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 私は今、会議室の長い机を目の前にして座っている。席にはそれぞれ魔王軍幹部の皆様が座っていて、上座にアデルが座っていた。私は末端の人間のはずなのに、なぜかアデルのすぐ近くの席にいる。目の前にはユーデリックさんが真顔で座っていた。なんだろう、圧がすごい。


「忙しい中集まってくれて感謝する。今回はこの元聖女が幹部の一員になったことを知らせるために集まってもらった」


 え?幹部の一員?すみません、そんなこと一言も聞いていませんけど?慌てて助けを求めるようにユーデリックさんを見ると、チラリと一瞥だけされて終わった。嘘、やだ、無視しないでほしい!


 会議室内がざわつく。それもそうでしょう、ついこの間まで敵対していた王国の聖女が、突然魔王軍の一員、しかも幹部になるなんて。魔王アデル、どうかしてるわ!


「皆も知っているとおり、この元聖女エアエリスは王国から追放された。異世界から来た人間が聖女というポジションを乗っ取り、今はこちらに積極的に攻撃を仕掛けてきている。このエアリスが聖女だったころは戦をなるべく回避し、お互い被害が最小限になるように戦ってくれていたが、今の聖女は違う。そんな王国軍に対応するためにも、元聖女であるエアリスの協力が必要だ」


 ざわついていた会議室が一斉に静かになった。さすがは魔王、その言葉は絶対だ。誰も意を唱えようとするものはいない。すごいな、二人で話をしていた頃の雰囲気とは全く違う。魔王としての威厳がすさまじい。


「ひとつ、お聞きしたいことがあります」

「なんだ、ユーデリック」


 でた、魔王幹部の第一位にしてアデルの右腕とも言われているユーデリックさん。アデルに何か言えるとしたらこの人しかいないだろう。


「この元聖女が寝返らないという保証がありません。アデル様はどのようにお考えでしょうか」


 いや、寝返ったりしませんけど!?あんな、新しい聖女が来たからって簡単に聖女だった人間を魔王の領内の森にポイ捨てするような王国になんて二度と戻りたくありませんけど!


「大丈夫だ。この女の心臓は俺が掌握している」


 アデルの言葉に、他の幹部たちはおお!さすがはアデル様!と感嘆の声を上げている。だけど、私を見たアデルはにやりと笑った。あ、これ、たぶん幹部の皆様が思っていることと違うことだ。この間の心臓がもっていかれそう発言のこと言ってるんだ。そう思ったら急に顔が赤くなってくる。どうしよう、なんだか恥ずかしい!


 ふと目の前のユーデリックさんと目が合う。きっと顔が真っ赤になっているんだろう、私の顔を見て眉をしかめてからアデルを見て、静かにため息をついた。たぶん、なんとなくわかってそうな気がして余計に恥ずかしい!


「……わかりました。それなら問題ないでしょう」


 いえ、問題ありすぎだと思いますよユーデリックさん!


「それではエアリス。幹部になった決意表明を」


 はい?決意表明?私、別になりたくてなったわけではないのですが……?アデルに視線を送ると、笑いをこらえているのがわかる。ひどい、絶対に楽しんでる!会議室内を見渡すと、幹部の皆様が私を一斉に見ている。どうしよう、何か言わないとこの会議、終わらなそうだ。


「えっと、不束者ですが、拾っていただいた御恩に報いることができるよう、精一杯頑張ります」


 立ち上がってお辞儀をすると、どこからともなく拍手が聞こえてくる。え、幹部の皆様、以外にお優しい?


 ほっとして席に座ると、アデルと目が合う。するとアデルは満足そうに微笑んだ。うっ、何ですかその優しそうな微笑みは!調子が狂いそうになる……。





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