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「ユーデリック、報告を」

「はっ」


 翌日、魔王軍幹部会議が始まった。アーサーを助けに行ったユーデリックさん、あの後アーサーはどうなったんだろう……。


「新しい聖女に元聖女が生きていることを報告した騎士団長アーサーは地下牢に投獄されました。部下たちに慕われているようで、酷い扱いは受けておらず、むしろ牢から出すように嘆願されています」


 人柄がよく人望のあついアーサーはやっぱりみんなから愛されている。アーサーが無事と知ってホッとした。


「だがあの男は部下たちが自分を擁護することで聖女や国王から部下たちに危害が及ぶことを恐れているのでしょう、余計なことはするなと言って部下たちをなだめているようです」


 アーサーだったら確かにそうするんだろうなと微笑ましく思う反面、やっぱりアーサーのことが心配になる。そのまま牢にいたら、いつ処刑されてもおかしくないはずだ。


「アーサーは牢に入れられたままで大丈夫なのでしょうか?」


 思わず質問すると、会議に出ている全員の視線が集まる。そうだった、今は会議中だった……。居た堪れないけれど、でもやはりアーサーのことがどうしても気になる。


「今のところは大丈夫だろう。アーサーの騎士としての腕を国王は見込んでいるようだからな、殺すという選択はないようだ。だが、聖女はあの男を使って何か企んでいる様子ではあった」


 聖女が何かを企んでいる。きっと良くないことに決まっている。どうしてアーサーを救出してくれないのだろうとヤキモキしていると、ユーデリックさんはそれに気づいてフン、と鼻息を飛ばした。


「俺は助けようとした。だが、あの男がそれを拒んだのだ。魔王軍に助けられる義理はない、放っておいてくれと。それから、エアリス、お前のことをとても心配していたぞ。俺のことはどうでもいい、エアリス様のことだけは何があっても守ってくれと、そればかり言っていた。お前は大切に思われているんだな」


 ユーデリックさんの言葉に、胸が締め付けられる。アーサーはどんな時だって自分のことより周りのことを優先するのだ。牢に入れられて命も危ういかもしれないのに、それでも自分より私のことを思ってくれている。もっと自分のことも大切にしてほしいのに。


 ふと、強い視線に気がつく。アデルがじっと私を見つめていた。真顔なのにどこかほんの少しだけ寂しさを感じる瞳。どうしてそんな顔をするのだろう。


「魔王様、失礼します」

「どうした」


 突然、従者のような人、いや魔物?が現れた。


「王国から届いたものです。聖女エアリスに関することなので早急に返事を求むとのこと」


 魔物がアデルに一通の封書を渡す。アデルがそれを開くと、封書から光が放たれ、空間に映像が映し出された。


「ごきげんよう、魔王アデル、魔王軍の皆様。そして、そこにいるのでしょう?元聖女のエ・ア・リ・ス・様」


 映像には、薄桃色の髪の毛をツインテールにした可愛らしい女性が、その可愛らしい顔に似つかわしくない悪どい笑みを浮かべていた。



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