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「……はぁ、やっぱりあんたみたいな女は大嫌い。せっかく命だけは助けてあげようかと思ったけど、気が変わったわ、やっぱりお前は、殺す!」
そう言ってシリーは近くにいた村人の肩に剣を突き刺し、さらに他の村人にも次々と切り掛かっていった!
「ぎゃあああ!」
次々に村人が血を流して倒れていく……どうしてこんな酷いことができるの!?シリーは嬉しそうに笑い声を上げながらどんどん村人に切り掛かっている。
「あははは!あんたのせいよ!あんたが私の機嫌を損ねたからこいつらこんな目にあってるの!生かしておいた方が聖女が戦う時に困るだろうからってデモスは言ってたけど、そんなの知ったこっちゃないわよ!こうした方がショックでしょう?ねえ、心優しい聖女様!」
高笑いをしながらシリーは剣を振り返り血を浴びている。村人たちは操られているから抵抗もできずにただ叫び声を上げて地面に倒れていく……酷い、酷すぎる!
「もうやめて!こんなことしても意味がないわ!」
「意味ならあるわよ!あんたのその悲壮な顔が見れるんだから!」
シリーが嬉しそうに笑ってそう言ったその瞬間、村人たちの体が光り出し、一瞬で消えた。
「っ!何!?」
「お前の行いは見るに耐えない。美しくない」
嫌悪感丸出しの顔でシリーを見つめ、アデルがそう言った。
「安全な場所に転移させておいた」
「アデル……!でも、みんな瀕死の状態よ」
「大丈夫だ、転移先にカイたちがいる。治癒魔法や蘇生魔法で対応するだろう」
アデルの言葉にホッとする。よかった、村の人たちは無事なのね!
「余計なことしないでよ、このくそ魔王が!」
シリーがそう言って剣を振ると、剣についていた血が散る。ギリギリと歯を食いしばりながら恨めしそうな目でアデルを見ていたけど、フッと表情が変わってまた穢らしい顔で笑い始めた。
「まあいいわ。楽しかったし、もっと楽しいことがこれから起こるから」
そう言ってシリーは持っていた剣を投げ捨てた。一体、今度は何をするつもりなの?シリーがしようとすることなんてきっとまた酷いことに決まっている。不安になってシリーを見つめていると、アデルが私の肩をぎゅっと抱き寄せた。
「アデル……」
「大丈夫だ、何があってもお前を守る。あのクソ女は早々に片付けるから心配するな」
アデルに触れている箇所が温かい。その温かさに不安がほんのりと溶けていく気がする。ホッとしてアデルを見上げると、アデルは頼もしい顔つきで微笑んでいた。
「そんな強気なこと言っていられるのも今のうちよ、魔王アデル」
シリーはそう言って卑しい笑みを浮かべ、自分の胸元に手を置いた。すると、シリーの体が輝き出す。シリーの体が浮かび上がると、シリーの胸元から剣が現れた!あれは、まさか……!
体から剣を抜き出すと、シリーの体の光は消えた。でも、シリーの手にある剣は神々しいまでに輝いている。
「聖女の聖剣……!」
「そう、聖女しか扱うことのできない、聖女から生まれるたった一つの聖剣。例え魔王であっても聖女から生まれたその剣の力には抗うことはできない。そうでしょう?」




