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「そんなことよりも、お前がここへ来た時にはこれを返そうと思っていた。魔王の力を持つ男がまたお前の前に現れた時、お前には必要だろう」


 そう言ってアデルは片手を目の前にかざす。すると黄金の光が輝いてそこに剣が現れた。鞘には立派な紋様が刻まれていて、それは勇者の剣の証だ。


「そういえば、預かってもらっていたんだったな」


 アデルから剣を受け取るとアルテリウスは剣を懐かしそうに眺める。アデルが剣に触った瞬間、紋様が光った。


「勇者の剣を、魔王に預けていたの!?」

「魔王と戦わないなら剣はもう必要ないだろ?それに預けることで敵対する意思がないことをしっかりアピールしたかったんだよ。まぁ、それが当時の国王にバレて、これが追放される決定打になったんだけどな。国王は剣だけでも王国に置いて行けって言うから、剣は魔王にあげましたって返事したらすげぇ剣幕で怒られたもんだ」


 そんなことまであったなんて、知らなかった……。勇者の剣を魔王に預けるだなんて、やっぱりアルテリウスは変わっている。そして、なんて事ない顔をして剣を預かっていたアデルもやっぱり変わっている。


「でも、こんな簡単に剣を返してしまっていいのか?この剣を使ってお前からエアリスを奪うことだってできるかもしれないのに」


 剣を掴んだまま不敵な笑みを浮かべてアルテリウスが言うと、アデルが目を赤く光らせて体の周りに魔力を放出した。


「できるものならやってみろ。その時はお前をこの場で殺す。エアリスは誰にも渡さない、俺のものだ」


 一触即発という言葉がぴったりなほど二人の空気がピリついている。急にこんな展開になるなんて聞いてない!アルテリウスは一体何を考えているの?


「……ククク、ハハハハハ!エアリス、とんでもない男に捕まっちまったな」


 楽しそうに笑うアルテリウスと、魔力を収めてやれやれという顔をしてアルテリウスを見るアデル。どうやら二人とも本気ではなかったみたい。でも、魔王と勇者が睨み合いとか普通に怖いんですけど! 


「同情するよ、エアリス。それから、お前に近づこうとする男にもな」


 どういう意味かよくわからなくて首を傾げると、アルテリウスはまた楽しそうに笑った。


「さて、俺はまたファウス様の所へ行くよ。住んでいる街にいてまた襲撃されても街の人たちに迷惑がかかるからな」

「近いうちにファウスと三人で今後の方針に話し合おう。……あのクソ聖女があちらにいるとなると、エアリスも話し合いに同席する必要があるか」

「そうだな、そのクソ聖女様とやらはきっとエアリスを狙うだろうからな」


 アルテリウスの言葉にアデルが険しい顔をする。魔王の力をもつ男にシリーが攫われたとなると、きっとシリーはその男にいいように使われるか、もしくは自発的に手を貸すかもしれない。


「魔王の力を持つ男が言っていた期限まで、あっという間に日が経つだろう。早めに動く必要があるな。ユーデリック」

「ハッ」


 アデルが名前を呼ぶと、突然ユーデリックさんが現れた。最初はびっくりしたけれど、突然出没してくるのにもだいぶ慣れた気がする。


「魔王の力を持つ男とシリーの痕跡がまだ王国に残っているはずだ。その痕跡を辿って情報を収集して来い。危険だと思ったらすぐに引き返せ」

「かしこまりました」


 



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