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悪役令息の務め  作者: 夏野 零音


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第五章-3-『消えた記憶』


 僕はノア、ノア・アードルフ。名高い三大公爵家の三男で、祝福(ギフト)と呼ばれる魔法が使える 超珍しい人間だ。そうは言っても、この世に魔法などほとんど無くて、それよりも錬金学が発達しているから、魔法の詠唱を覚えるよりも機械のスイッチを押す方が早い。錬金学の進歩は凄まじく、特にここ百年で世の中は大きく変わった。

 遠方の人と喋れるだけでなく映像もリアルタイムで届くし、買い物もインターネットが主流だ。ボタンひとつで魔法みたいな事が出来る。そんな世の中でも、やっぱり本物の魔法使いの地位は高いし、一目置かれてる。特に攻撃魔法使いなんて軍事的に重要なポジションだし、回復魔法が使える人も重宝される。僕も、そういう魔法使いだったら良かったんだけど…。


 僕の属性は闇、闇魔法使い。字ズラだけ見ると、なんか厨二病みたいだけど、内容は至ってシンプルだ。魔法がかかったものを無効化出来る。一見、最強なんじゃ?と思うだろうけど、そもそも 今 この世に魔法なんて!ほとんど無い!スマホに闇魔法かけても、初期化も出来ないし、何も起こらない。そりゃそうだ、スマホは魔法がかけられてる訳じゃないからね。だから、『魔法使い』の中では一番凡人と言うか、役立たずと言うか…、生まれる時代が違えば 大活躍出来たんだろうけどね!


 祝福(ギフト)持ち、と云え 普通の人と変わらない僕は、宿題やテスト勉強にも力を注がなくてはいけない。せっかく チートとも云えるものを持ってても、使い道が無いんじゃ意味が無い。食べて寝て しっかり勉強して…健やかな生活を送っていた。皆も嫌だと思うけど、僕もテストは嫌い。一番上のお兄ちゃんなんかは「授業を聞いてたら分かるだろ?」とか言うけどさー。優秀な兄達とは頭の出来が違うのよ…そりゃ?同じ親から生まれて、同じ環境で育って来たけどさ…、個性ってのがあるでしょ?


 そういう訳で、テスト前には王都に幾つもある図書館に勉強しに行く。自宅にも蔵書室はあるけど、家だと思うとどうしてもダラケちゃうんだよね〜、漫画とかもいっぱい置いてるしさ…。簡単な準備をしていつも行く図書館まで送って貰う。僕は公爵家の人間だし、祝福(ギフト)持ちでもあるから(一応)、護衛の人間も居るし、お抱え運転手も居るんだよ。図書館の入口に護衛の人を置いて、僕は中へと入った。ズラズラ〜と並んだ本棚の間を歩いて、幾つか本を抜き取る。それを窓際の席に置いて、コーヒーを取りに行く。この図書館は中央にドリンクコーナーがあって、利用者は好きな飲み物を選んで飲む事が出来る。普段は甘いジュースが好きなんだけど、ここへは勉強しに来てるからね、眠くならないように いつもコーヒーを取るよ。


「はぁ〜やるか」

 席に着いた僕は、コーヒーをひと口飲んで自分に気合いを入れた。やりたくないけど、これでも公爵家の三男なのでね…、外聞と言うものがありますのでね、そんなに優秀だと言われるほど勉強するつもりは無いけど、アホだと思われる訳にはいかないからね。あぁ〜僕って偉くない?

 そうやって自分を鼓舞しながらも、テスト関係の本では無く、目に付いた歴史書を手に取る。一応、歴史関連の本ではあるから、テストに無関係という訳でもない。そうやって遠回りしてから最後に数学の勉強をする、それがいつもの流れだった。


 歴史書にはこれまで習った事が書かれている。

 ボーッとしながらペラペラとページを捲っていると、中ほどで突然、ページが真っ白になっていた。驚いた僕はその先も確認したけど、やっぱり真っ白なまま。

「えー、急に書くの、止めたって事?ページはまだ半分もあるのに?」

 ぼんやりしていた僕の目が覚めた。本をひっくり返したり、後付けを見たりしている内に、強固な閲覧禁止魔法がかけられている事に気付いた。歴史書にそんな魔法がかけられてる事にも驚いたし、こんな強固な魔法を使える人が居ることにも驚いた。だって今の世の中は、魔法使い自体がとても少ない上に、必然というか 沢山あったであろう『詠唱』も廃れ、現在まで残っているものは多くない。詠唱は、魔肝から魔力を取り出す際に、使いたい魔法を具体的に具現化するのに必要で、例えば袋の中に手を入れて「飴」と言えば飴が取り出せるけど、指定しなければ何も取り出せないのと一緒。イメージがあれば近いものは取り出せるけど。だから詠唱はとっても大事。でも魔法使いが減って、使われなくなった詠唱はどんどん歴史から消えて行った。残念な事だけど、魔肝の無い人にとっては いくら詠唱を覚えたとしても魔法を使う事が出来ないんだから、仕方ないよね。勿論、いくつかの詠唱は教科書に残ってるし、魔法学で習うけど。


 だから、閲覧禁止魔法がかけられてる事に驚いたの。見られたくない日記とかにかけると良いかもね!それはさておき、何が書かれているか 興味を惹かれた僕は、お得意の闇魔法で無効化してみた。いつもは役に立たない僕の魔法だけど、効果は抜群だ。閲覧禁止魔法がかけられてるって事がどういう事か、その時の僕は好奇心が勝ってしまって、良く考えなかったんだよね。人のスマホ 覗いちゃイケナイのと同じ。

 得意げで詠唱した僕は、浮かび上がった赤い文字に、自分の迂闊な行動を心底 後悔した。


 だってコレ、明らかに血文字でしょ…? え、違うかな…、赤いインクなだけかな…? ドキドキしながら、目に入った文章を読む。

 『……これが読めていると言う事は、あなたは闇魔法使いか、魔法を無効化出来る祝福(ギフト)を持っているのでしょう。どうかお願いです。私の意識が消える前に、この牢獄を消して下さい。ここは創世神アレクシスの魔力が満ちています。このままではいずれ爆発し、この世を葬りさってしまうでしょう。

 私が愚かでした、どうかお願いです。この牢獄を無効化して下さい。』


「……………………」

 え? どういう事? 何言ってるのか、全然分からないんだけど…。牢獄って何?創世神アレクシス…?

 誰かのイタズラかとも思ったけど、書いてある内容にしても、かけられていた高度な魔法についても、ふざけている訳じゃないのは伝わって来た。確かに僕は、闇魔法使いで、魔法を無効化出来るけど。その、牢獄?とやらも、魔法で作られてるなら無効化出来ると思うけど…。ただどこへ行けば良いのか分からないし、「世界の破滅」なんて言われても僕にはどうする事も出来ない。ヒーローなんかじゃないし。


「うーん」

 腕を組んで瞳を閉じ、もう一度 考えてみる。決してテスト勉強が嫌で、現実逃避してる訳じゃ無いよ?

 まあ?僕も魔法使いの一員ですし?普段は全くお呼びがかからない、役たたず魔法使いですけど? これは僕が輝く案件なんではないか?そう思うと胸がドキドキと高鳴るのを感じた。兄達に「お前はいつかヤル奴だと思ってたよ」って言われたり、「流石 私の子ね!」ってお母様にも褒められちゃったりするかも知れないな?デヘヘ…。それどころか、国から表彰されちゃったりなんかして…?何しろ、「世界の危機」だもんね?うーん、仕方ないなぁ!僕が頑張っちゃおうかなっ?


 暫く グフグフ言いながら妄想してたけど、そもそもどこへいけば良いのか分からんのよね。瞳を開いた僕は落ち着く為にコーヒーをすすって、何気なく赤い文字の上に手を乗せた。本当に、何の他意も無い、無意識の行動。それとも『ナニカ』に誘われちゃったのかな。本が光ったと感じるより早く目の前が真っ白になって、「あ…」と声を出す間もなく、今度は真っ黒になった。

 え?

 それが正直な感想。怖いとか、帰りたいとか、まだ状況が把握出来ていないせいか、そんな風には思わなかった。真っ黒な空間で ポカンとしてると、小さな子供が膝を抱えて泣いているのが見えた。何となくそばへ近寄って行くと、その子の隣に困ったような表情をしている女の人が座っている。泣き出した子供を宥めようとする母親って感じだ。


「あの…大丈夫ですか?」

 あ、こういう時に『大丈夫ですか?』って聞くと、大体の人間は『大丈夫です』って答えるから、『大丈夫ですか?』って聞いちゃイケナイんじゃ無かったっけ?と思いながら僕は声をかけていた。でも女の人は困ったようにこっちを見るだけで、返事は無い。あ、もしかして喋れないのかな?そういう人も居るよね。それじゃ、と子供の方に視線を移すと、その子はこっちをポカンとした顔で見上げていた。あ 泣き止んだね。

 子供の目線に合わせてしゃがむと、ぐずっと鼻をすする。ポケットからハンカチを出して拭いてあげた。ティッシュのが良かったけど、あいにくハンカチしか持って無かったんだよ。


「お兄ちゃん、だぁれ?」

「僕?僕はノアだよ。君は?」

「…へんりー……」

「ヘンリー!良い名前だね、どうして泣いているの?」

 僕がヘンリーの頭を撫でながら尋ねると、ヘンリーは ちょっとモゴモゴしながら教えてくれた。

「…おかあさまと…ばじゃ に、のってたの。でも、ドーンッてなって、きがついたら ここにひとりだったの…」

「ひとり?」

 どうやら、ヘンリーには隣にいる女の人…母親?が、見えて居ないらしい。彼女の顔が悲しげに陰る。

「うん。まっくらで、ひとりで、こわくて…」

 またジワジワと大きな瞳に涙が溜まる。

「大丈夫だよ!ヘンリー、僕は世界を変えるために召喚されたヒーローなんだ!」

 僕はヘンリーを安心させる為に、フンッと両腕を腰に持って行って胸を張った。

「…せかいを…かえる……?」

 ヘンリーはキョトンとしている。あれ?この位の子供ってヒーローとか大好きなんじゃないっけ?親戚の子にこう言うと、泣いててもすぐに瞳をキラキラさせて笑うのに。もしかしてスベった?だが、止まるわけにはいかない。そっちの方が恥ずかしい!

「そうだよ、ヘンリー!僕が来たからには もう大丈夫だ!何も心配要らないよ!それに、キミはひとりなんかじゃないよ?見えるかな?よーく隣を見てごらん?誰かいない?」

 僕がそう言って隣を指さすと、ジーッと見詰めていたヘンリーの顔が驚きに変わる。


「お、おかあさま…?!」

 ヘンリーはポロポロ涙を零しながら、母親に抱きついた。まるでチューニングが合うように二人はしっかりと抱き合った。良かった良かった。もし見えないって言われたら どうしようかと思ったよ。えぐえぐと泣くヘンリーの頭を撫でながら、女性がこちらに頭を下げる。きっと、ずっとヘンリーに声をかけていたのに、その声はヘンリーに届かなかったんだね。

 めでたしめでたし、なんだけど、さて これからどうしよう?突然 こんな空間に飛ばされて、何をすれば良いのかも分かっていないのだが。キョロキョロと辺りを見回しても、ずぅーっと暗い。暗くて何も無い。暗いのに不思議と僕らはスポットライトでも浴びてるみたいに姿形が分かる。明かりがないから、お互いの姿が見えなくてもおかしくないのに。やっぱり普通の空間て訳じゃ無いって事だよね?それならやっぱ魔法、でしょ?

 僕はこの空間に闇魔法を使ってみた。詠唱しだすと僕の周りに魔法円が浮かび上がる。唱え終わる前に身体中に激痛が走る。体が粉々になる痛みで僕は気を失った。好奇心猫を殺す、僕はまたしても後先考えず 無効化の魔法を使い、ピンチに陥ったのだった…。

 そして目覚めてからの事は、皆も知っている通り――。


 

 

◇◇◇◇◇

 「実は少し前から、女神アレクシスの魔力が途絶えているの。」

 僕がこれまでの経緯を思い出していると、俯き加減で昔の王妃様はそう言った。あまりの痛みであの辺の記憶が飛んじゃってたみたいだね。なるほど…確かに暗闇でヘンリーに会った時、そんな事言ってたわ…。でも本気でそう言ってた訳じゃなくて、泣いてるヘンリーを宥めようとしてただけなんだけど…。

 

「あの方はこの国を創った創世神だから…、あの檻から抜け出しても なんの不思議も無いのだけれど…。」

 昔の王妃様が続けて言う。いやいや、ぜーんぜん出られなかったから。めっちゃ拗ねてたし、あの檻を壊したの僕ですから。うーん、でもそっか。なんか僕、分かっちゃったかも…。きっと、一冊目の本、僕が生まれる世界線の本ね、魔法使いの国アデルバード王国と隣の機械の国サイラス王国は、アデルバード王国が魔獣暴走(スタンピード)で壊滅状態になった後、サイラス王国が支援してくれて、より結び付きが深い友好国になったはずなんだよ。気軽に行き来出来るようになって、それで国際結婚が進んだの。そうしたら、サイラス王国にも魔肝を持つ子が生まれるようになったんだけど、魔法学はアデルバード王国に来ないと学べないから そんなに魔法使いが増えた訳じゃ無い。逆にアデルバード王国はサイラス人と交わる事によって魔肝を持たない子が増えた。ノアの頃には魔法使いなんて『絶滅危惧種』扱いだったしね。

 でも、あの世界線では魔女たんはずっと檻に閉じ込められたままだった。何しろノアはまだ生まれて無いしね。昔の王妃様は魔女たんからずっと魔力を吸い上げてて、それをアデルバードの子供に流していた。それなのに、魔肝を持つ子供の数が減る。すると――どうなる?流れるはずだった魔力は行き場を失って()()に留まり続ける。ここがどんなに広くとも、溜まる魔力が少しでも、『限界』は必ず訪れる。

 そこまで考えて、僕は血の気が引くのを感じた。


 この世界線――、狂乱の魔術師が二度、時戻りを成功させたこの世界は、僕が魔女たんを解放した。だから、ここへ流れ込む魔力は無くなった。つまり、この世界はこのまま問題なく(?)進む事が出来る。でも、ノアがいた世界は――?容量オーバーしたこの蔵書室は破裂し、大爆発を起すかも知れない。現実世界とどれくらい離れているのか、影響をどれだけ受けるのかも分からない。でも、本に書かれていたのは「世界の破滅」…、大爆発した後、現実世界も消し飛んでしまったら――?! お父様、お母様、兄達…親友、先生、近所の子――……頭の中に 無数に浮かんでくる顔が大爆発によって粉々になる――――…!


「た! たいへん、だ!!!」

 僕は叫んでソファから立ち上がった。どうしよう?あの本は、ノアの世界線の王妃様が書いた物で、あの世界を救って欲しかったんだろうに、僕は違う世界線へ来てしまった!まあ、僕の意思で来た訳じゃ無いんだけど…、ピンチだって知らせられたとしても、闇魔法使いなんて そうそう居ないし、そもそも絶滅危惧種なんだよ?今から探して見つかる可能性なんて宝くじで1等当てるようなもんだよ!大爆発待った無しじゃん!!


「どうしたの、ヘンリーくん!」

 真っ青になってオロオロする僕に、驚いた顔をしたアシェル様が心配そうに聞いてくる。

「あの…あの…!たいへん…」

 でもなんて言えば良いのか分からない!だって僕だって混乱してるんだもん!そうだ、待てよ、これはあくまで僕の想像だよね…、間違ってる可能性だってあるよね……。イヤーーーー!合ってると思わない?! 僕の推理、ドンピシャだと思わない?! どうしよう!このままじゃ、ノアの世界線が大爆発しちゃうよ!


 ((ヘンリー!おい、ヘンリー!大丈夫かっ?! ))

 ((エッ! テオ兄様…?!))

 あわあわしていると、頭の中に声が響いた。新しい祝福(ギフト)の言語通信だ!

 ((ああ、良かった。無事に繋がったな。))

 ((ヘンリー大丈夫?! 痛いところは無い?!))

 続いて義父(パパ)とティム兄様の声が続く。

 ((ヘンリー!無事に着いたのか? 着いたのならすぐに連絡しろと言っただろう!))

 キレ気味…いや、最早キレてるテオ兄様の声がする。そうだった、着いたら連絡しろって言われてたんだった。いや、忘れてた訳じゃないよ?途中で魔女たんが居なくなっちゃってビックリしたし、着いたら着いたで、予想と違くて…。


 ((ごめんちゃい…))

 ((ほらほら、もう良いだろう。ヘンリーそっちは大丈夫なのか?))

 僕が謝ると義父(パパ)がテオ兄様を宥めてくれる。ありがとう。へへ。

 ((だいじょうぶよ))

 ((ヘンリー、アシェル様は居たか?そこはどんなところなんだ?))

 少しホッとしたのか、テオ兄様が状況の説明を求めてくる。

 ((アシェルさま、居る!元気そう!))

 ((そうか…それなら良かった…))

 心の底から安堵した優しい声を出すテオ兄様。ずーっと探してたんだもんね。そうだよ、ちゃんと僕が連れ帰らないと!むんっ。

 ((ヘンリー、女神アレクシス様は?あの方と話がしたいんだが…))

 幼い僕の説明より、魔女たんと話たいと義父(パパ)が言うけどそれは無理な相談だ。だってここには居ないからね。

 ((いないの))

 ((居ない?! えっ、ヘンリーとアシェル様だけなのか?!))

 驚愕してテオ兄様が声を張る。

 ((うーうん!全部で…四人!))

 

 ((四人?! ヘンリー!そこには他に誰が居る?!))

 ((ヘンリー!危険はっ?! 危険は無いの?!))

 ((ヘンリー、女神アレクシス様はどこへ行ったんだ?!))

 僕が ”四人” と言った途端、ディラン伯爵家が わあわあ叫び始めた。えっと、ひとりずつでお願いします。何言ってるのか、分かんないよぉ〜!

「ヘンリーくん?どうしたの、大丈夫?!」

 僕がまたオロオロと挙動不審な動きをしてたから、アシェル様のお顔が真っ青になってしまった。心配かけてごめんちゃい、あ、そうだアシェル様も繋ごう。


 ((ヘンリー!黙ってちゃ分からないだろう!そっちはどうなってるんだ?! …あぁ〜ッ!やっぱり行かせるべきじゃ無かった…!あの魔女めっ、ヘンリーを護ると約束しておきながら…ッ!))

 ((えっ、テオドール様?!))

 怒気を孕んだテオ兄様の声にビックリしたアシェル様が声を上げる。えーと、繋ぎましたので、後のことは宜しくお願いします……。ソッと、ソファの端っこで 体育座りする僕。


 ((アシェル様?! その声はアシェル様ですよね?!))

 ((えっ、アシェル様?))

 ((アシェル嬢、良かった無事ですか? ショーラに良い報告が出来ます…))

 ワイワイ全員で騒ぐディラン伯爵家にアシェル様の目も白黒になる。

 ((え、えーと、私はアシェルです。怪我もしていません!ここにはヘンリーくんが来てくれました。皆さんは…))

 ((ずっと探していました。しかし、王国の何処にも見当たらなく…、女神アレクシス様のお力をお借りして、ヘンリーを遣わせたのです。))

 息子二人を制して義父(パパ)が代表して答える。

 ((ご心配をおかけしました。私もまさか、こんな事になるとは思わず…あ!そう言えば被害は――…))

 こっちに来て、真っ先にアシェル様から大魔人について聞かれたから、一応 僕が知ってる事は話したけど、やっぱりその後どうなったか気になるよね。

 ((アシェル嬢に回復魔法をかけていただいたお陰で、この老体でも 大魔人戦で微力ながら力を使う事が出来ました。改めてありがとうございました。その後、無事 討伐に成功し、後処理も進んでおります。後は貴女が帰って来て下さるのを待つばかりです。))

 ((そうですか…良かった……))

 義父(パパ)の丁寧な説明に、アシェル様も心からホッと安心したみたい。


 でも、突然 ひとりで話だしたアシェル様を、昔の王妃様とK(そう呼んで欲しいんだって)は怪訝な顔で見ている。あー、そうだよね?ノアの世界のスマホや、祝福(ギフト)の言語通信を知らなかったら「あれ?ヤバい奴?」って思っても仕方ないよね〜。いつもならここで「えーい、皆 繋げちゃえ!」ってやるところなんだけどさ。でも、昔の王妃様の昔話を聞いて、誰彼構わず言語通信で繋げるのは、ちょっとマズイんじゃ無いかなぁ〜って思い直したところなんだよね。祝福(ギフト)は、やっぱりちゃんと考えて使わないとね。

 そんなわけで、僕には聞こえるけど、アシェル様とディラン伯爵家の話し合い中、昔の王妃様とKはなんとも言えない顔をしておりました――――。


 次回に続く!!むんっ!

 


 

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