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「エアリス、捕まえた!」


 白銀色の髪の毛を風に靡かせた美しい青年は、私を抱きしめて嬉しそうにそういった。だ、誰なの?でも、どこかで見たことがるような……?


「おい、ルカ!……って、あー、手遅れだったか」

「おい、野放しにするなと前にも言っただろう」


 突然、カイさんが現れ、青年に確保されている私を見て片手で顔を覆う。アデルはカイさんに今にも食ってかかっていきそう、って、そういえば今、カイさんがルカって言った?目の前の顔をまじまじと見つめると、美しい青年は綺麗な瞳を私に向けて嬉しそうに微笑む。


「え、待って、ルカくん?」

「そうだよ、エアリス!」


 そう言って、ルカくんは私の頬に自分の頬を擦り寄せている。それを見てカイさんはさらに項垂れて、アデルは禍々しい殺気を纏い始めた。あああ、これはやばいかも。


「あれ?でもルカくんまだ小さかったよね?どういうこと?」


 少し前に会った時は本当にまだ幼い少年だった。なのに、今はすっかり男らしい青年になっている。こんな短期間に成長するなんてあり得ない。


「エアリスと一緒になりたくて、魔法で成長を早めたんだ。どう?かっこいいでしょう?」


 えへへ、と嬉しそうにルカくんが言う。確かに、かっこいい!けど、見た目は青年なのにやっぱり話し方や行動がまだ幼い子供のようだ。


「おい、いつまでそうしている。エアリスから離れろ。殺されたいのか」


 アデルがルカくんの腕を掴んで私から引き離そうとする。でも、ルカくんは私から離れようとせず私にぎゅっと抱きつく。


「アデルばっかりずるいよ!僕だってエアリスのことが好きなんだから!ねえ、エアリス、僕は一番じゃなくてもいい、アデルの次でもいいから、エアリスと一緒になりたい。いいでしょ?」


 まじりっけのない純粋な瞳を真っ直ぐに向けてそう言われてしまうと、どう返事をしていいかわからなくてただルカくんを見つめてしまう。


「おい、本当にもうやめておけ。お前、このままだとまじでアデルに殺されるぞ。俺は我が子をこんなことで失いたくない」


 そう言って、カイさんがパン!と両手を合わせると、ぽんっ!と音がしてルカくんの周りに煙が巻き起こった。


「コホッ、ケホッ……あれっ?ルカくん」


 煙がなくなると、さっきまでそこにいた美しい青年は小さな少年に変わっていた。本当の姿に戻ったルカくんの首根っこを掴んで、カイさんがヒョイっと持ち上げる。


「すまないな、エアリス。こいつ、エアリスがアデルと結婚するって聞いた途端に自分もエアリスと結婚する!って騒ぎ出して。急にいなくなるからどこ行ったかと思ったら案の定だったよ。全く」

「親子揃って愚狼すぎるな。躾がなっていない。今からしっかりと躾けてやろうか?」


 両目を真っ赤に光らせて禍々しい魔力を自分の周囲に放ちながらアデルが地を這うような低い声で言うと、カイさんもルカくんもひっ!と小さく悲鳴をあげた。

 アデルはふん、と鼻で笑うと、赤い目がいつものオーロラ色の瞳に戻って禍々しい魔力も無くなった。よかった、いつものアデルに戻ったみたい。そう思ってホッとしていると、アデルは私のそばまで来て私の腰に手を添えてぐっと引き寄せる。


「アデル?」


 アデルを見上げると、アデルは私の頬をじっと見つめている。これは、まずい気がしてきた。前に狼姿のカイさんに顔を舐められた時、嫉妬したアデルに頬を思い切りガブっと噛まれたんだった。あれ、すごく痛かったんだよね、きっと同じことが起きるんじゃ……?アデルの顔がどんどん近づいてくる。ああ、きっとまた噛まれちゃう!そう思ってぎゅっと目を瞑ると、頬にアデルの唇の感触がある。あれ?


 ちゅ、ちゅ、と優しい口づけが頬に何度も繰り返しされている。両頬に何度も優しく唇が添えられて、なんだかくすぐったい。


「ん、ア、デル、くすぐったい!」


 私がそう言っても、アデルは気にすることなく何度も優しいキスを頬に降り注いできた。それで終わるのかと思ったら、そのまま私の唇にアデルの唇が重なる。


「!」


 最初は優しく軽いキスだったのに、次第にエスカレートしてねっとりとした濃厚なキスに変わっていく。どうしよう、小さなルカくんだって見てるのに!やめて、と言おうとして開いた口にアデルの舌が入り混んでくる。本当にこれはまずい!どうにかして止めさせたくてアデルの胸元を両手で押してみるけど、びくともしない。しかも逆効果だったみたいで、アデルの片手が私の後頭部をしっかり押さえ込んでアデルのキスがどんどん深くなっていく。


 頭がどんどんふわふわして体の奥が疼いてきた。どうしよう、体に力が入らなくなる。私がどんどん脱力していくのに気づいたアデルは、ようやく唇を離して私の顔をじっと見つめる。そして、嬉しそうに妖艶に微笑むと、私の顔を自分の胸元に押さえつけた。


「その顔は俺以外に見せるわけにはいかないからな」


 そう思うんだったら人前でこんなことしないでよ!そう思いながらも、体に力が入らなくて声すら出せない。脱力したままアデルに寄りかかっていると、近くからカイさんの呆れたような声が聞こえてくる。


「うわぁ、お前って本当にエアリスのことになるとどうしようもなくなるんだな。小さい子供の前で何やってんだよ、全く」

「子供だろうがなんだろうが手加減はしない。これくらい見せつけて当然だろう。それにお前、途中からルカの顔を両手で覆って見せないようにしていただろうが。これに懲りてもうエアリスに近寄ろうとするなよ。エアリスは俺だけの妻だ。他の誰にもやらん」

「はいはい、よーく言い聞かせておくよ。まあ、こんだけ見せつけられれば、こいつも諦めるだろうけどな。そうだろ?ルカ」

「うう……グスッ」


 見えないけどルカくんの悲しそうな声が聞こえる、もしかしてちょっと泣いてる?気になって見ようと体を動かそうとしたら、アデルが私を抱きしめる力を強めて身動きが取れない。


「俺たちは部屋に戻る。お前たちもさっさとうせろ」


 そう言って、アデルは私をヒョイっと抱き抱えると、魔王城の中へ入っていった。



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