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第20話 他人に興味ないのかと思ってた

「弓まで使えるのか……」


 警舎の正面入口の階段を降りたすぐのところで矢を射ながら、おれは独り言を呟いた。


 外に群れている魔物たちを見て、遠距離攻撃手段があればいいなと思ったのがキッカケである。

 昨日は近距離戦闘しかしなかったけれど、遠距離から攻撃すれば戦い方が広がるかも知れないと思ったのだ。

 そうして、なんかできそうな気がするなとやってみたのが、魔力で弓を具現化させ、魔力の矢で魔物を射抜くという芸当である。


「いやまじで化け物じみてきた気がする」


 これはもしかしたらノエルたちも、ドン引きくらいはするかも知れない。


 そんなことを考えながら魔物たちに攻撃を続けていたら、数が半分ほどに減っていることに気が付いた。


「これならあとは直接でいいか」


 さっきまでは、正直囲まれたら面倒そうだなと思う数だった。

 だけど今はもう、囲まれたとしても問題なさそうだ。


 遠距離攻撃はとても便利だったけれど、矢をつがえて引くという動作がある分、効率は悪い。

 おれが来るまで戦っていた警護屋の人の銃なら、そんな予備動作も要らず効率は良かったかも知れないが、魔力で銃を具現化するのは絶対無理という謎の自信があった。


「この、できるできないの感覚が謎にあるの、なんなんだろ」


 考えていても仕方がないので、おれは地面を蹴って魔物たちと距離を詰める。


 猿みたいな姿の魔物だ。

 昨日は犬や狼みたいな見た目でそれなりに動きも素早かったが、今日の相手はあまり素早いタイプではなく、攻撃は簡単に相手を捉えた。


 昨日と同じく、手の平で魔力を高圧縮させ、それを魔物に叩き込んだ瞬間に弾けさせる。

 単純な作業だけれど、具体的にどういう理論でそれをやってのけているのかが、おれには説明ができない。


「でも魔物には、単純な魔力相殺が一番効率いい……んだよ、たぶん」


 独り言が多くなっているなぁとは、自分でも思う。

 だけど言葉を口にすれば、多少思考の整理ができる気がするのだ。


「雑魚ならそれで生身の維持ができなくなって死ぬし……」


 もし、精神体で存在を維持できるクラスだったとしても、精神体になった時点でかなり弱っているので放っておいても逃げていくだろう。

 また生身を維持できるようになるまで時間もかかるはずだし、それ以上深追いする必要もない。


「なんでそんなこと知ってるんだ」


 まぁたぶん、普通に考えたら記憶を失う前の自分が知っていたんだろう。

 何かのキッカケで、中途半端に知識だけ思い出したのだ。

 そのキッカケが例の頭痛なのか、魔物に襲われたことなのかはハッキリしないけれど。


「あぁ、でも」


 物を壊れにくくする呪文、というのがいまだにさっぱり分からない。

 使えるだろうという、例の確信が全くない。


「これじゃ、先生は認めてくれないんじゃ……」


 補強呪文ができなくて先生に説教されたのは、つい昨日のことだ。

 なんかもう遠い過去のような気がするけれど。


「だいたい、呪文も唱えてないし……」


 実技が駄目ならばと、座学は必死に勉強したので、呪文は覚えている。

 案外、唱えてみたらうまくできるかもしれない。


 あとで時間のある時にやってみる価値はあるだろう。


「だけどまぁ、次の基礎魔法の授業は、当分先だよな」


 学校の授業が再開されるには、この状態からまず日常に戻る必要がある。


 ――ギィッ ギギッ


 最後の一匹が霧散したのを見届けて、おれは両手を膝について息を吐き、呼吸を整えた。


 体力的な疲れというよりも、意味の分からない状況に対する精神的な疲労の方が大きい気がする。

 頭痛は寸でのところで頭の奥に留まっているようだった。


「あんた、魔法力ゼロなんじゃなかったの……?」


 魔物がいなくなった通りに、聞き覚えのある声が響いた。


 振り返ると、正面玄関前には、小さな人だかりができていた。

 魔物退治のために外にいた人たち以外も混ざっている。


 その中に一人、見知った顔の相手がいた。


「……君、は」


 基礎魔法の授業で、友達に囲まれて、楽しそうに話をしていた――


「ナタリア?」

「……あんた、あたしの名前覚えてたの」


 意外そうに、そして不審感いっぱいの眼差しで、ナタリアはそんなことを言った。


「なんで……覚えてるよ」

「他人に興味ないのかと思ってた」


 言われた言葉の切れ味はかなり鋭い。

 どう返していいものやらと口篭っていたら、人だかりの後ろがうるさくなった。


「ちょ、通してくれ! どいて!」

「お願いします、通して!」

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