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第50話 すげぇ近所の子だな

「お兄ちゃん!」

「……シーラ?」


 幼い少女がノエルたちのテーブルのすぐそばに一人佇んでいる。

 名前を呼ばれてシーラは笑みを浮かべた。


「探してたお兄ちゃんは見つかった?」

「あ、あぁ、見つかったよ」


 ノエルは立ち上がり、シーラの前にしゃがんで視線の高さを合わせ、その頭を何度か撫でる。


「シーラが教えてくれたおかげだ。ごめんな、お礼言うの忘れてた。ありがとう」

「ううん、いいよ。見つかって良かったね」

「あぁ、良かった」

「かくれんぼ。全然見つからないの、すごくつまらないもんね」

「あぁ……うん、そうだな」

「お兄ちゃん今日は? またかくれんぼ?」

「いや、今日はかくれんぼじゃないんだ。大丈夫だよ。心配してくれてありがとうな」


 シーラと会話をするノエルをリズは後ろから見守るように見つめ、警護屋の双子は苦笑交じりに眺めた。

 自分たちには子供と同じ目線で会話をすることなど到底できないという自覚があるからこその苦い笑いだ。


「ふーん。楽しいのに、かくれんぼ」

「そうだな。楽しいな」

「そうだよね、楽しいよね」


 にこっと笑ったシーラがノエルの腕を掴んだ。


「じゃあ、今度はお兄ちゃんたちが探してもらう番だよ」

「え?」

「そのお姉ちゃんと三人で仲良しなんでしょ? 探してくれるよ」

「え、いや、シーラあのな……」

「楽しいよ?」

「いや、ルイは忙しいから、今はオニにはなれないんだよ」


「あはは。なれるさ。大事な友達に手を出されたって知ったら、きっとオニみたいに怒るんじゃないかな」

「……シーラ?」


 目の前の幼い少女が話す内容に違和感を覚えたノエルは、浮かべていた笑みを消した。

 掴まれている腕がぴくりと強張り、全身に緊張が走る。


「シーラじゃ、ない、のか……?」

「シーラだよ。体はね」


 言葉と同時に腕に鋭い痛みが走り、ノエルは腕を引こうとした。

 しかし、少女の腕はぴくりとも動かない。

 幼い子供の力で有り得るはずがなかった。


「なんだお前っ!」

「ノエル!」

「そいつを離せ!」


 双子とリズが事態の急変に慌てて立ち上がる。

 警護屋が対抗の為に武器になるものを手探った間にリズはノエルに駆け寄った。

 ぎりぎりとノエルの腕を締め上げる少女の手を外そうと、その手を掴む。


「馬鹿だな、お前」


 冷たく見下したような声音で少女が呟く。


「一緒になって捕まりにきたのか」


 ふいに体が傾き、リズはノエルにしがみ付いた。

 だが体は地面に倒れ込むことなく、何かに受け止められる。

 ノエルも同じであった。


「何だこれ……おい!」


 それに手をついて、ノエルはシーラの姿をした者に叫ぶ。

 大きな泡玉の中にノエルとリズはいた。

 だが見た目が泡玉だとしても、簡単に壊れそうにないのは明らかである。

 ノエルが手を付いて叩いてもびくともしないのだ。


「なに……っ、何なの……!」

「笑ってんじゃねえ! シーラをどうした!?」

「慌てなくていい。僕の精神の一部をこの子の中に入れてるだけだ。僕が出て行けばちゃんと元に戻る」


 肩をすくめてみせた少女の口調に、ノエルは顔を引きつらせる。


「お前……昨日の、……ルイの兄貴とかいう……」

「ふうん。あいつ俺が兄弟だって話したのか? 隠すと思ってたんだけどな」

「ふざけんなよ! てめっ、何のつもりだ! 出せ!」

「こんな得体の知れない相手に向かって、……怖いもの知らずだな」


 何の含みもなく笑っている様子だけ見れば子供が無邪気に笑っているように見えなくもない。

 だが明らかに異常な事態に警護屋の双子は破魔の武器を構え、じりじりと左右に移動を始める。

 できれば兄弟で挟み撃ちの位置にもって行きたいという姿勢だ。

 しかし。


「話を聞いていたか? 僕が出て行けばこの子供はちゃんと戻るんだぞ?」

「……し、信じられるか! 何もんだおめぇ!」

「さっさとそいつらを出せ! でなければ攻撃する!」

「やめろ! やめてくれ!」


 泡玉の中からノエルが声をあげた。


「やめろだと!? こんなわけの分からん奴を庇うのか!?」

「近所の子なんだ! 小さい時から知ってる子なんだ!」

「おっまえ、すげぇ近所の子だなぁオイ!」


 警護屋の二人とノエルのやりとりを、シーラの中でスティアはのんびり聞いていた。

 話がどちらに転んでもスティアは一向に構わないのだ。


「ちがう……! あ、操られてるみたいなんだ……! 取り憑かれてる! それをあの子から追い出してくれ!」

「はぁあ!? ンなわけわかんねぇこと出来るか! 俺たちゃ警護屋だぞ!」

「その取り憑いてる奴は魔物なんだよ!」

「おいっ、人の言葉喋る魔物がいるのか!?」

「いるよ?」


 明るい少女の声が響く。


「魔族のことだろう? この時代じゃ全然姿を見せないみたいだな。人の世に干渉しなくなったのか、数が減ったのか、どうでもいいけど」


 ほんの僅か悲しそうな表情を見せる少女の感情をそのまま受け止める気には誰もなれなかった。


「ノエ、ノエルっ、シーラちゃ、どうしよ」

「落ち着けリズっ、大丈夫だ、何とかする、するからっ」


 根拠など何もなかったがノエルにはそう答える以外にすべがない。


「ははは。何とかするのはお前じゃないだろう」

「……っ」

「アスカだ。お前たち二人がどうも大切ってやつみたいだから、こうすればどうなるかと思って」

「…………」

「さてと。目立つところに移動しようか」



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