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「それで、アデル様のことがよくわからないから教えてほしいと?」


 アデルの異母兄弟カイが来て、なぜかアデルにキスされたり押し倒されたりした翌日。私はユーデリックさんに助けを求めていた。だって、本当に何がなんだかわからないのだから。


「ユーデリックさんは魔王軍幹部の中でも一番強くて一番アデルに近いと思うんです。だからアデルのことなら何でも知ってるのかと思って」


 そう言うと、ユーデリックさんはまんざらでもない顔をしてふふんと笑った。


「まぁ、そうだな。確かに俺はアデル様に一番近い。アデル様についてお前に教えてやってやらんこともない。だが、どういうつもりなのかまずはアデル様に直接聞いてみればいいだろう」

「アデル様、聞いたら教えてくださいますか?」

「知らん」


 ひ、酷い!ユーデリックさん、協力する気全くないじゃない!私が落胆していると、バタバタと廊下を駆けてくる音がした。


「ユーデリック様!」

「どうした」

「東で王国の兵士が攻撃を仕掛けてきました!」

「いつものように適当にあしらえ」

「ですが、兵士の一人が異常に強くて押されています。騎士団長か何かかと思われるのですが」


 騎士団長?まさか……。


「ユーデリックさん、その現場、私にも同行させてください!」







 戦場に到着した私は、魔獣や兵士たちが地面にたくさん倒れている姿を見て絶句してしまった。だって、私が聖女だった頃はこうならないようになるべく被害を最小限にしていたのだ。なのに、今の聖女と王国はそんなことお構いなしに戦っている。


「あれがやたらと強い人間です」


 言われた方向に視線を向けると、そこには鮮やかな剣捌きで魔獣を次々と倒していく騎士の姿があった。あれは、やっぱり!


「アーサー!」


 大声で呼びながら浮遊魔法でその騎士の近くまで降り立つ。


「!?エアリス、様!?」


 アーサーは驚いたような顔で私を見た。


「生きて、らっしゃったんですか!?」

「生きてるわ!そんなことより、どうしてこんな戦い方しているの?あなただって無駄な殺生はしたくないって言ってたじゃない!」

「それは……」


 苦々しい顔で私を見て、剣を握り締める。


「どうしてお前がここにいる?エアリス」


 突然声がしてハッとすると、いつの間にか私の隣にアデルがいた。顔を見ると、まだすごく不機嫌そう。うう、やっぱり怖い……。


「魔王アデル……!貴様がエアリス様を拉致していたのか?」

「何を言っている。俺は聖女エアリスを保護しただけだ。捨てたのはお前たち王国の方だろう」

「は!?貴様こそ何を言っている!エアリス様が魔王軍に奪われ殺されたと聞いていたんだぞ!」


 アーサーの言葉に耳を疑う。そんなはずない、だって、捨てられる前に、王が古い聖女は国外追放すると国内におふれを出せって指示しているの聞いたのだから。


「私は、新しい聖女様が来たからって王国から魔王の領内の森に捨てられたの。でも、魔王アデルが拾ってくれたのよ。こうして何不自由ない生活もさせてくれてる」

「な……そんなばかな!王も新しい聖女様もそんなことは一言も……」

「お願い、ここは一旦引いて!こんな戦い方、あなただって本当はしたくないでしょう?」


 私の言葉にアーサーは明らかに動揺している。


「そんな……いや、でも新しい聖女様は魔王軍に殺されかけたんだぞ!この間、白銀の狼のような魔獣に突然攻撃されたって、平和的に解決しようとしたのに無抵抗な聖女様を攻撃してきたって大怪我をして戻られたんだ!」


 そんなはずない。この間怪我をしてたのはむしろカイの方だ。きっと新しい聖女は嘘をついて騎士団を騙し、怒りを団結の材料にして魔王軍を攻撃させている。なんて恐ろしい聖女なんだろう。


「全く、胸糞の悪い話だな。新しい聖女様は随分と性格が悪いらしい。俺たちよりもよっぽど悪どいんじゃないのか」

「無礼な!魔王よ、エアリス様を返せ!エアリス様、そんな奴らのことは信用せず、早くこちらにお戻りください!」

「アーサー……!」


 戻れるわけがない、あんな王国には絶対戻りたくもない。どうしてアーサーは何も知らないんだろう。とにかく何か言わなくちゃ、そう思ってアーサーに近寄ろうとしたその時、アデルの腕が私の腰をグッと引き寄せて離さない。 


「いいか、小僧。この女はもう俺のものだ。王国には返さない」

「貴様!エアリス様に気安く触るな!お前のような者が触れていいお人ではないのだぞ!」

「ほう、お前はなんの権利があって俺に指図している?」


 ドスの効いた低い声でアデルが言う。その気迫にアーサーは一瞬たじろいた様子だけど、すぐに私を見て叫んだ。


「……っ、エアリス様、早くこちらに!そんな奴といればあなたも汚れてしまう!」

「アーサー!そんなこと言わないで!アデルも魔王軍の皆さんもとてもいい人たちばかりなのよ!私、王国にいる時だってこんなに心地よく暮らしたことなかったわ!」


 私の言葉にアーサーも、そしてなぜか隣にいるアデルも驚いた顔をして私を見ている。え?私、何か変なこと言った?


「新しい聖女にエアリスが生きていることを伝えろ。そうすれば、きっと面白いことになる」


 アーサーへそう言ってからふん、と鼻で笑うと、アデルは片手を空に掲げる。すると、突然眩しい光にあたり一面が覆われた。眩しくて、何も見えない……。






ご覧いただきありがとうございます。


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