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銃を召喚し、基本射撃を教えることにした。
これも、細心の注意が必要だ。
例えば、そこら辺を歩いている人を捕まえて、簡単にレクチャーをすれば、自動小銃なら、200メートル先の的に当てることは出来る。
しかしだ。
軍隊は、一人ではないのだ。
転生前に、ミリオタ同士で、5.56ミリ小銃は、反動がそれほど大きくない。だから、片手撃ちガーとか、そんなくだらない事で論争が起きていた。
確かに、単発なら、それほど、威力は大きくないが、三連射や、連射なら、話は違ってくる。連射なら、わずか数秒で、20発は撃ち尽くす仕様だ。
一端、反動が、それほど大きくないと教えたら、必ず100人に一人は、変な撃ち方をする奴が出てくる。
一人なら、アメリカの有名な戦争アクション映画のように、銃を片手で持ち。連射をするのも良いだろう。
しかし、軍隊の組は、最低3名だ。味方死ぬだろう。
最初は、10人、冒険者パーティーのリーダーを集めて教えることにした。
弾は渡さない。所作を教える。
照準の仕方を教える。まず。単発だ。素人と一般兵士の違いは、素人2割、兵士8割の的中率と言われている。
その差は、
「照準は必ずズレる。的を中心に、照星がグルグル回るようになったら、正しい照準だ」
「いいか、引き金を引くときは、ゆっくり引く。引け!」
カチャ!カチャ!カチャ!
実はたいしたことはない。それが体にしみこんでいるかどうかの違いだ。
空撃ちさせる。
そして、自分で、撃鉄を起こして、また、演練、
訓練が終わったら、必ず武器は一括管理だ。
「頼むよ」
「はい!」
冒険者ギルドの一室をお借りして、事務員に依頼した。
戦場なら、誰か係を指名して、管理させる。
識字率の低いこの世界は危険だ。
そして、実際の射撃だ。
バン!バン!バン!
一応、俺が、手本を見せる。
「弾痕がまとまっているのが、良い射撃だ」
「「「はい」」」
彼らは撃つ。的の真ん中に命中している奴がいたが、二発目以降は、的を外れている。
的を外れているが、弾がまとまっている。様々だ。
そして、連射だ。
これは、怖い。
ダダダダダダダダダダダ!
「あれ、当たらない」
「どうして、そうか、反動が激しいからだ」
自分で考えるようになった。
わずかな反動が、大きくズレる。200メートルなら、数十㎝だ。
「それでいい。弾をばらまく感覚だ」
次は、銃の分解結合を教えたいが、俺だって、自衛隊の装備を詳しく知らない。
それは、教本を召喚して、おいおいやるとして、
弾詰まりを解消する方法だけ教えた。
「困ったら、コウカンをカチャカチャだ!やれ」
「「「はい!」」」
まあ、つまり、手動で、強制的に、弾を排出するのだ。
1000発に一発は、弾詰まりを起こすと想定している。
一発目が、弾詰まりの可能性があるのだ。
そして、残ったドワーフに、銃の整備をやらせた。一回射撃をすると、思ったよりも、薬莢のクズや、火薬のカーボン繊維がこびりつく。
「なんでえ、これは、バネがこんなに精巧に作れている」
俺も一生懸命に覚えた。教本は、実物があれば、理解できる。これは、勉強そのものだ。良かった。義務教育を履修していれば、大抵理解できる。
ドワーフに教える。
「報酬は、食べ物しかないが」
「おう、これの設計図を作りたいぜ」
「いいが、再現不可能だと思うぞ」
しかし、思わぬ誤算があった。
弓使いは上手く射撃出来ない。
射撃方法が根本的に違うのだ。
銃は撃つときに、肩に銃尾を押しつける。
しかし、弓は、引くようだ。
なら、弾くか。
「じゃあ、いいよ。弓の練習をしなよ。持ち味を殺すことはない」
「でも、銃を撃ちたい!」
「そうだ」
「かっこいい武器を教えるよ」
と爆破を教えた。
これも、やり方自体は、簡単だ。教え方に注意が必要だ。
まず。TNTを爆破させる。
ボン~~ン!
威力を目の当たりにさせてから、
爆破のやり方を教える。
因みに、TNT爆破薬本体は、暴発は滅多な事では起きない。爆破薬本体に、雷管を突っ込んで、起爆するのだ。
落としても平気だが、それは、口を避けても言えない。
真に危険なのは、雷管だ。
悪い発破師が、雷管をちょろまかして、川の石に投げつけて、漁をした逸話を聞いたことがある。
それが事実だと思うくらい爆発しやすいのだ。
「雷管をポケットにいれるの禁止、両手で持て!」
「「「はい!」」」
これは、有名な映画、プライベートライアンであった。
上陸地点で、破壊等で、鉄条網を破壊しようとするシーンだ。
中隊長に、導火線の付いた雷管を渡す。手渡しだ。
妙に、日本の法令と同じで感心したものだ。
また、ドワーフにカタパルトを作らせた。
石投げ機だ。それに、爆薬を入れて、敵に飛ばず。
やがて、魔王軍が進撃してきた。
思ったよりも小勢だ。
しかし、こちらの城壁も、土で2メートルだ。
草原に出て、迎え撃つ。
何とか召喚した軽装甲車を、盾にする。
バン!威嚇して撃ったら、
「「「「!!!」」」
驚愕して、距離を取る。300メートルだ。
この距離は、射手からしたら、動いていたら、当たる気がしない。
狙われる方からしたら、逃げられる気がしない絶妙な間合いだ。
これは一般兵士の場合だ。
武田君、動いていれば、300メートルなら当たらないと判断されたな。
緊張を解けさせない間合いだ。
やはり、魔王軍は、対銃のドクトリンを開発したか。
ドロドロドロドロ~~~~
太鼓の音が鳴り響く。
大体、敵の出方は予想できるが、
「ドラゴンだ!」
「あれをやるの?」
前方に、集中させて・・・・と来た。
死霊だ。ゾンビたち、この国の騎士団一個中隊か。嫌がることを知ってやがる。
そして、土嚢を積んだ荷車が、ゾロゾロ前を塞ぐ。
おお、ここから見える。
三人一組で、土嚢を作っている
一人がツルハシで、土を掘り。もう一人が、シャベルで、柔らかくなった土を、3人目が、構えた土嚢袋にいれ、縛る。
すると、恐ろしい速さで、土嚢が積み上がる。
戦時国では日常茶飯事の光景だ。
「「「ウウウウーーーー」」」
やはり、死霊だ。土嚢の壁の間に、ローブを羽織った死霊使いに率いられた死霊が、集まって来る。魔王軍は、死霊を弾よけに使っているのだ。この国の騎士団一個中隊か。嫌なことを知っている。
まず、ドラゴンだ。
上空に、3体。小型。ワイバーンというところか。奴らは火を吐く。
火炎放射器の射程は、最高80メートル、有効射程は、40メートルという所か。地上に降りて暴れられたら、目も当てられない。
上空をクルクル回っているな。
あれは、ヘリだ。
近年、ヘリは廃止される方向にある。
打ち落とされやすいからだ。
実はもっと早くから分かっていた。
1970年代、旧ソ連は、アフガニスタンに侵攻した。
ソ連はヘリを多用するが、
自動小銃で打ち落とされた古い映像を見たことがある。
当時は、アメリカの戦争映画のヒーローと共闘したタリバンだ。
数十人並んで、空に向かって、撃つだけだ。
西側のジャーナリストが撮影したと云う。
当時は、7.62ミリ弾か?
こちらも7.62ミリ弾の64式で30人ほどそろえた。
200メートルくらいか。威嚇用に、空を飛ばしているだけだ。近づいたら、銃でやられるか、崩れたら、降りて来るのだろう。
「1から3班、各個に撃て!」
ダダダダダダダダ!
「「「!!!」」」
ドタン!一体、敵と味方の間に、落ちてきた。
他のワイバーンは逃げ出す。
これが前哨戦か。
「「「「ウウウウーーーーーーー」」」
ゾンビが迫って来た。これで銃弾を防ぐのだな。
やり方はいろいろあるが、
「爆破用意!爆破!」
ドドドーーーーン!
ゾンビが宙を舞う。
俺は、地雷の除去のやり方を知っている。地雷は、爆破で吹き飛ばすのが良い。
あらかじめ。地面に、対戦車地雷を埋めておいた。最新式のは、振動で爆破するものがあるから、古い地雷を使った。
対戦車地雷でも、人が乗れば、爆発するのだ。
あらかじめ。地雷の安全弁を外さず。C4爆破薬で、起爆するようにしておいた。
起爆は、有線の電気だ。
「それでも、ゾンビは残っているか?なら、弓手、爆薬付き矢を、各個で放て!」
「「「着火ヨシ!」」」
ビョン!ビョン!
これは、二人一組で、一人が発火し、素早く、弓手に渡す。
導火線の長さは、20秒にした。
ゾンビに刺されば、吹き飛ぶハズ。
ドカーーーーン!
小爆発が起きた。
次は、無反動で、敵の土嚢車を吹き飛ばすか。
いや、待て、ここで、勝っても日干し作戦を採られたら負けだ。
威嚇するか。
「砲手!あの山に向かって・・・待て!」
白旗を掲げた一団が来た。
ダークエルフだ。体のラインを見せつける服を来ている。太ももとヘソを見せつけている。正直、目のやり場に困る。
「軍使である。ここは、さほど、重要ではない。背後から、襲われたら厄介なだけだ。どうする?王国に殉じるか?」
「いえ、殉じません!」
即答した。中立の立場をゲットしたぜ。
「なら、食料を置いて行く。ゆめゆめ背後から襲うなよ」
奴ら、行軍中は危険だと分かっているのだ。
やがて、食料が届き。わずかな監視部隊が、残った。
「あのドラゴンは?」
「素材取ろうよ」
「いや、待て、埋葬をする。奴らに見せつけるのだ」
ドラゴンは奴らにとって、戦友だろう。
解体したら、心証が悪くなる。
それに、素材をとっても、買い取ってくれる所はない。
やがて、王都攻略が始まったと噂で聞いたが、難航しているようだ。
俺は、訓練を命じる。
敵は野盗だけではない。
貴族が逃げてきた。
「王国の第3王子殿下である。この街を明け渡せ!」
「威嚇射撃で、追い返せ!」
「「「はい!」」」
ババババーーーン!
スイスをモデルにしている。スイスは第二次世界大戦中、中立を保った。
枢軸国だけではなく、連合国の軍用機も打ち落としたのだ。
それくらいしなければ、中立を保てない。
徴兵制があって、家に小銃を保管している。
その全貌が分かると、途端に、文化人は、コスタリカをモデルにして、非武装中立だとか言い出す。
コスタリカも、憲法で、徴兵制が明記され、警察は重武装だ。一説には、国境警備隊が、軍隊の役割を担っている。
どこの世界も、軍事力の空白は許さないのだ。
魔王軍からも来た。あのダークエルフだ。
「協力して欲しい。人族の石の家は、攻略が難しい」
「いえ、約定は、中立でしたが」
「フム。もう少し、考えて、条件を出せば良かったか」
ここで、助言をした。
「陛下は、何をお考えですか?人族の殲滅なら、不可能です。他国が援助するでしょう」
「何故、我が、魔王だと分かった」
「だって、魔王軍の部隊長の態度を見たら、分かりますよ」
「フフフフフフフフ」
実は、既に、人族の他国の間諜が、この領に来ていた。
魔王軍のもだ。商人だ。人族であるが、どうも、様子がおかしい。何て言うか、エートスが違うのだ。
ここら辺も、スイスだろう。
魔王軍は様々な種族の混成だ。配下に、人族もいてもおかしくない。
「王都は10万人都市です。日干し作戦をしたら、今後の統治に支障をきたします。上手い具合に、仲介します」
俺は説明した。この国は、魔族領と近い。人族との交易の拠点にすれば便利だろう。
魔王軍は強力だが、人口比率では、人族が圧倒する。
この国の王を魔族に偏見を持たない人族にすれば、面目も立つ。
落とし所はそこか?
「和睦ですよ。陛下が言ったら聞かないでしょう。人族の大国が仲介すれば良いでしょう。王の退位です。そうすれば、臣下も説得しやすくなる」
「で、貴殿は何を望む」
「それは・・・」
「うむ、こちらとしては、痛くもかゆくもない・・」
やがて、王都は開城し、各国の大使が集まった。
俺も見届け人として来た。
俺の報酬は、異世界転移の魔方陣の破壊と神官達の処刑だ。
これは、人族にもメリットがあった。この国は、軍神を信仰していた。
女神教が、代わりに布教を始める段取りまで付いた。
「女神教では、召喚は、女神様の御業です。人族が行うのは、許せません」
「しかし、魔族との戦いで黙認してきました」
ドカーーーン!
魔方陣のある神殿は俺が爆破した。これが、最後の爆破であることを願う。
神官達の処刑は、任せた。
これで、各国が会議して、王を定めて、落ち着くのだろう。
「あれ」
ドタン!
俺は倒れた。魔力の使いすぎだ。
最後までお読み頂き有難うございました。