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「僕、みんな仲良しがいい」
カイさんとディーさんの手を取って二人を見上げるルカくん。そんなルカくんを見て、カイさんとディーさんは目を合わせ、ルカくんの目線に合わせてしゃがみ込んだ。
「ごめんな、ルカ。そうだよな、仲良しがいいよな」
「大丈夫よ、仲直りするから。ね」
カイさんとディーさんがそう言ってルカくんの頭を撫でてあげると、ルカくんは二人に抱きついた。二人もルカくんをぎゅっと抱きしめる。
「お前たちの痴話喧嘩に俺たちを巻き込むな、不愉快だ。行くぞ、エアリス」
アデルはそう言って私の手を取って歩き出した。思わずルカくんを見ると、ルカくんはこちらを振り向いてにっこりと微笑んだ。可愛い……けど、笑顔が何かを含んでいるように見えて、純粋そうに見えないのは何故だろう?成長が楽しみだけどちょっと怖い、かも?
◇
またアデルの部屋に連れてこられてソファに座らされると、アデルは私の横にピッタリとくっつくように座った。何なら、腰に手を回されてがっちりホールドされている。絶対に逃さない、という気迫まで感じられるのだけど……。
「それで、なぜお前はディーとルカを俺の妻と子供だと勘違いしたんだ?」
「それは……ルカくんがアデルにすごい懐いていたし、ディーさんがその、アデルに密着して親密そうな感じだったから……」
ゴニョゴニョと言い淀むと、アデルは呆れたような顔で私を見下ろしている。うう、怖い、怖いよ。
「ディーが俺にくっついたのはお前を揶揄うためとカイへの当てつけだろう。全く、それを鵜呑みにして勘違いするとはな。だが、それでなぜお前は俺に対してあんな態度をとったんだ」
「そ、それは……」
アデルがじっと私を見て問いただしてくる。言葉に詰まると、アデルはそっと顔を近づけて耳元に口を寄せる。
「まさか、ショックだったのか?俺に妻と子供がいるかと思って、ショックを受けたのか?どうして?」
アデルの低く良い声が耳のすぐそばで聞こえてくる。くすぐったいのとゾクゾクするので思わず体をそらそうとするけど、アデルがしっかりと体を掴んでいて離してくれない。
「どうしてって……」
言葉に詰まってアデルを見上げると、アデルは私の顔を見て少し目を見開き、それからグッと唇を噛んで何かに耐えたような顔をしている。なんだろう?
「まさか、嫉妬してくれたのか?」
「……嫉妬というか、ショックだったの。アデルから言われた私への気持ちが嬉しかったのに、アデルに奥さんと子供がいるって思ったらショックで、悲しくて……。勘違いってわかったら恥ずかしくなったけど」
また恥ずかしさが込み上げてきて俯くと、頭上からフッと息が漏れる音がする。きっとアデルが笑っている。
「アデルは聞いてくれたでしょう、私がアデルをどう思っているのかって。ずっとよくわからなかったの。いつも私をからかってくるけど本当はとても優しくていい人で……一緒にいて居心地がいいし、アデルが笑うと嬉しくて胸がドキドキするし、何よりも私への気持ちを知って嬉しかった。この感情が何なのかわからなかったけど、ディーさんたちのことがあってわかったの。私、きっとアデルのことが好きなんだわ」
そう言ってアデルを見つめると、アデルは両目を見開いて私を凝視している。
「この気持ちが好きというもので合ってるかどうかよくわからないけれど……でも、アデルのことを考えると胸がドキドキして張り裂けそうになるし、アデルが辛そうだと私も辛い。アデルが嬉しいと私も嬉しいの。これが質問に対する答えじゃダメかな……って、えっ!?」
最後まで言い終わる前に、アデルに抱きしめられていた。ぎゅうっと力強く抱きしめられる。
「ア、アデル……!?」
「お前の気持ちを聞けて嬉しい。カイたちの痴話喧嘩に巻き込まれるのも、これはこれで悪くない結果だったな」
私を抱きしめながらククク、とアデルは嬉しそうに笑う。そして、アデルは体を離して私の顔を覗き込むと、いつの間にか私はアデルにキスされていた。




