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 お兄ちゃん夫婦の子供の名付け親になって欲しいと言われたアデルは、赤ちゃんを抱きながらじっと赤ちゃんを見つめる。笑っていた赤ちゃんは、不思議そうな顔でアデルを見つめていたけれど、すぐにまた嬉しそうに笑って、それを見たアデルも嬉しそうに微笑んだ。


「この子の周囲には愛が溢れ、愛に祝福されている。そうだな、魔族語で愛を意味する『エフィーア』と名付けよう」

「エフィーア……!なんて素敵な名前!」

「この子にピッタリだな!ありがとうございます、魔王様!」


 リイさんもお兄ちゃんも名前を聞いて嬉しそうだ。私も嬉しくなってアデルを見ると、アデルは私の視線に気づいてフッと微笑んだ。何でだろう、いつもよりも神聖さを感じる……!魔王として赤ちゃんに名前をつけたから、魔王としてのオーラが溢れ出てるんだろうか?思わずドキドキしていると、アデルがそんな私を見て優しそうな愛おしそうな顔で微笑んでいる。ああ、そんな顔されたら余計ドキドキしちゃうのに!


「さて、そろそろ魔王城へ帰らねばな」


 そう言って、アデルはエフィーアをリイさんへ渡した。エフィーアはリイさんの腕の中に包まれて、さらに嬉しそうにキャッキャッと笑っている。


「……そうね、名残惜しいけど」

「また来ればいい。お前にはたっぷりと時間がある」

「え、いいの!?」

「いいも何も、お前の実家だろう」


 当然のことのように言うアデルを見て、私を含め家族全員が喜びで一斉に笑顔になる。


「魔王と結婚するというから、もしかしてこれが今生の別れかと思っていたけど……魔王様、本当にありがとうございます」

「アデルでいい。俺もまた一緒に来たいと思うがかまわないか?」

「もちろん!アデルは家族になるんだから、いつでもいらしてくださいな」


 両親の言葉に、アデルは静かに微笑んだ。今日のアデルはずっと表情も雰囲気も柔らかくて暖かい。あのアデルがこんな風に優しい空気を纏っていることが嬉しくて、思わずアデルの腕に抱きつく。


「あらあら、本当に仲がいいのね」

「そそっかしい子だけど、アデルが一緒にいてくれるなら大丈夫ね、安心だわ」

「確かに、アデルなら安心だ」


 リイさん、お母さん、お兄ちゃんの言葉を聞いてお父さんは静かに頷いた。もう、みんな私に対してちょっと酷すぎない?


「俺はエアリスに出会って自分の中に様々な感情があることを知った。愛というものを感じ、信じることができたのもそうだ。エアリスに出会えなければ、きっと永遠に知り得なかったことだ。こんな気持ちになるのはエアリスだけだ。エアリスをこの世に生み出したこと、愛を持って育ててくれたこと、心から感謝する。ありがとう」


 そう言って、アデルは静かにお辞儀をした。それを聞いたお母さんは両目に涙を浮かべてお父さんの腕を掴んでいる。お父さんは、そんなお母さんに静かに腕を回して優しく抱きしめた。


「そんな風に言っていただけてありがたいです。こちらこそ、エアリスの命を二度も助け、エアリスを心から愛して下さってありがとうございます。エアリスのこと、どうかよろしくお願いします」


 お父さんがそう言ってお辞儀をすると、お母さんもお兄ちゃんもリイさんも続いてお辞儀をした。なんだろう、とっても胸が熱くて、アデルのこともみんなのことも一度に抱きしめたくなる。


「ああ、エアリスは俺が幸せにする。魔王の名にかけて誓おう」


 そう言って、アデルは私の鼻に軽くキスを落として、優しく微笑んだ。色っぽくて妖艶なのに愛が溢れた笑顔でクラクラする……!


 こうして、私とアデルは私の家族への挨拶を終わらせ、魔王城へ帰った。





 転移魔法で魔王城の目の前に戻ってきた。光が消えて辺が見えるようになると、突然中くらいのモフモフした塊がどこからともなくこちらに猛突進してきた。

 どうやら、犬みたい?その犬は私に体当りしてきて、私は思わずよろめいて地面に座ってしまう。それは本当にあっという間のことだった。


「あはは、くすぐったい!あなた、どこの子?迷子?」


 白銀色の中くらいの犬は、私に覆いかぶさりながら私の顔を嬉しそうにペロペロとなめている。近くにいたアデルはその光景を見て表情を変え、叫んだ。


「エアリス!その愚狼から離れろ!」


 えっ?アデルのあまりの剣幕に驚いてアデルを見ると、白い犬はポンッと白い煙を放って、突然青年の姿になった。


「エアリス!捕まえた!」


 白銀の髪色にアメジスト色の瞳の美しい顔の青年に、ぎゅっと抱きしめられてしまう。ええ?この人一体誰なの!?



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