幽閉生活
おはようございます、ディラン伯爵家の三男 ヘンリーです。
僕とジェームズ王子殿下の獄中生活が始まりました。
と、言っても、本当に地下牢に入ってる訳じゃなくて、王城の隠れた一角にあるお屋敷に住んでます。王様の許可が無い人は立ち入れない所だよ!
周りは高い塀で囲まれてるけど小さな庭も有るし、二階建てで お部屋数も結構有るよ。ここには、世話をしてくれるメイドさんと護衛の人達も一緒に住んでます。シェフも居るから美味しい食事も出て来るよ!
ただ、侍従を連れて牢屋に入る訳にはいかなかったみたいで、ジェームズ王子殿下付きのファーニーさんはここには居ないんだ。僕も『行方不明』って事になってるから、レイラと一緒に来れなかったの。残念。目が覚めてこの世界に来てから ずっとレイラが傍に居たから寂しいよ。
きっとジェームズ王子殿下も寂しいと思う。ファーニーさんとは五歳からの付き合いだって言ってたし。でも、ファーニーさん自身は全然良い人だと思うんだけど、鑑定した結果、僕と同じ『転生者』って記述があったから、一応 警戒した方が良いと思うんだよね…。ファーニーさんのジェームズ王子殿下へ対する思いやりは本物だと信じたいけど…、女神の使者が動いてる以上 どんな事も、疑ってかかった方が安全だよね。
僕達は、生きる権利を勝ち取らなくちゃいけないんだから。
ジェームズ王子殿下の怪我は大分 治ってきて、体の鍛錬を開始した。僕はこの世界に来てから、大怪我してたせいもあって 一日中ベッドで過ごす事にも慣れてるんだけど、ジェームズ王子殿下には暇みたい。朝昼晩と体を動かしてる。それ以外にもお勉強もしてる。そんなに詰め込んだら疲れちゃわないかなって思うけど、これでも暇な方なんだって。”王子殿下”って忙しい生活してるんだねぇ。
僕は朝ごはん食べて、お庭で日光浴して、お昼ご飯食べて、お昼寝して、オヤツ食べて、お絵描きして、夜ご飯食べて寝ると云う、どんなニート?!って生活をしてる。
一応さ、お勉強もしてるよ? お外歩いてみたりとか。ステラ5つ持ちのせいか割と体力は有るから、無詠唱でジェームズ王子殿下に強化魔法かけたりしてる。でも、解るのか すぐ困った顔される。無闇に使うなって言われてるもんね、でも 少しでもお役に立ちたいし、ただ見てるだけって暇だしさ。
「ヘンリー、オヤツにしようか。」
お庭で火魔法の練習をしてたジェームズ王子殿下が、こっちにやって来た。汗だくだ。まずは体を拭かなきゃですね。控えていたメイドさんが ささっと汗を拭いて新しい上着に着せ替えてる。もう大分涼しくなって来たから風邪ひかないようにしなきゃね。ひょいと僕を抱っこして、室内のソファに座ると、違うメイドさんがワゴンを押してお茶の用意をしてくれる。
「今日はイチゴのゼリーか、ヘンリーの好物だな。」
オヤツを見て、僕にウィンクするジェームズ王子殿下。誰の意向なのか分からないんだけど、いつもイチゴを使ったオヤツが出る。イチゴは僕の好物だし、城下町の特産品でも有るから、毎日出ても全然オッケーなんだけど、イチゴを使った毎日違うオヤツを作るって、シェフは大変なんじゃないかな〜って、少し心配。
ジェームズ王子殿下が食べてから、僕が食べるのが普通なんだけど(偉い人から食べる)、ジェームズ王子殿下はオヤツをスプーンで掬うと、まず僕に食べさせる。「あーんだぞ」なんて言われると、ついつい口を開けちゃうよね。一緒にご飯も食べるし寝てるし、”不敬”って何だっけ?状態だよ。
でも、食べてる僕より幸せそうなお顔するから、僕ももっと幸せなお顔になっちゃう。おいちい。
ここに居れば安全なのは分かるけど、一生こうしてる訳にはいかないからね、ここでも何か出来れば良いんだけど…、お外の事はまだルーカス王子殿下やテオ兄様ティム兄様達に任せるしかない。ジェームズ王子殿下もそう思ってるのが解るから歯痒いよね。
オヤツを食べて、お紅茶を飲んで、ソファでまったり。時々、ジェームズ王子殿下が僕の髪を梳いている。
「ヘンリーの髪は綺麗な銀髪だな…、母上と良く似ている…」
ポツリとそう零すジェームズ王子殿下。
ジェームズ王子殿下の母上も、綺麗な銀髪の方みたい。銀髪は王家の象徴とされる髪色だけど、婚姻を繰り返してるから 公爵家にも良くある髪色なんだ。僕の母上は、ジェームズ王子殿下の母上の妹で、姉妹だけど、僕の母上は青みが強かった。ヘンリーがまだ幼かったせいか母上の記憶はあまり無い、それともあの馬車事故で記憶が飛んじゃってるのかな? だから、僕が知ってるヘンリーの母上の記憶は、大怪我を負いながら こちらに向かって手を伸ばす あの姿だけ…。
聞いた話だけど、ジェームズ王子殿下の母上は、魔力暴走を繰り返す息子とは距離を置いていて、あまり会った事が無いんだって。それに、元々は陛下の婚約者だったのが、隣国との和平の為に嫁いで来た姫の為に、側妃になる事になって 思うところも色々あるのかも知れない。
ジェームズ王子殿下は言わないけど、やっぱり寂しいんじゃ無いかな…。
でも幼い頃、その魔力暴走で怪我をさせちゃった事があるから、会うのも怖いんだと思う。切ないね。だから、僕の髪で良ければ いくらでも触るが良いさ…。
「ヘンリー、少し散歩に行こうか?」
なでなでタイムが終わって、ジェームズ王子殿下がお外を見ながら言う。さっきまであんなに体を動かしてたのに、本当にタフだよね。勿論、お供しますとも!
そんなに広い庭じゃ無いから、グルっと一回り出来ちゃうんだけど、僕とお手てを繋いでトコトコ歩くにはピッタリの広さ。ジェームズ王子殿下の一歩が僕の五歩分くらいあるしね。ゆっくりゆっくり歩いて、たまに立ち止まって、虫がいるのを観たり、風の匂いを嗅いだり。なかなか良い運動になるんですよ、まあ、僕だけだけど。
汗ばんだ僕のおでこをジェームズ王子殿下が布で優しく拭いてくれる。こんなに甲斐甲斐しく面倒見てもらって良いのかな?ジェームズ王子殿下、一国の王子様なんですけど。
「ジェーちゃ、ありあと」
「フフ」
僕がお礼を言うと嬉しそうに笑うジェームズ王子殿下こと、ジェーちゃ。本当は『ジェームズ王子殿下』って呼びたいんだけど、僕のお口はあんまり動かないのよね。歳のせいも有るかもだけど。
最初にこの世界に来た時は、暴君暴君って呼んでたけど(心の中で)いつの間にか『ジェーちゃ』だもんねぇ。感慨深いな…。
ジェーちゃもねぇ、最初に比べたら 本当に柔らかくなったよね。こんな風に笑う事なんて無かったもん。ごらん?メイドさん達が はわわってお顔を赤らめてるよ。
こんなイケメンに抱っこされて、甲斐甲斐しく面倒みてもらってるなんて、断罪前のご褒美とかじゃないよね?って不安になるよ。
「ヘンリー、疲れただろう。夕飯の前に少しお昼寝しようか」
「はぃ」
なんか、良いお父さんみたいなジェーちゃ。体力はあるけど、習慣になってるからか ”お昼寝”って聞くと、途端に眠くなっちゃう。抱っこされたままベッドに運んでもらって、一緒にねんねするのでした。
「……………」
んん?話し声がする…。
一緒にお昼寝してたジェーちゃが体を起こして、誰かと話してる。僕は枕に埋まった頭を声のする方に動かして、お目目をゴシゴシ擦った。クッションを背中を預けて、メイドさんと何か話してるジェーちゃ。手紙?かな、それを持ってる。
「ん、ヘンリー、起こしてしまったか?すまん。」
僕に気付いて、眉毛を下げる。僕は頭を振って、起き上がる。ジェーちゃが持ってる手紙を見ると、軽く振って見せてくれた。
「これが気になるか?……これは、俺の母上からの手紙だ」
えっ? ジェーちゃの、あのお母さんからですか?
へぇー、距離置いてるって聞いてたけど、手紙のやり取りはしてたんだねぇ〜。と関心してると、
「…実は、初めて母上から手紙を貰ったので、少し動揺してしまってな…」
初めてだったんか〜い! 照れたお顔から察するに、悪い知らせじゃ無いんだよね?
「ヘンリーは、文字は読めるかな?」
そう言って手紙を見せてくれる。ヘンリーは読めないかも知れないけど、僕は読めるよ!なんたって、元十八歳だからね。どれどれ?
『私の愛する息子 ジェームズ。
私からこんな手紙を受け取って、さぞや驚いている事でしょう。本来であれば、側妃と云えども、もっと親交を深める事も出来たのです。今の貴方なら理解してくれると思いますが、私の置かれている状況は決して楽観視出来るものではありません。
勿論、何不自由無い暮らしをおくらせて貰っていますが、私が貴方と懇意にする事で、要らぬ派閥を刺激したくなかったのです。
今更、何を言ったとしても言い訳にしかなりませんが、貴方を愛する気持ちは何一つ変わりません。
もし、貴方が断頭台に登ると云うのなら、私が先に登ります。貴方だけを逝かせたりしません。』
それは、怒りすら伝わってくるような、母の愛が込められた手紙だった。
そうか、ジェーちゃの母上は、息子が暴走して牢屋に入れられ、その先には処刑もあると見越してこの手紙を寄越したんだね。自分も一緒に逝くなんて、覚悟が無いと言えないよ。
でも…信じて良いんだよね?今まで交友が無かったからって、ジェーちゃを騙そうとする奴らの偽書じゃ無いよね?でもこんな事言う必要はないか…何かを要求するなら兎も角、一緒に死ぬって言ってるだけだし。
疑り深い?だって、ジェーちゃったら瞳を潤ませて、何度も読み返してるんだよ?これで手紙が嘘でした〜なんてなったら、僕が暴走しそうだよ!
「ジェームズ王子殿下、もう一通、お手紙が届いております。」
部屋に入って来たメイドさんも、お手紙を届けに来たみたい。誰からだろ。
「…アシェル…」
ポツリと呟くジェーちゃ。おお!あのアシェル様から?隣でワクワクしてると、読み終わったジェーちゃが手紙を見せてくれた。見たがる僕が言うのも何だけど、全部見せちゃって良いのかな?ハハ…。
『ジェームズ王子殿下
地下牢の住み心地は如何ですか?さぞや退屈しているとは思いますが、貴方は日頃から頑張りすぎなのです。ここで少し、ゆっくり休息するのも良いと思います。そこから出たら、とっても忙しくなると思いますので。今は、可愛らしい婚約者と共に穏やかな生活を。』
ブハッ。こ、婚約者…?それってまさか、僕の事…?
ヤダなぁ!アシェル様っては冗談が過ぎる。
ジェーちゃは、アシェル様が好きなんだよ〜。まあ、アシェル様はルーカス王子殿下の婚約者なんだけどさ。
「…………」
ほら!何とも言えないお顔してるじゃん!ジェーちゃ。でも、アシェル様への想いを拗らせて王位簒奪を目論むのも不味いから、こうやって小出しに距離を取ってくれるのは有り難いよね。
何だかんだってジェーちゃの事を気に掛けてるし、もしかしたらアシェル様はルーカス王子殿下よりもジェーちゃの方が好きかも知れないよね。好きとか嫌いとか関係無く婚約は王家の意向だし、そう言えば、歴史書でジェームズ王子殿下がルーカス王子殿下を下して王座に座った時、アシェル様はジェームズ王子殿下と婚姻を結び直して王妃となって、子供まで産んでるんだよね。
勿論、国民や色んな事情があったんだと思うけど、もしかしたら根底にジェームズ王子殿下を想う気持ちがあったから、受け入れやすかったのかも…なんて想像するのは失礼かな?
「…まったく、婚約者なんて…気が早過ぎる……」
え?なんて? 僕がアシェル様の想いを勝手にアレコレ想像してたら、ジェーちゃがお顔を赤らめてブツブツ言ってる。良く聞こえないな。
ちゃんと聞こうとジェーちゃの腕に頭を寄せると、ジェーちゃが ハッとして首を振った。
「いや!違うぞッ…決して嫌とかそう言う事ではなくてだなっ…純粋に、まだ早いとッ……!」
んん?何のお話?首を傾げる僕。微笑むメイドさん達。
結局、ジェーちゃは返事を書くと言って そそくさと隣の部屋へ行ってしまった。僕もテオ兄様とティム兄様にお手紙書きたいな〜、でも、書くのに時間かかるし、僕からお手紙貰っても喜ばないかもな…。それにブラックシャドウ?だっけ、第二王子激アンチグループの事で忙しくしてるから、読む暇も無いかも。
コテン、とベッドに横になる僕。
「ヘンリー様、お兄様達からお手紙が届いておりますよ。」
軽く拗ねの体勢の僕に、声をかけてくれるメイドさん。
「えっ、お、おてがみ?」
「ええ、そうです。重いので気をつけて持って下さいね。」
そう言うと、パンパンに膨らんだ封筒二つと、義父からの綺麗な手紙を渡される。ジェーちゃの母上とアシェル様の手紙とかと一緒に届いたんだって。
特にテオ兄様の封筒…手紙?が凄い。厚みが五センチは有りそう…。先に義父の手紙から読もうかな!
そして、長い時間をかけて、家族からの手紙を読んだ僕。要約すると、僕の心配をしてるって内容でした。ここに居れば安全な筈だけど、それでも良くよく警戒する様に、とか。ちゃんと勉強しなさい、とか。ジェーちゃの言う事を良く聞いて、危険な行動はしないように、とか。
ヘンリーはディラン伯爵家の誰とも血が繋がっていない。既にお腹の大きな母上を受け入れたディラン伯爵。産まれてからも、母上の意向で交流が無かったから、こんな風に心配されるなんて、あの頃は想像も出来なかったよね…。ニコニコキャンペーン頑張って良かった…。
これからも僕は、皆と仲良く暮らしたいよ。
良し!先ずはお返事を書かなくちゃね!凄ーく時間はかかるかも知れないけど、待っててね♡
そして、僕も隣の部屋に向かうのでした。
◇◇◇◇◇
「心配だ……」
「テオドール兄様、もう寝る時間ですよ。」
ディラン伯爵家の執務室。兄弟は向かい合って書類の確認をしている。
「そう言うお前こそ、早く寝なさい。」
「僕は、昼間に自由になる時間がありますから。テオドール兄様は、もうずっと寝不足でしょう。いい加減、体を壊しますよ。」
兄弟だけでは無く、父親もココ最近はずっと動き回り寝不足が続いていた。と云うのも、ある騒ぎが起こり第二王子が牢に入る事態に陥ったからだ。
元々、第一王子派と第二王子派は対立していた。
何処の国でも王権争いは付き物だが、隣国の血が入る第一王子よりも、純血な第二王子の方が王座に相応しいと言われていた。それが揺らいだのは、魔力が大き過ぎる故に暴走を繰り返す第二王子が危険視されたからだ。第一王子派には隣国から移住して来た人や、隣国と懇意にしている貴族が多い。もし、第二王子が王座に座り 隣国との繋がりが薄れてしまえば、和平によって停戦していた戦が復活する恐れもある。
対して第二王子派の言い分は、側妃は元々陛下の婚約者として王妃教育を幼い頃から受けた身であり、血筋も正統。和平停戦が無ければ王妃になっていた人物で、その現状でもこの国の為に力を尽くしている、その息子は王に成るべき、と云うものである。婚約者として選ばれる以前から、力のある貴族達が後ろ盾となり、王妃と成った暁には美味い汁を啜るつもりだったのだろう。それが崩れてしまっても、まだ息子に期待をかけているのは一目瞭然だった。
こうして、それぞれの思惑が複雑に絡み合う中で、陛下は『王太子』を指名するのを躊躇っていた。どちらを選んでも火種になる。もう少し、情勢を落ち着かせなくては、血を見る事になりかねない。
そうして静観している内に、第一王子派が大きく動いた。
第二王子の醜聞を作り上げたのである。
それに協力したのは、何と中立を主張する筈の『教会』だった。完全に寝耳に水の事態に王城は揺れた。
影と呼ばれる王家に忠誠を誓った特殊部隊を使っても、全体像を把握するのに時間を要した。報告によれば、第二王子の従者を名乗る者が、王子殿下に不敬を働いた罪だと言って、他の従者を鞭打ちの刑にかけたと云う。身に覚えの無い罪に、その者は当然抗議したが、それすらも『不敬』として、瀕死になるほど鞭打たれた。
そして、教会に運び込まれ、治療を施されたが、事の経緯を聞き取った治癒士が『非人道的だ』として、文官に申し出た。勿論、文官はキチンと調査すると返したが、その後も立て続けに、怪我人が教会に運び込まれる。その人数十三人。
余りの事態に官所は混乱した。治癒士は、あっという間に調書を纏めると陛下に告発した。重傷者が出ている事、第二王子の従者が事を行った事、詳しく調べる前にその話が市井に出てしまった。これでは直ぐに手を打たなければ、王政批判にもなりかねない。勿論、それが狙いでわざと噂を流したのだろう。
丁度、王城に上がっていたディラン伯爵と話し合い、仕方なく第二王子を牢に入れる事になった。
この手際の良さは、最初から計画されていたのだろう。元々、魔力暴走を度々起こしていて、良く思わない者も多かったのだ、これで第二王子の評判は地に落ちる。
影を使って探らせてはいるが、王家から程よく遠いディラン伯爵家の力を借りれる事になったのは、陛下に取っては僥倖といえよう。近い貴族達では既にどちらかの派閥に入っているので、足元を掬われる危険がある。
その為、勿論第二王子の為だけでは無く、ヘンリーの為にディラン伯爵家は一丸となって捜査にあたっていた。教会から提出された調書の再確認、該当の人物の洗い出し、やる事は多岐に渡る上に、ブラックシャドウは大胆で行動が素早い。これ以上後手に回るのは危険だ。
懸命に糸口を辿ろうとすればする程、その糸は切断される。最初からそのつもりだったのだろう、”第二王子に命令されて私刑を行った”と告発書を残して、鞭打ちを施行した第二王子の従者を名乗る者は既に消えていた。
先手を取る為、テオドールは寝る間も惜しんで捜査にあたっているが、そもそも、どうして中立だった『教会』が、第一王子派になったのかが疑問だった。アシェル嬢が告げ口をしてくれなければ、ジェームズ王子殿下は本当に地下牢に入る事になっただろう。そうなれば、裁判を待たずに暗殺される可能性の方が高い。匿う事が出来て本当に良かった。
しかし、安心は出来ない。第二王子だけでは無く、ヘンリーの命も狙われているのだから。今のところ、『行方不明』を押し通しているが、いつ露見するか分からない。
テオドールは『教会』に焦点を絞って、再度、詳しく調査する事にした。




