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悪役令息の務め  作者: 夏野 零音


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第五章-4-『秘密の恋心』


「では君は、ジェームズがサイラス王国へ行くかもしれないって、そう言うのかい?」

 

 柔らかな陽射しが差し込むティーサロンで、この国の第一王子ルーカスと後宮に入る事が決まっているフランソワ・エミューズ伯爵令嬢は向かい合って紅茶を愉しんでいた。それと言うのも、「大事な話」があるとフランソワから手紙を貰い、彼女の祝福(ギフト)に対して興味を持っていたルーカスが快諾したからだ。こうしてお茶を飲みながら始まった会合は、ジェームズの話が中心だった。

「まだ決まったわけではありませんわ。ただ…()()第二王子殿下が王女様とダンスを踊る為に練習を始めたと聞いています。これまで公式の場に出る事も無かった あの方が、王女様には()()を示していらっしゃるようで……このまま二人の仲が進めば――」

「――()()()()()()()が、誰かと懇意になるなんて、想像もつかないな…。だが彼もまだ若いからね、心が揺れる事もあるだろう。……それで、君は何をしてくれるのかな?」

 (情報が速いな…王家の影に遅れを取らぬとは…さては、侍女を潜り込ませているのか)

 

 陽射しと同じく、金髪をキラキラ揺らせて柔らかい微笑みをフランソワに向ける。途端、フランソワの頬が夕陽色に染まった。フランソワは軽く両手を握りしめた。ここが勝負どころだ。ふぅ と息をつき、ルーカスに語りかける。

「……わたくしでしたら、あの二人の仲を止める事が出来ます。それは、ルーカス王子殿下も()()ご存知でしょう?」

 綺麗な微笑みを浮かべたフランソワが、緊張している素振りも見せずにそう言う。

「君は、私がジェームズを手放すのを嫌がると思ってるのかい? ふふ、でもそうだね、ずっと気には なっていたんだ。今回こそ、君の秘密を私に教えてくれるのかな?」

「貴方がどうしてもと仰るのなら…構いませんわ。それならば人払いを…」

 貴族の男女が同じ部屋に二人きりになる事は、『そういう仲』だと思われてしまう為、常に側近や使用人が大勢控えているものだ。特にルーカスは王太子に最も近いと言われている為、その辺は徹底していた。婚約者もいる身でつまらないスキャンダルは御免だ。しかし、フランソワは後宮の人間であり、二人きりになったとしても 大した問題では無い。ルーカスは頷いて使用人へ片手を挙げた。すると、心得たと言うように一礼し 全員退室して行く。勿論、フランソワが連れて来た侍女達も退室した。

 二人きりになった事を確認し、コホン とフランソワがひとつ咳払いをする。そして鮮やかな微笑みをルーカスに向けた。

「ルーカス王子殿下、まず、『聴いて』頂けますか?」

 フランソワは静かに詠唱を唱えた。

「風の精、蝶の精よ、我が呼び声に応え、今ここに恋心を閉じ込め給え――」

 詠唱と共に、座っているルーカスの周りに魔法円が輝き出す。光がルーカスを包み込むと、ルーカスは真っ白な世界にいた。そして胸の辺りからハート型の空間が飛び出してくる。その中に人の姿があり、ハッ とする間もなくそのハート型の空間は金色の鎖でロックされた。


「――如何ですか?『想う気持ち』を閉じ込める事が出来るのです。」

 フランソワは渾身の笑みを見せた。とうとう、ルーカスの『想い』を閉じ込める事が出来たのだ。これでルーカスの、アシェルへの想いは閉じ込められ二度と外へ出る事は無い。代わりに自分への恋心を植え付けられれば更に良かったが、そこまでの権能は授かっていない。だが、アシェルを愛し、後宮には出向かないと言ったルーカスの気持ちも、恋心が無くなればどうだろうか? 気持ちが冷めれば「王としての仕事」を行うのに なんの抵抗もない筈だ。子供を授かれれば良いが、最悪 後宮に出入りしている証拠さえ有れば フランソワの地位は確立される。アデルバード王国では女子の出産率が低く、身ごもれば 男子であるのは明白だ。王子を産めれば更に権力を握れるし、生涯安泰だろう。フランソワは、ずっと この機会を狙っていた。


「…………」

「ルーカス王子殿下、ご気分は如何ですか?」

 黙り込んでしまったルーカスにフランソワが声をかける。サイラス王国の王女に『禁錮(きんこ)』をかけた時もそうだった。大切な気持ちを取られてしまった人間は、ボンヤリしてしまう。だが、それも僅かな時間だ。人は直ぐに()()()ものだから。

「…成程、これが君の祝福(ギフト)なんだね。見せてくれてありがとう。」

 少しボンヤリしていたルーカスは、微笑みを浮かべて礼を言った。

「いいえ、わたしくでお役に立てるのなら、どうぞ何でも仰って下さいな」

 フランソワはスンナリと上手く行った事に興奮しながらも、表情には出さずにそう答えた。

「…そうだね、では この前と同じように――お願い出来るかな? ジェームズには私の側に居て貰いたいんだ。王女様には申し訳ないけれど…」

 小首を傾げて、ルーカスが可愛らしくおねだりをする。

「ええ、勿論ですわ。お任せ下さい!」

 頬を紅くしたまま、フランソワはキラキラした顔で立ち上がった。そして任務を遂行する為に、お辞儀をするとそのまま立ち去った。



 フランソワが部屋から出て行くと、カーテンの裏から するりと男性が現れ、ルーカスに耳を寄せた。

「ルーカス王子殿下、宜しかったのですか?」

 それを受けて、長い足を組み換え 肩肘をついたルーカスは笑顔で答えた。

「構わないよ。まさか、この身で彼女の祝福(ギフト)を体験出来るとは思わなかったけどね。」

「……処分なさらなくて良いのですか?エミューズ伯爵令嬢の祝福(ギフト)は、中々に厄介なものだとお見受けしますが――」

 男性の右耳には太陽のピアスが煌めいていた。それは王家の影である証だ。

「使い方を間違えればね。それにここ最近、英雄となったジェームズを王太子に、って奴らがまた騒ぎ出してるんだよ。彼女の祝福(ギフト)を使えばその『想い』も閉じ込める事が出来るんじゃないか?…彼女も言っていたし 精々、私の役にたってもらおうかな。」

 『王太子』をジェームズが望むのならば、また話は変わってくるが、本人は『脱・王太子運動』に勤しんでいる。であれば、余計な策略にジェームズが巻き込まれるのを防ぎたい。これはいい駒を得たと、ルーカスに ニッコリと笑った。


 そして目を閉じる。

 真っ暗闇の中に先程のロックされたハート型が浮かぶ。中に居るのは――アシェルでは無く、テオドールだった。閉じ込められたテオドールを、ルーカスはジッと見つめた。すると、首を傾げ 不思議そうな顔をしたテオドールは 、バキンッ!と鎖を断ち切り、難無く 外へ出てしまった。

 (ほらね…。僕だって出来る事なら、テオドールへの想い(キミ)を閉じ込めて置きたいんだよ。でも君は いつだって そうやって出て来てしまうんだ。)

 ルーカスはため息をついて、椅子の背もたれに凭れた。

「ルーカス王子殿下?」

 どうしたのかと、王家の影が心配する。


「いいや、何でも無いよ。あ、さっきの祝福(ギフト)は、私の浄化で無効化したから心配しなくて良い。陛下への報告も要らないよ、必要なら私から申し上げるから」

 軽く手を挙げ、ルーカスがそう言うと、王家の影は一礼し、スッと姿を消した。

「――しかし、祝福(ギフト)でも無理だなんて絶望的だね…、まあ 解ってはいた事だけれど――」

 ルーカスは憂いげな瞳を、よく晴れた空へと向けた。



 ◇◇◇◇◇

 ((とりあえず、帰って来なさい))


 こんにちわ、ディラン伯爵家三男のヘンリーです。

 アシェル様を探しに魔女たんとやって来たけど、直ぐに魔女たんとはぐれてしまいました。でも、無事にアシェル様と合流出来て、それだけじゃ無くて、昔の王妃様も女神の使者のKも居たんだけれど。外に残して来たディラン伯爵家一家から言語通信が入って、まあ、色々言われたんだけど、説明はアシェル様にお任せしちゃった…、だって皆 一度に喋るから何言ってるか分かんないし、テオ兄様はめっちゃキレてるし…、そんな中、義父(パパ)が一言 言いました。

 うーん、帰りたいのは やまやまなんだけど…。

 このまま帰っちゃって大丈夫かな?だって、魔女たんが閉じ込められてた牢獄は、僕の闇魔法の無効化をかけたら壊れちゃったし…、また入ろうと思っても入れないかも知れないじゃない?

「えと…おうひ様、ここから でたい?」

 とりあえず、昔の王妃様に聞いてみた。

「出たいわ!…いや、出れるのなら、ですけれど――」

 勢い良く答える昔の王妃様。ハッとして頬を赤らめてる。そうなんだ!出たいんだ…! そりゃそうだよね。入りたくて入った訳じゃないもんね。魔女たんも出れて泣いてたもんね。でもちゃんと聞かないと!

「ここから、でたら、もうはいれ なくても?」

「…二度と入りたくないわ。私の望みは不老不死では無いもの」

 半目で答える昔の王妃様。そうだよね、ここはお腹も空かないし、夜も朝も無く、眠る事もなく、永遠にこのままで居られる。でも 本はあっても人は居ない(今は僕らが居るけど)魔女たんと同じ、孤独な牢獄だ。

「妙な事を聞くじゃないか、ヘンリー? さっき聞いたろ、ここに入ったら二度と出られないって。まあ これまでの遺恨は忘れて、仲良くしようなぁ」

「貴方ねぇ…!」

 呑気な調子で言うKに、アシェル様が怒る。


 ((ヘンリー!父様の言葉を聞いただろう? 早く帰って来なさいッ!))

 あ、またテオ兄様がキレ始めてる…!ヤバいヤバい!

 ((いま、かえりゅ!))


「みんな、おてて、つないで?」

 僕は小さい両手をいっぱいに伸ばした。

「なんだ ヘンリー、寂しんぼか?」

 ハハハ、とKが笑う。ペシッとアシェル様がKの頭を軽く叩く。そして「こう?」と僕とお手手を繋いでくれた。不思議そうな顔をして昔の王妃様も手を繋いでくれる。

「みんな!まるくなるように!」

 僕は指示を出す。「何なんだよ〜」とKが文句を言いながらも両手を繋ぐ。ん!皆で輪になったね!あ、大変、この二冊の本も 持って行かなくちゃね!もう戻って来れないかも知れないし…あ!

 ((魔女たん!魔女たーん!))

 魔女たんに呼びかけてみる。でもやっぱり返事は無い。僕の魔力が届かないくらい遠くへ行っちゃったのかな…。このまま戻って、魔女たんが戻れなくなる事は無いのかな?うーん、でも 創世の女神だから 何とかなるのかな?いつも自信満々だもんね…。とりあえず帰って、ジェーちゃに相談しよう。

「おい、ヘンリー?」

 動きを止めた僕に、Kが声をかける。ん、大丈夫、今から帰るよ。

「んんんん!」

 僕は闇魔法の無効化を使った。


 パァ!


 目の前が白に染まって行く。ん、魔女たんを牢獄から出した時と同じだね。良かった!ちゃんと闇魔法使えた!辺りが真っ白になった後、ゆっくり景色が戻って来る。

「ヘンリー!」

 僕の姿が見えたのか、テオ兄様が名前を叫んで抱きしめてくれる。ウグッく、苦し…!

「あの魔女めっ! ヘンリーを危険に晒さないと約束しておきながら…!」

 なんかブツブツ 呪いを吐いてる気がする…怖っ!隣では義父(パパ)がアシェル様に声をかけているのが見える。Kは現れた途端、護衛の方々に拘束されてた。「うわぁなんだよぉ〜!」って叫んでるのが聞こえる。

「アシェル様、お身体は大丈夫ですか?」

「…ディラン伯爵…、ええ、私は大丈夫です。ご心配おかけしました…」

「ショーラも喜ぶでしょう。ずっと寝ていないようでしたから…同じ子を持つ親として、本当に喜ばしい事ですが、これからは危険な真似はあまりなさらない様に…」

 義父(パパ)の苦言に、アシェル様がぺこぺこ頭を下げてる。それを「まあまあ」って義父(パパ)が慌ててたけど、その後直ぐに側近に何か指示を出してた。連絡しなきゃだもんね。


 昔の王妃様はと言うと――。

 魔女たんの時と同じように、ペタンと座り込んで 潤んだ瞳から ポロポロと涙の雫が どんどん溢れている。そうだよね、出たかったよね…僕までもらい泣きしそう…でも僕が泣くとテオ兄様が「どうしたんだ、ヘンリー!」てキレ出すから我慢する…。


 そして、僕らは馬車で王宮まで戻り、着替えと軽食が用意された。大きめの客間に僕たちディラン伯爵家一家と、昔の王妃様、縛られて大人しくなったKと、走って来たアードルフ公爵にアシェル様は ギュウギュウに抱き潰されてる。

「ありがとう、ベンジャミン!娘を連れ戻してくれて…ウッ!」

 義父(パパ)の両手をガッチリと握った、クマだらけのアシェルパパはそう言ってまたワンワン泣き出てたしまった。う、もらい泣きしちゃいそう…!

「ショーラ、私の力では無いよ。ヘンリーが連れ戻してくれたんだ」義父(パパ)がそう言うと、「ヘンリー!」と言って泣きながら両腕を広げて突進して来る!

「公爵!落ち着いて下さいッ!ヘンリーが潰れます!」

 僕を抱いたティム兄様の前に、ビャッと立ち塞がったテオ兄様がそう叫ぶ。確かにッ あの勢いなら潰されるかも…!だってアシェル様 ヘナヘナと座り込んでるもん…ッ。

「感謝しているんだ!」

「もう充分、伝わっております!」

 何とか僕を抱っこしようとするアシェルパパと、絶対に通さないテオ兄様との戦いが始まってしまった…!


 ガチャ

 そこで扉が開く。

「何だ、騒がしいな。」

 国王陛下だ〜!それと…

「ヘンリー!」

 ダッと駆け出してきたのはジェーちゃだね!でもやっぱりテオ兄様が阻むね!

「退かんかッ!テオドール!」

「ウィリアムッ! 退避だッ」

 叫ぶジェーちゃに、後ろを振り返って指示を出すテオ兄様。頷くやいなや、パッと窓際まで退避するティム兄様。うーん、素晴らしい連携。

「――ショーラもジェームズも、とりあえず落ち着きなさい。彼らは帰って来たのだから。」

 ため息を着きながら陛下が席に座るも、

「そうですよ!だから感謝の抱擁がしたいんじゃないですか!」

 とアシェルパパ。

「なら、ベンジャミンに抱きつけば良いだろう」

「何が悲しくてオッサンに…ッ 可愛い子の方が良いでしょう!」

 シレと言う陛下に食い気味で答えるアシェルパパ。それを聞いて両腕を広げる義父(パパ)と睨みつけるテオ兄様…。何この場?! アシェルパパってこういう感じの人なの?それに義父(パパ)も、結構 ノリが良いんだね?確か、仲良し四人組だったかな?


「サングリア王妃殿下…で、宜しいですか?」

 ルーカス王子殿下と一緒に入って来たフローラ王妃様と即妃プルクラ様。プルクラ様が静かに座っている昔の王妃様に声をかける。へぇ〜そんな名前だったんだ…!ごめん、最初に聞くべきだったよね…ちょっと混乱してたから。

「ええ、そうです。私のした事は大罪となりましょう。しかし、あの時それしか方法が無かったのです。こうして出られるとは思いもしませんでした。貴方がたにも沢山の迷惑をおかけしました。どんな沙汰でも慎んで受けますわ」

 さっきまでポロポロ泣いていた人とは思えない、毅然とした綺麗なお顔でサングリア王妃殿下は言った。


 そうして――、関係者が全員揃うと、ひとりずつ、これまでの説明が始まって、色々 謎だった事が明るみに出た。そして皆、無言になる――まあ、驚くよねぇ。ファーニーさんだけは、珍しげにアデルバードの本を読んでたけども。


「――問題は、『狂乱の魔術師』ということか。」

 陛下が静かにそう言った。全ての始まりであり、この世界の鍵を握る人物。

「ええ、二度も『時戻り』を成功させ、世界を二つに分けた。こんな事が出来るなんて、最早 人では無いわ。今、この世界に居るかどうかは分からないけれど、もしまた『時戻り』をされたらどうなってしまうか解らないわ。」

 必死に訴えるサングリア王妃殿下に、陛下が頷いて チラリとKを見る。

「探したよ? 勿論、ちゃんと探したさ!でも俺は透明化(ステルス)は使えても制約だってあるし、見つからなかったんだよ…」

 最後の方は不貞腐れたようにKが言う。

「そんな真似が出来るなんて、最早『神』でしょう。そんな相手を 我々だけで何とか出来ますかね?」

 アシェルパパがくたびれた様子で陛下に聞く。魔獣暴走(スタンピード)、大魔人、この所 大災害続きだ。最後が神だなんて、もうお手上げだよね。


「やるしかないだろう。我々は、いつだって出来る事をやるしか無いんだ」

 そう、陛下はいつだってそう言って前を向いてるよね。凄い!ジェーちゃは、なんかずっと大人しいんだけど…大丈夫かな?抱っこされてるから顔色が見えない。(いつの間にジェーちゃのお膝の上でした。)んんっと上を向くと顔色が悪いジェーちゃと目が合った…いや コレ合って無いな?ジェーちゃ?どこ見てんの?目の焦点が合って無いよ?


「それで女神アレクシス様なんですが、ヘンリーが言うには途中ではぐれたようで、また探しに行くと言ってるんですよ」

 義父(パパ)がそう陛下に言うと、ジェーちゃの目にビカッと光が点いた。わっ びっくりした。

「父上、俺も行きます!」

 ガバッと顔をあげると陛下に宣言した。

「駄目だ」

「何故ですか!」

「…ジェームズ、明日は祝賀パーティーなのを忘れてるの?」

 呆れたようにプルクラ様が言う。そう言われて ハッとするジェーちゃ。

「しかし…!ヘンリーはまた危険な目に…!」

 食い下がるジェーちゃに、テオ兄様が言う。

「いや、そもそも、ヘンリーしか入れないんですよ。」

「はぁ?」

「入り口が小さくて、入れるなら俺がとっく入ってますよ」

「なんだと?! まさか、ヘンリーひとりで行かせたのかッ?!」

 あ!…そーか、教会の前で別れたから、僕がひとりで入ったって知らないんだ!

「ジェームズ!落ち着きなさい。騒いだって何も話が進まないよ?」

 まだワアワア騒ぎそうなジェーちゃを、ルーカス王子殿下がすかさず制御する。「ウグッ……」と黙るジェーちゃ。流石、ルーカス王子殿下だよね!


「祝賀パーティー…」

 ポツリとアシェル様が言う。

「そうなんだ、アシェル。急で悪いんだけど、両国の為に参加してくれるかな?顔を出すだけでも良いよ。本当はゆっくり休ませたいんだけど…」

 ルーカス王子殿下がそう言うと、アシェル様は微笑んで答えた。

「大丈夫、問題無いですわ。サングリア王妃殿下のところでお茶を頂いていただけですから」

「そうなると――」

 チラリとルーカス王子殿下が陛下を見る。

「…ルーカスはアシェル嬢のエスコートを。ジェームズはヘンリーのエスコートを。」

 え!陛下?! 今、なんて言ったの?!

「陛下…? 俺はサイラス王女をエスコートするのでは――…」

 キョトンとしてジェーちゃが言う。

「お前の『伴侶』はヘンリーでは無かったか?」

「そうです!ヘンリーです!…でも、陛下がエスコートするようにと…聞いていたのですが…」

「ああ、そのつもりだった。だから、ルーカスのエスコートもエミューズ伯爵令嬢の予定だった。だが、それは彼らが戻る前の話だ。まさかこんなに早く連れ戻せるとは思わなかったからな。――流石だ、ヘンリー」

 淡々と話していた陛下が、最後だけこっちを見て、艶やかな微笑みを向けて来た!わっ、凄い!イケメン!


「では、彼女達のエスコートは…」

 ジェーちゃがなおも聞くと、

「別に結婚式でもあるまいし、『祝賀パーティーのエスコート』なんて、どうとでもなるんだよ」

 パチン とウィンクしたアシェルパパがジェーちゃに言う。「…なんだ、そうなのか…」とホッとして気が抜けた様子で、ポスンとソファに座るジェーちゃ。

「両国の事なんて『大人』の問題よ。貴方達はそんな事気にしなくても良いの。ねぇ、プルクラ様?」

 王妃フローラ様が隣のプルクラ様に言う。

「そうよ、『これからは大人が頑張らなきゃ』って誰かさんも言っていたしねぇ?」

 そう言って陛下を見るプルクラ様。アシェルパパはなんか、ニヤニヤしてる。


「――とにかく、戦いはまだ終わってはいない。だいぶ概要は明るくなったが、謎は多い。皆の者、これからも狂乱の魔術師を捕らえるべく 全力を出してくれ」

 陛下がそう締め括ると、一旦 会議はお開きになった。


 結局、僕が異世界?から来たって言うのは言ってないし、(説明が難しい)ファーニーさんの鑑定画面(ステータス)にも『異世界者』ってある事を知ってるのは僕だけだと思う。魔女たんも行方不明だし、ノアの世界がパンクするかも知れないし、まだまだ問題は山積みだ……!


 そして何より…!『祝賀パーティー』?!?!

 僕も出るの……?!?!

 

 

 

 

 

 

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