暴君殿下なりの優しさ
「ほら、ヘンリー。今日のスイーツはドーナツだ」
苦い薬湯を飲んだ後のご褒美お約束スイーツ、これがあるから何とか薬湯を飲む事が出来ている。
薬湯は体の基礎治癒力を向上させる薬だから、人によって効果に差が出る。いっぱい基礎治癒力がある人は怪我してもすぐ治ったり、そもそも怪我しなかったりする。
その逆で基礎治癒力が少ない人は、いくら飲んでも効果が出ない。そういう人は木魔法をかけて貰うしかない。木魔法の癒しは 相手の基礎治癒力に関係なく、使い手の治癒力を与えて貰えるからだ。だけど、木魔法使いは あんまり居ない。だから、皆 薬湯とかで傷や怪我を治すんだけど。
それとそれと、なんとヘンリー・ディラン、祝福持ちだったんだよね〜!祝福持ちと云っても、1番多いツバキ印、月魔法。
月魔法は、一見すると何の変化も起こらない。魔肝無しの人間と大差無いって言われちゃう程、微妙な魔法。でもそれは、魔法の内容が他の魔法と比べて質が違うからなんだけど。
火魔法とか水魔法とか、手から魔法を繰り出して攻撃するタイプと違って、月魔法は自分が攻撃するんじゃ無くて、攻撃する人に強化魔法や弱体化魔法をかける魔法なんだ。
勿論 自分にも強化魔法や弱体化魔法を使う事も出来るけど、元々 攻撃力が低いから、使ってもあんまり意味が無い。
それよりは魔物とかに弱体化魔法をかける方が効率的だけど、それをするには王国を取り囲んでいる塀の外に出ないといけない。
魔物や他国からの侵略を防ぐ為に、アデルバート王国はその敷地を塀で囲んであって、王国内には魔物がいないんだ。
確か、暴君殿下の影響とスタンピードでその塀が崩れるんじゃ無かったかな…。未来の世界には そんな塀無いから。
つまり、塀の外に出るって事は、魔物がウジャウジャいて整備されてない森や林が多い所へ行くって事。王国騎士団や魔力の高い平民集団=冒険者達くらい強く無いと危ない。行商人とか旅行客は、必ずどちらかの護衛を雇って一緒に旅をする。
そんな場所に月魔法使いが、ひとりで出て行くなんて自殺行為!冒険者達と一緒に行くなら、まあ弱体化魔法や強化魔法をかけて活躍する機会も有るけど、やっぱり攻撃魔法使いが一番、賞賛されるもんね。
だから、月魔法は祝福持ちの中でも地位が低い。解りずらい魔法内容に加えて、そもそも火魔法とか水魔法とかの攻撃魔法使いが強過ぎるんだよねぇ。
この世界でも微妙な祝福だった僕。
未来の世界では祝福持ちしか魔法を使えなかったから、勿論 特別扱いだったけど、この世界ではほぼ皆が魔肝持ってて魔法が使える。
それでも、『祝福持ち』ってだけで一目置かれる!月魔法使いでも!
祝福は特殊な魔法で、一般の魔法使いよりも凄く強い魔法が使えるし、修練次第でステラを増やす事も出来る!
ステラってのは、産まれながらに持ってるランクの事。ランクは、祝福持ちで無ければ一生上がる事が無いから、どんなに修練を積んだとしてもランク以上の強い魔法を使う事は出来ない。
ランクは、攻撃力・防御力・治癒力・体力・干渉力の五角形の合計値で計算される。干渉力ってのが、強化魔法や弱体化魔法で、月魔法使いが得意とするやつ。
例えば魔肝のある人で、ステラ1つの場合、大体1000くらい。内訳は人によるけど、火魔法の使い手だったら 攻撃力800、防御力30、治癒力10、体力150、干渉力10とかかな。火魔法は攻撃魔法だから攻撃力に偏るんだよね!
ステラ2つで1万、ステラ3つで5万、このアデルバート王国で一番強いって噂の王国騎士団長でステラ4つ。大体10万。そして最高ランクのステラ5つで100万。どんな法則が働いてるのかは分かんないけど、そう言われている。
魔肝がなくて魔法を使えない庶民とかでも、ステラが1つはある。そして、祝福持ちはステラ2つが確定だから、祝福持ちの時点で、チヤホヤされるって事なんだよね!
しかも、ヘンリーのステラは5つだったよ!最高ランク!月魔法だけど!!
で、今は怪我してるから薬湯を飲んだ後に、自分に強化魔法をかけて効果を倍増させてる。
ヘンリーの華印は右目の中にあるから、そこに意識を集中させて魔法円を発現させる。すると目の前に古代文字が沢山描かれ、中心にバラの華があしらわれた魔法円が、赤く光りながら浮かび上がる。
華印によって、中心の華模様は異なるけど、周りの古代文字は同じかなぁ〜。未来の世界で使ってた闇魔法と同じな気がする。後は、祝福持ちか、持ちじゃ無いかで変わるのかも知れない。
未来の世界の僕の家族は、誰も魔法使えなかったから比較出来ないんだよね〜。
この世界の家族、テオ兄様もティム兄様も義父も祝福持ち。レイラも祝福持ちだった筈。
どうして僕がスラスラ言えるかと言うと、何故か、皆のステータス画面を見る事が出来るから。これは、未来の世界の僕、ノアが持ってる闇魔法の祝福効果なんだよね…。
と言う事は何?祝福も一緒に飛んだって事?祝福って身体じゃ無くて魂に付与されてるって事? それなら、本物のヘンリーも月魔法の祝福を持って未来の世界へ飛んだのかな?なら、この身体にある祝福は何なのさ?
あーーーっ 分かんないよ、もう!ちゃんと勉強しておけば良かった……。
とにかく、今の僕には2つの祝福がある状態みたいで闇魔法も使えてるのかも知れない。
それで、えっと、どれの効果なのか断定出来ないんだけど、歩けるようになったんだ。よちよち 程度だけど。ステラ5つの強化魔法が一番効いてるのかな〜。
◇◇◇◇◇
「ヘンリー、歩けるようになったと聞いたが?」
嫁、お断り宣言をしたディラン伯爵家に、暴君殿下は悪びれなくやって来る。今から行くからって言われたら、断れないのが伯爵家の辛い所だよね。腹の大きな花嫁を断れなかった事もあるし。あぁ、権力…。
しかし、嫁に行く気は全く無いけど、暴君殿下自体は嫌いじゃない。寧ろ、好感度高し。だって珍しい果物いっぱいくれるんだもん。
「あぃ」
暴君殿下の問いかけに一言で返事する僕。こっくり 頷く。
「ほほーぅ。では、ちょっと歩いてみよ」
疑いの目で見てきた暴君殿下は、僕の隣からすっと立ち上がって、三歩離れた所に立つ。いやいや 舐めすぎでしょ。この距離ならすぐだよ。
まあ、治癒師から『もう歩けない』て言われた事は本当だから疑う気持ちも分かるけどね。
ソファから よいしょって降りて、テーブルに掴まりながら、ぽて…ぽて…ぽて…と、あんよを交互に出す。時間はかかったけど、ちゃんと暴君殿下の足元まで辿り着いた。
”どうや”って自信満々に暴君殿下の顔を見上げると、大きく見開いた瞳は ちょっと潤んでいた。
「そうか…良かったな…ヘンリー……」
きっと暴君殿下は本当に、心から心配してくれてるんだろうな。その顔見ただけで分かっちゃうよ…。でも、従兄弟ってだけでこんなに気にかけてくれるもん?
「俺は……歩けるなどと、またディラン伯爵家が戯言を言っているとばかり思っていた…」
ええっ その、ディラン伯爵家に対する敵対心、一体なんなの…!
「良かった。本当に良かったな」
にこにこ笑って頭を撫でてくれる。僕のお口が、もっとたくさん喋れたら、色々誤解を解けるのに…!
「ははは、そうでしょう。ヘンリーは順調に回復しております。故に王子殿下の見舞いはもう不要です」
向かいのソファに座ってずっと黙っていたのに、急に全然笑ってない顔でそう言い切るテオ兄様。また、すぐそーいう事言う〜。
「そういう訳にはいかない。ヘンリーは俺の大事な従兄弟だ。週に1度の見舞いはディラン伯爵家の視察も兼ねている」
フン、と鼻を鳴らす暴君殿下。一触即発の雰囲気。
でも、これは毎週行われているので、もう慣れてしまった。見舞いを断ってもやって来る暴君殿下に、ヘンリーと2人きりにはさせまいと、テオ兄様かティム兄様、または義父が入れ替わり立ち代り僕の部屋に居て、3人以上での面会になっていた。タイミングが合えば、全員勢揃いって事もある。
どーにも暴君殿下は、ディラン伯爵家を目の敵にしてるし、ディラン伯爵家は抗議の姿勢を崩さない。これは暴君殿下の勘違いから始まってるんだよね…、でも歴史書でも暴君殿下とディラン伯爵家は仲が悪かったらしいし、ヘンリーがディラン伯爵家を乗っ取る事にも手を貸していたのかも。
うーん。どっちも僕の心配をしてくれてる訳だから、仲良くして欲しいと言うのが正直な気持ちですね。
「そうだ、ヘンリー。今日はこの後、王宮へ行くぞ」
急に思い出したって顔で、暴君殿下が僕を抱き上げながら言う。
「は?そんな予定、聞いておりませんが。」
当主教育を重ねる毎に無表情になって来たテオ兄様が、更に表情を消して低い声を出す。怖いんですけど。
「言っていなかったか?今日はアシェルと茶会の予定なんだ。”聖女”と名高き彼女に診て貰えば、ヘンリーは更に良くなるだろう」
「………」
そう言われてはテオ兄様も黙る他ない。しかも、『じやあ、俺も行く!』って言える筈もない伯爵家嫡男。せめて行き先が王宮で無ければ…。
このまま連れ去られたりとは無いとは思うけど、『アシェル』は暴君殿下がご執心で拗れる原因のお嬢様。何となく、その場に僕ひとりは心細い!テオ兄様にも着いてきて欲しい!
なので、何も分からん振りして、テオ兄様を指さし「いっちょ?」て言ってみる。有能なレイラが直ぐ様、翻訳してくれる。
「言葉を差し入れる非礼をお許しください!お坊ちゃまが、《テオドールお兄様も一緒に、王宮に行けますか?》と申しております!」
「………ヘンリーは、テオドールが一緒でも良いのか?」
顔を顰める暴君殿下。貴方ー、誤解してますからー!
「んっ」
大きめに頭を振って頷くと、10秒ほど たっぷり考えてから暴君殿下が許可を出した。
「まあ、良い。アシェルは気の優しい奴だ。テオドールが居ても何も言わんだろう。ヘンリーと共に来る事を許してやろう」
「有り難き幸せ」
片膝をついて右手を心臓の上に置く お礼する時のポーズを取るけど、全然嬉しそうじゃないテオ兄様。巻き込んでごめんね!
「では、ヘンリーは私が抱いてお連れします。ヘンリーを離してください」
まだ子供だからか、王子殿下相手なのに喧嘩腰なのを隠そうともしないテオ兄様。
「いいや!ヘンリーは俺が連れていく!俺の茶会への招待なのだから!」
こっちは子供と言うか、全部自分の思った通りになると思ってる暴君殿下。
「王子殿下の御手を煩わす訳には行きませんから!」
「こんな軽いヤツが、御手の煩いになる訳ないだろ!」
「王子殿下に抱かれている所を他の人間に見られる訳には行きません!」
「何故だ!俺は従兄弟だぞ!抱いたって良いだろう!」
キャンキャン吠え合うポメラニアンの戦いに、パンッと乾いた音が響き渡る。
「言葉を差し入れる非礼をお許しください。お坊ちゃまが声のする方を向きますので、キョロキョロしてお首がもげそうです。」
真剣な顔のレイラに、ポメラニアン達は一斉に僕を見た。
「「ヘンリー!!!」」
いや、もげてないから首。そんな訳ないでしょ? でも、助かったレイラ。この2人、気が合うのか合わないのか、こうやって言い合い出したら 一刻は止まらないんだよ。
一刻は、僕が居た未来の世界で言う所の2時間。半刻が1時間で、小刻が30分。それより細かい単位は無いから、時間に対しての価値観も違うんだろうね、だいたいで動いてる感じ。未来の世界なんて、10分遅れただけで人格否定されるよ!
そうして、結局、暴君殿下に抱っこされるまま 王宮の馬車に乗って、やって来た 王子殿下が暮らす王子宮殿。ディラン伯爵家は王都の中でも王城に近い位置にあるから、一刻もあれば到着出来る。
道すがら、どっちが抱っこして連れていくかで ヤイヤイ言い合ってたけど、そこは暴君殿下。
”王子”の権力でテオ兄様を黙らせたよね、こんな事してるから『暴君殿下』って呼ばれるんだよ。全く……。
お茶会は色んな貴族との情報交換や、親交を深める為に定期的にやってるみたいで、それ用のサロンがあるんだって。未来の世界でもやってたなぁ〜、なんか懐かしい。
広くて煌びやかなサロンには、既にアシェル嬢が呼ばれていて、ご挨拶する。
アシェル嬢は、公爵家で王室と血が近いからか、美しい青銀髪の髪を背中まで垂らしていて、瞳は空色だった。貴族に多いのは濃い青色の髪に、白い瞳。王族は銀髪に蒼い瞳だ。
暴君殿下の容姿は前に言った通り、黒髪に紫色の瞳で、テオ兄様は普通の貴族(?)なので、青色の髪に白い瞳だ。庶民とかは薄い緑色の髪に薄い緑色の瞳。
魔力が影響してるのかな?未来の世界では、茶色の髪に茶色の瞳の人が多い。
「初めまして。私はアシェル・アードルフよ。アードルフ公爵家の長女です。仲良くしてね。」
アシェル嬢が暴君殿下とテオ兄様、それぞれと挨拶を交わした後、ふんわりとしたピンク色のドレスの裾を摘み、なんと膝をおって僕の目線に合わせて挨拶をしてくれた。
高貴な身分なのに、なんとお優しい…!無視されてもおかしくないのに! ははーん、なるほど。これは暴君殿下が夢中になる訳ですわ!!
ぺこりとお辞儀をすると、テオ兄様が代わりに挨拶をしてくれた。暴君殿下も僕の病状について、アレコレとアシェル嬢に言っている。
「まあ、何とか回復はしているようだが、こんなに小さいんだ、いつどうなるか分からんだろう。もしヘンリーにしてやれる事があるなら、やってくれないか?」
暴君殿下はアシェル嬢の木魔法で、僕を全回復させようとしてるみたいだけど、流石にそれは無理じゃないかなー。
「うーん、そうですわね…。」
「勿論、褒美は たんと用意する」
「いいえ、木魔法を使うのは私の仕事みたいなものですから、褒美は結構ですわ。そうでは無くて、ヘンリーくんはまだ体が小さいので、あまり大き過ぎる魔法を使うと体が耐えられない危険性があるんです。」
1口飲んだ紅茶をソーサーに戻しながら、アシェル嬢が言う。テオ兄様はずっと黙って、2人の話の行方を伺ってるみたいだ。
「そうなのか?このままでも、木魔法をかけても危ないと?!」
なんて事だっ と言わんばかりの絶望顔をする暴君殿下に、本当に人の話を聞かないな〜と呆れる僕。
「ヘンリーくんは、少しずつ回復していると見受けられます。歩けるようになったのが、何よりの証拠。このまま様子を見て、勿論 悪化する様なら木魔法をかけた方が良いと思いますが」
「ふむ…、分かった。これからは更に、まめに様子を見に行こう」
神妙な顔で頷く暴君殿下。
「それは私がする事ですので、王子殿下のお気遣いは不要です」
すぐさま反応するテオ兄様。
「だが、聞いただろう!ヘンリーの様子を把握しないと…!」
「だから!それは家族である私の仕事だと言っているんです」
「なにお〜!家族じゃ無かったら心配する事も出来ないのか!俺は従兄弟だぞ!」
「王子殿下は帝王学を習得されるのに、お忙しいでしょう!」
「それが何だ!ヘンリーに会う時間くらいある!」
「いいえ…」「なにをっ…」と口喧嘩を始める暴君殿下とテオ兄様。口喧嘩の中心が僕で、申し訳ない気持ちでいっぱいだ…。と言うか、他所で僕と従兄弟とか言いふらさないで欲しい。アシェル嬢もポカンとしているし、もうこの辺で勘弁して下さいいいいい。
「ふっあはっ…あはははっ」
ツボったのか、2人を見て笑い出すアシェル嬢。
「ごめんなさい、はしたない真似をしてしまいましたわ…でも、うっうふふっ…」
今度は暴君殿下とテオ兄様がポカンとする番だ。ここが王子宮殿のサロンだと思い出しましたか?ふぅ。
「私、幼い頃からジェームス殿下と仲良くさせて頂いてますが、こんな風に言い合う姿を見たのは 初めてですわ」
「そっそれは…!お、俺だって普段はこんなじゃない!コイツが…」
慌てて言い訳する暴君殿下。お顔が真っ赤ですよ。
「へえ、私がなんですか。私は至極真っ当な事しか言っておりませんが。」
また冷ややかな瞳になってますよ、テオ兄様!
「うふふ。ジェームス殿下、こうやって交流出来る方が居るのは、とても良い事ですわよ。普段の貴方は、少し 心配ですから…」
「ふん、俺はそうは思わないが…。まあ何だ、君がそこまで言うならそうだな、テオドールと少しだけなら仲良くしてやっても良い」
控えめな音量でボソボソ言う暴君殿下。本当にアシェル嬢に弱いですな。それより、暴君殿下の言葉を受けて、「お断りです!」と言う訳にもいかず絶望顔のテオ兄様。それを見て また笑い出すアシェル嬢。
そうやって、思ったよりも和やか(?)にお茶会の時間は過ぎて行きました。良かった。
「ほら、ヘンリー」
テーブルに沢山並んだスイーツの中から、小さいケーキを取ってくれる暴君殿下。優しい。
「王子殿下、それはどうぞ 貴方が召し上がって下さい」
パッと手を出して遮るテオ兄様。ええっ?
「毒なぞ入っておらんぞ!」
「それはそうでしょうとも。」
「なら、ヘンリーにやっても良いだろうが!」
「今日はもう甘味を食べておりますので。栄養素にも気を配らねばなりませんから!」
確かに、薬湯を飲んだ後、ご褒美スイーツ貰いましたけども〜!でも、折角の機会だから、それも食べたいよ〜!
「ケーキひとつくらい構わんだろ!」
「伯爵家では用意するのが難しいスイーツですので、舌が肥えても困りますから」
「なら、俺に寄越せば良いだろう!ヘンリー、毎日凄いスイーツを食べさせてやるぞ?」
いやいやいや、何言うんですか!暴君殿下〜!
「ヘンリーは物ではありません!!」
ほら、テオ兄様が怒った〜!
「お前にはもう一人弟が居るんだから、別に良いだろう!」
「それを言うなら、王子殿下にも妹君が居られますよね!」
「腹違いじゃないか!!!」
「ヘンリーだって同腹じゃ無いでしょう!」
また始まってしまったポメラニアン達の口喧嘩。アシェル嬢はずっと笑ってるよ。
結局、「折角だから、ひとくち位は良いんじゃないかしら」と言ってくれたアシェル嬢のお陰で、チョコレートケーキを食べる事が出来ました!
アシェル嬢は正義!この世界で砂糖も貴重だけど、チョコレートの元になるカカオも貴重なんだよね〜!だから、チョコレートケーキは王家でしか食べられない!
ふわふわのスポンジに蜜漬けのイチゴが挟まってて、外側はつやつやのチョコレートで コーティングされてる。お口に入れると甘い味が広がって、すぐに溶けちゃう!美味しい!鼻から抜ける香りも良いよね〜!本当に美味しい。
もぐもぐ食べる僕を じっと見つめるテオ兄様。大丈夫!またこれが食べたいなんて言わないよ!スイーツよりも、ディラン伯爵家の方が好きだからね!むふん。
それから、アシェル嬢にまた会いましょうってご挨拶して、暴君殿下には あまったケーキとかを包んで貰って、大満足で帰宅した僕なのでした。
テオ兄様は難しい顔してたけど、美味しいスイーツのお土産もあるし、帰ったらみんなで食べようね〜!楽しみ。