表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息の務め  作者: 夏野 零音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/34

第二章-3-


《揺れる心》


 ディラン伯爵を教会の前に陣取っていた騎士団に頼んだ後、また教会の中へと戻ったアシェル嬢は、戦闘を終え 魔力が枯渇したジェームズらと行きあった。一時退却する彼らに同行はせず、地下へと向かったルーカスらを追い掛けた。ディラン伯爵の治療で魔力は減っていたが、まだ半分くらいは残っている。『女神アレクシス』が一緒だとは聞いたが、ルーカスは第一王子だ、仮に致命傷を負ったとしても自分が側に居れば 最悪の事態は防げる筈だ。

 それにルーカスはアシェル嬢の婚約者でもある。先程の大魔人の戦いぶりには腰が抜けたが、このまま引き下がる訳には行かない。教会は言わばアシェル嬢の職場とも言える、毎日の様にここへ来ては 怪我をした民の治療にあたってるお陰で(最近はルーカスへ情報を渡す為に念入りにウロウロしていた。)秘密の通路に心当たりがある。


 実際、こっそり 地下への階段を探っている時に祝福(ギフト)透明化(ステルス)を使っていたKに見つかり捕らえられてしまった。

 急ぎ足で階段を降りていたアシェル嬢は、目の先に人影を見つけて思わず息を飲んだ。だが、それが目的のルーカスだと気付き ホッと胸を撫で下ろす。声をかけようと片手を上げた時に、ルーカスの声が聞こえて来た。

 

「…やっぱりテオドールには側近になって貰いたいな…」


 それが耳に届いた途端、アシェル嬢は上げかけていた手を口元に持っていった。二人はアシェル嬢には気付かず、話を続けている。テオドールは了承はしなかった様だが、その声音を聴けば 心が揺れているのが誰にでも分かる。

 (…まるで、プロポーズの様な…)

 両手で口元を押さえ、気付かれぬ様に身を潜めたアシェル嬢は、胸が忙しなく鳴り出すのを止められなかった。

 本人達は気にしていない様だが、とてもでは無いがあの場へ入って行く事は出来ない。元々、ルーカスはテオドールの事がお気に入りなんだろう とは、認識していた。会う事は無かったが、ルーカスの話の中に良く登場していたし、テオドールの話をするルーカスは とても自然な顔をしていたからだ。

 (でもまさか、ここまでとは 思わなかった…)


 ルーカスの母親は隣国から和平の為に嫁いで来た王女だ。終戦したとは言っても隣国に負の感情を持っている人間は多い。魔力暴走を繰り返してしまうジェームズも気の毒に思っていたが、ルーカスの現状についてもアシェル嬢は心を痛めていた。敵だらけとは言えないが、純粋な味方はひと握りだろう、そんな中でテオドールに固執するのは道理だと思っていた。

 固執と云うより、最早 執着とも言える。


 アデルバード王国は同性婚姻を禁止しては居ない。元々女性の割合が少ない上に、子を確実に産むために王侯貴族達が女性達を抱え込む、それに長々と戦争が起これば 生命の危機的状況に、そこで生涯の相手を求める者も多い。それに跡継ぎ戦争を回避する為、次男三男には男嫁を娶るのが常識化されている。

 だから、ここでルーカスの想いが、友情を逸脱していたとしても大きな問題は無い。否、問題は有る。アシェル嬢はルーカスの婚約者なのだから。

 遠くも無い未来に王妃となると言っても、国王陛下には世継ぎの為に 側妃を数人迎えるのが通常だ。先代の国王陛下は王妃を唯一とし、ガンとしてその通例を受け入れなかったが。幼い頃から教育を受けているアシェル嬢は、その事も良く理解しているので、『自分だけのルーカス』等とは思った事も無かったが、いざ、ルーカスの想いを目の当たりにして 少なからずショックを受けていた。


 否、少なくは無い。体に雷が落ちたのかと思う程、衝撃を受けた。アシェル嬢の頬は みるみる紅く染まり、大きく見開いた瞳は潤み、心臓は忙しなくガナリ立てる。

 

 (…なんて事………、二人のやり取りをもっと観たい!)

 

 アシェル嬢の新しい扉が(ひら)く音がする。

 この気持ちが何なのか、アシェル嬢にはまだ理解出来て居ない、しかし二人がお互いを見つめ、どんな話をするのか近くで観たい。否、壁や空気となって側で観たい。ハアハアと呼吸が荒くなるアシェル嬢は、後ろから忍び寄る気配に全く気が付かなかった。

 タイミングが最悪としか言いようが無い。二体目の大魔人を解き放ったKが、衝撃から立ち直れず 未だ廊下に佇むアシェル嬢を見つけてしまった。一度捕縛された事で慎重に気配を伺っていた筈のアシェル嬢は、衝撃の場面に出くわしてしまい、気もそぞろだった。画して二回目となる捕縛を味わう事になった。


*****

《古書堂での密談》



 ヘンリーです。大魔人との戦いを終えて魔力が枯渇してしまったジェーちゃとダニエルくんと一緒に王城へ一時退却して来ました。簡単に湯浴みをして汚れてしまった服も着替え、ジェーちゃの侍従のファーニーさんが食事を用意してくれたので、それを三人で食べました。

 ジェーちゃはずっと顔色が悪い。幼い頃から暴走させる程 魔力が多かったジェーちゃは、”魔力枯渇”なんてした事ないに違いない。でもきっと、兄上であるルーカス王子殿下が心配なんだろうな…。本来の歴史、正史では敵対関係だったのにね。

 でも、僕もテオ兄様が心配!

 だって、僕は大魔人と戦うジェーちゃとダニエルくんの姿を観てたからね…、何度攻撃しても直ぐに回復する大魔人は怖かった。今、あれとテオ兄様が戦ってるのかと思うと…強化魔法(バフ)をかけに走りたい!でも、ジェーちゃを休ませる役目を与えられたからね。本当は側に居たかったけど…。

 それに多分、魔女さんが一緒だから、大丈夫…だと思うし。


 ジェーちゃは沈んでたけど、一緒にご飯を食べてたダニエルくんが 色々話を振ってくれて、本来なら同じ食卓に着く所か 話かける事すら不敬になるけど、今は異常事態という事で第二王子の侍従であるファーニーさんも何も言わない。否、ファーニーさんは他の人と違って変わってるから、通常時だったとしても同じかも知れない。つまり、思ってたよりも和やかにご飯を食べれた!

 そして、陛下に報告する為に先触れを出した兵士が戻るまでは部屋で待機だ。ソファに座って膝に僕を乗せ、髪を丁寧に梳いてくれる。…逆じゃない?…まあ、ジェーちゃがそれで気が落ち着くなら、好きなだけやるがいいさ…。


 そうして少し待つと、兵士が戻って来て『古書堂』へ案内すると言われた。古書堂とは、なんと 国王陛下しか入れない、秘密の文書がたっくさん保管してある部屋なんだって。きっと、大魔人の事を調べてるのかも!


「分かった。では案内を頼む。」

 僕をスッと抱き抱えてジェーちゃが立ち上がりながら、兵士に向かって声を掛ける。えっ、これから行くのは”国王陛下しか入れない部屋”なんだよね? ジェーちゃは報告があるし、第二王子殿下という身分もあるから分かるけど、僕は ただの伯爵家の三男なんですけど。

 僕を抱いたままのジェーちゃを見て、ダニエルくんも何か言いたそうにしてる。でも、注意をすべきファーニーさんは何も気にしてない!えっ、本当にこのまま行くの?


 目を白黒させてる僕を他所に、ダニエルくんに「ここで少し待て」と言ってジェーちゃは兵士の後について歩き出した。今は急ぎだし、僕がヨチヨチ歩くのでは日が暮れてしまう、だから「降ろして」とは言わないけどさぁ…、良いのかな?これ。

 どこの曲がり角を曲がったとか分からなくなるくらい進んで行くと、警備が厳重な扉についた。さらにそこから大分進んだ先に、古書堂はあった。ひとりで戻れる自信は無い。流石、この国の機密事項が保管されてる場所だけある!

 


 *****


 古書堂の扉にも強そうな兵士が居る。来意を伝えると直ぐに中に入れた。僕は”国王陛下しか入れない部屋”って聞いてたから、中には陛下しか居ないと思ってたの。でもジェーちゃに抱っこされたまま中に入ると、そこには…

「…とう さま…?!」

「ヘンリー、無事だったんだね」

 驚く僕に、優しく声をかけてくれる。アシェル様に治療して貰って別れてから、てっきり義父(パパ)はディラン伯爵家に戻ったと思ってた!まさか古書堂(ここ)に国王陛下と居るなんて…。

「ジェームズ…ッ」

 奥の棚から書物を手に持った女性が足早に向かって来る。美しい衣装は高位の人だとひと目で分かる。あれ、もしかして…

「…は、母上…いや、側妃様…」

 ジェーちゃもビックリしたみたい。体が固くなった感じがする。幼い頃に魔力暴走して怪我をさせちゃってから、あんまり会って貰えないって話だったよね。嫌われてるのかと思ったけど、見た感じ 凄く心配してたっぽい!この間、隠れ屋敷で受け取った手紙は、やっぱり本人からだったんだね!この様子を見て確信したよ。

 いやだって、全然交流の無い ジェーちゃを嫌ってると思われる人が急に『心配してる』みたいな手紙寄越されても信用出来なくない?世間的には罪を犯して地下牢へ幽閉されたってタイミングだったし。それなのに手紙貰ったジェーちゃが喜んでるのは 誰の目から見ても丸わかりだったから、もしジェーちゃを陥れようとする罠だったら僕絶対許さない!僕の悪役が暴走するよ!


 って思ってたんだけど、そんな心配は要らなかったみたい。いや待てよ、印象で判断するのは早過ぎるか…近付けたら僕のもう1個の祝福(ギフト)、ノアだった頃の闇魔法の祝福(ギフト)だよ、『鑑定』をすればもう少し良く分かるかも…!

「お身体は大丈夫ですか?王子殿下」

 僕がアレコレ考えてると、スッと側に大柄な男の人がやって来てジェーちゃに声をかけた。誰だろう?着てる衣服も上等だし、ここに居るって事は国王陛下の厚い信頼がある人なんだろうけど…。

「…ああ、問題ない、アードルフ公爵。まだ魔力は回復しては居ないがな」

 アードルフ公爵?! もしかしてノア()の御先祖様かな?…ん、それよりもしかして アシェル様のお父様だったりする?アシェル様ってアードルフ公爵家の令嬢だよね。

 

 アードルフ公爵は背が高くて、高位の衣装の上からでも体鍛えられているのが窺える。肉弾戦が得意そうな雰囲気だけど、お顔は女性よりで柔和だ。シルバーメタルの眼鏡が知的な印象を与えてる。僕の義父(パパ)もイケメンだけど、この人も中々 イケメンじゃ無いかな。と云うか、この部屋、国王陛下も側妃様もみーんな、お顔が良い!イケメンパラダイスだ!これが近親婚を繰り返して血を保ってる恩恵なのかな。でも近親婚は体に悪影響が出て機能不全になったり寿命が短かったりするから、ノアの世界では禁止されてる。ここではまだその因習が色濃く残ってるけど。


 そんな四方をイケメンに囲まれて、テオ兄様達で慣れてた筈の僕の瞳はチカチカと星が散った。眩しい!

「ジェームズ、報告を聞こう」

 国王陛下が神妙なお顔でそう切り出した。そうそう、それをしに来たんだった、忘れる所だったよ…。皆が国王陛下とジェーちゃの側に集まって、緊張した面持ちになる。


「今現在、ルーカス王子殿下は教会の地下へと向かい、大魔人と対峙しているものと思われます。その事を念頭に起き、これから体験した話をお聞き下さい」

 そう言ってジェーちゃが話し出した。

「私が教会に踏み込んだのはご承知の通り――、そこでディラン伯爵とアシェル、ヘンリーと行き合いました。そこへ『女神の使者・K』と呼ばれる者が現れ、大魔人を従え、私を殺すように命じました。」

「待て、大魔人は命令に従ったのか?」

 国王陛下が口を挟んだ。

「ええ、部下のように従わせている様子でしたが…」

「――では、『成功』したのか。やはり侮れないな使者は」

 暗い顔をして国王陛下が呟く。


「どういう事ですか?」

 怪訝なお顔をしてジェーちゃが問いかける。

「『大魔人』を作るには小難しい儀式を行わねばならぬ上に、生命の泉と呼ばれる希少な赤い石を用意する必要がある。そこまでしても魔力を10倍程増幅させる大魔人に成れる確率はほぼゼロだ。出来上がるのは自我が無く暴れ回るだけの不死者。その為『人間を辞める魔術』と呼ばれている。余りに危険な呪法の為、当然禁止されていた。しかし人間の欲望は果てしなく、何度となく行われて来たのだろう。今ではその存在自体が禁忌とされ秘されていた。よって、大魔人が命令に従ったのなら 自我を保っている証拠、『成功』だと言って良いだろう。」

 国王陛下が良く通る声で語る。手元には古そうな本…紙の束を纏めたような物を持ってるから、それに書いてあるのかも。


「…自我が無い不死者…それは、俺達が倒したモノより厄介かも知れませんね…」

 ジェーちゃがそっと口を開く。考えが読めない、不規則な攻撃ほど防ぐのは難しい。

「…!やはり、倒した…倒せたんだな?」

 陛下のお顔に光が指す。

「はい。ダニエル…ジュード子爵の者が共闘してくれまして。それでもかなり苦戦し、二人とも魔力枯渇に陥りましたが 炎が大魔人の体をくまなく焼き、体の中から砕けた赤い石があるのも確認しました。それは兄上…ルーカス王子殿下が回収して持っています。」

「おおお!」

 アードルフ公爵が「倒せる!倒せるんだ!」と感嘆の声をあげる。

「流石、この国随一との声も高い魔力保持者ですね!」

 続けるアードルフ公爵の言葉に、ジェーちゃはお顔を陰らせる。


「…いえ、俺達…いや私達だけでは敗北していたでしょう。」

「どういう事だ?」

 陛下がジェーちゃの話の続きを促す。ひとつ頷いてジェーちゃは真っ直ぐ陛下の瞳を見た。

「大魔人が10倍程の魔力が増すとしても、それは元の人間の魔力を起点としています。仮に相手が1万の魔力を保持していたなら10万に成る事になります。戦った感触としては俺達二人とほぼ互角の魔力量だと感じました。人間であれば苦戦はしたとしても倒していたと思います。しかし、使えば無くなる俺達とは違って、奴の魔力はドンドン湧いて出てキリがありません。あれは胎内にある生命の泉と呼ばれる赤い石のお陰なんですね。消耗戦になれば魔力枯渇する我々の負けです。倒すつもりなら、倍以上の魔力量の魔法を叩き込んで一撃で仕留める必要があります。」

「…元々魔力量が少なかったとしても10倍だぞ?それの二倍以上の魔力だと……」

 ジェーちゃの話に皆のお顔から色が消える。まー、確かに”何 言ってんだ”ってなるよね。


「…でも、王子殿下は倒したんですよね?それはどうやって…」

 アードルフ公爵の疑問ももっともだよね。

「アードルフ公爵、『月魔法』をご存知だろう?」

 義父(パパ)がそれを聞いてハッとしたお顔になる。

「…月魔法…? ええ勿論。殆どの民は魔肝(まかん)が無いか、月魔法使いですから。それが…?」

「月魔法使いの特性は、攻撃力では無く他人を支援する補助魔法だ。つまり強化魔法(バフ)をかける事が出来る。」

「まあそれはそうですが…だから何ですか?月魔法使いの強化魔法(バフ)など微々たるものでしょう。」

 他人有りきの月魔法使いは、その特性のせいで軽んじられるのが一般的、このアードルフ公爵がそう言うもの予想通りだね。


「普通の月魔法使いならな…、しかしステラが五つだと話は変わってくる。」

 陛下がジェーちゃとアードルフ公爵の話に口を挟んだ。

「ステラが五つ?…それは珍しいですが、でも月魔法でしょう?」

 そう言って陛下に視線を戻すアードルフ公爵。無意識なんだろうけど、嘲笑を含んだ言い方には ちょっとカチンときちゃうよね!月魔法使いとしてはさ!まあ、これが月魔法使いの評価なんだから仕方ないけどさ!


「分からないか?ステラ五つの魔力保持量で強化魔法(バフ)をかけたらどうなる?かけられた相手は二倍の攻撃が出来るようになる筈だ。」

「!」

 アードルフ公爵のお顔が青ざめて、皆が陛下に注目する。

「いいえ、陛下。二倍ではありません。」

 陛下はアードルフ公爵からジェーちゃへと目線を移動させた。


「三倍以上です。」


 真っ直ぐに陛下を見据えてジェーちゃが告げる。元々静かだった部屋は凍りついように冷えきっている。()()がどういう事か、直ぐに理解するなんて、やっぱりここに居る人は頭の回転が速いねぇと思っていると、義父(パパ)がジッと僕を痛い位に見つめてくる。

「つまり――それは…」

「ええ、ここに居るヘンリーが私に強化魔法(バフ)をかけてくれたからこそ、一撃で大魔人を倒せたのです。」

 続きを促した陛下に、ハッキリ言っちゃうジェーちゃ。え!ちょっと待って、そんな事言ったら僕 監禁されない?ルーカス王子殿下にも『王宮預りだ』って脅されてるのに…。


「…つまり何ですか。面倒で大変な儀式を長々とやらなくても…ヘンリーくんに強化魔法(バフ)をかけて貰えば、誰でも自我を失わず『大魔人』になれる訳ですか?」

 これはとんでもない事だ。

「誰でも、では無い。元の人間の魔力保持量によるだろう。それに一時的なもので不死者にする事は出来ない。…だが、そうだな、ステラが三つ以上の者がヘンリーと接触するのは防いだ方が良いな。」

「王宮にいる者は大体ステラ三つでしょう?! いちだいじですよ!これは!」

 のんびりと話す陛下に、アードルフ公爵は知的な印象が崩壊する程慌て出した。

「現にジェームズ王子殿下は、『大魔人』を超えた!それはつまり、いつでもこの国を滅ぼす事が出来ると言う事です!」

 『大魔人』が最大の恐怖であったのに、今はそれがジェーちゃに移っている。そう、しないと思うけど、ジェーちゃの気分ひとつで国を左右出来るだけの力があるんだ。現に、正史ではヘンリー()を使って内乱してたもんね。


 慌ててまくし立てるアードルフ公爵とは裏腹に、義父(パパ)はずっと黙っている。何を考えてるんだろう…ドキドキしちゃうよ。

「そうだな、だからこそ、()()()はここだけにしてくれ」

 静かにそう言う陛下に、大きくため息を吐いてアードルフ公爵が言う。

「貴方…簡単に言いますけどね…まあ今はそれどころではありませんね。この話は、落ち着いてからまた改めてしましょう、ね?ベンジャミン?」

 義父(パパ)が無言でそれに応える。


「なら…後の二体も…ジェームズが倒せば問題無いと言う事よね?」

 それまで成り行きを見守っていた側妃様が言う。ちょっと安心したみたい。そうだよね、この国一番の危機だもんね。

「そう簡単にいけば良いがな…。ジェームズは今 魔力を失っている、完全に戻るのは早くて夜明け頃だろう。」

 陛下の声を聞いた直ぐ後、突然 魔女さんの声が頭に響いた。


 ((ヘンリー!ヘンリー、聴こえる?))


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ