?)になったのだ!



 ◇◇◇◇◇

「何ですって?!」

 豪華な貴賓室でサイラス王国の王女 ロージーは叫んだ。お気に入りの魔法使い、第二王子ジェームズからエスコートを断られたのだ。どうやら婚約者が戻って来たらしい。

「婚約者?何よ、それ!第二王子はサイラス王国(わたし)のエスコートをするって決まってたでしょう!こんな侮辱…!」

「お嬢様…」

 荒ぶるロージーに侍女はオロオロする事しか出来ない。自国であれば、大体の事は望み通りになるロージーは こんな理不尽な目にあった事が無かった。

「…国王陛下からエスコートする人間を変えること、大変申し訳ないと詫び状が来ております。残念な事ですが、事情が事情ですので 致し方ないかと――」

「納得出来ないッ!」

 頭を振って喚くロージーに、侍女が目を張る。侍女にしてみれば、他国の祝いのパーティーのエスコート相手が変わるくらいで、と思ってしまうが、魔法使いを自国に連れ帰りたいロージーには時間が無い。ただの貴族なら無理やり連れ帰る事も出来たが(犯罪だが)残念ながら、ジェームズは第二王子だ、流石に第二王子を攫えば大事になるのはロージーにも分かっていた。だからこそ、このパーティーで親睦を深め、なんなら既成事実を作り、自国へ連れて行こうとしていたのだ。

 

 (媚薬まで用意したのに……!)

 

 この機を逃したら、次にアデルバード王国へ来れるのはいつになるか分からない。ロージーの美しい美貌は、目の前にあってこそ その力を発揮する。文通をして愛をゆっくり深めるなどといった生ぬるい事をするつもりは無かった。

「…見てなさいッ!」

 机はバンッ!と叩いたロージーの瞳は妖しく輝いていた。

 

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