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第67話 力を貸してください

「まぁ大雑把にはなるけど、ざっくりとでも見積もろうぜ。そんで見積もった分より多めに考えときゃ何とかなるだろ。……えーっと? その上級って方々は、自分の体ひとつ、大体どれくらい浮かしてられるもんなんだ?」


 大体でも見当をつけなければ埒が開かないと、ロジェはさくさくと話を進める。


「浮かすだけ? 飛行はしないのなら……、丸一日くらいは大丈夫だと思うわ」

「おっとすげぇ、一日か……、魔力を回収されない場合の成人の平均浮遊可能時間は確か五時間十何分とかだから……、その上級って方々の魔力は多めに見積もって現代人の五倍ってことになんな」

「お前……その無駄な知識はどこから……」

「はは、無駄になってねぇんだからその言い草はねぇだろ。てことで、今の成人の平均魔力量が五百三十マジュールだから、それの掛ける三十五人分だ」


 ユーグと軽口を交わしながらロジェは結論をエリックに伝える。

 エリックは眉間にしわを寄せた。


「五百三十マジュール掛ける三十五……」

「どうだ?」


 窺うようにロジェは尋ね、目を閉じてぶつぶつ呟くエリックの結論を周囲は息を呑んで待つ。


「…………」


 エリックはゆっくりと目を開いた。


「よし、それくらいなら、何も分配所の馬鹿でかい魔蓄機(タンク)でなくても、非常用の魔蓄機(タンク)でなんとかなるぞ」

「おっ、いけそうなのか?」

「非常用の魔蓄機(タンク)?」


 警護屋の双子の問いかけにエリックは大きく頷いた。


「基準以上の建物には、急な供給停止に備えて、復旧するまでしのげるように非常用の魔蓄機(タンク)を設置する義務があるんだ。家族型(ファミリータイプ)で三十世帯以上の集合住宅なら、その足りない魔力分以上の容量の魔蓄機(タンク)の設置義務があるはずだ」


 エリックの宣言にその場の誰もが顔を輝かせた。


「すっげえ、やるなおっさん!」

「非常用の魔蓄機(タンク)なんて、そんなものあったのか」

「君がマジュール量を計算してくれたおかげだ」

「いやいや、アイデアはあんただよ」


 ロジェは得意げな顔をしつつもエリックの手柄を強調する。

 そばで聞いていたノエルとリズも顔を見合わせて喜んだ。


「おじさん、なんかその道のプロみたいでびっくりだ」

「ほんとっ、お父さんはお父さんだと思ってたのに娘のあたしも驚いた!」

「おい二人とも、俺は一応プロだぞ? のんびり店やってるだけじゃないからな?」


 ノエルとリズの半分茶化しを入れた称賛の言葉に気を良くしたエリックは、にやっと笑いながら二人の頭をくしゃくしゃと撫で付ける。

 ロジェが大きく声を上げて笑い、ノアも子供たちの笑みを見て微笑んだ。

 サラも安心したように小さく笑みを浮かべている。


「そんじゃ、それは術車があれば運べる大きさなんだな?」

「あぁ。大型の荷術車ならいけるだろう。積み込みも大人が二人もいれば大丈夫なはずだ」

「この非常事態だ。免許もへったくれもないよな?」


 双子は顔を見合わせて笑っている。どうやら運転はできても都市発行の免許はないらしい。


「なぁ、サラって言ったよな?」


 ノエルはサラに声をかけた。


「えぇ」

「都市の外……人のいないとこに魔蓄機(タンク)を持ち出せるなら問題ないんだよな?」


 幸先の良い滑り出しに喜びはしたものの、ぬか喜びではないことを確認をしようと、ノエルはサラに静かな声音で質問を投げかける。先ほど都市では迎え討てないと問題点を指摘されたばかりなのだ。


「ええ」


 サラはしっかりとそう答えた。


「なら……ルイは、助かるんだな?」

「ええ」


 もう一度、サラはそう答えた。

 そして体の向きを変え、その場にいる全員に視線を送る。


「アスカを……ルイを、必ず生きて帰したいんです。お願いします、どうか力を貸してください」



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