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今、部屋に、女の子が8人いる状況だ。
『サイトウさん大好き』『告っちゃいなよ!』『皆、応援して!』ってなことがあるワケない。
「ああ、どっか座っても良いよ」
ドカ
寝台に腰を掛ける。
両手に華、前も華状態だ。
「ねえ。サイトウさん。異世界人の弱点を教えて欲しいの」
「そうだよ。見て聞いていたよ。サイトウの助言は当たるって」
「タケダ金貨一万枚なのだからねっ」
これは、ハニートラップか?
「いいけどよ。条件がある」
「いいよ。体ね。好きな子を選んで、全員でも良いよ」
これか、たまに、こんな話を聞く。
金がなければ、体か。
「私たちも、嫌な相手にはしないから」
「そーよ。パートナーはいないからね」
「養ってもいいわよ!」
嬉しいな。
しかし、仕事と艶を交ぜてはいけない。交ぜたら危険だ。愛人を秘書にする中小企業の社長か?
途端に、場が弛緩する。体験した。愛人を会社の慰安旅行に連れてきた上司・・・
☆回想
『斉藤君、厚生費で出してくれ』
『え、あの女性は、誰ですか?家族で参加するとしても、参加費をもらいますよ』
『融通が利かないな』
・・・・
わずか二万円の旅費で、会社をクビになった上司、告発した俺も海外周りになったんだっけ。何故だ。
嫌な思い出だ。時に慢心は、とんでもない行動を起こす。気をつけなければな。
「ゴホン!後払いで良いから、お金が欲しい。討伐報酬の3パーセントで良いよ。どうせ100人くらいでやるんでしょう」
「「「はい!」」」
そして、語り出した。異世界人の弱点を、
「少し長いよ。臨機応変に動くには、原因をしっかり分かっていた方がいい。チートとは、相手の無知で成り立つ場合があるのだ」
「「「「はい」」」
「実は、一般の日本人には、軍事の知識が皆無だ」
軍事の知識と言っても、高度な戦略や兵器の性能じゃない。
身の丈に合った必要な軍事知識だ。
大学教授の数学と、主婦の数学は違う。そんな程度の知識だ。
自衛隊という騎士団が存在しているが、自衛官とその家族ぐらいしかないだろうな。
海外で仕事をしていたよ。やや、危険な地域だ。
一応、発破師の資格は持っている。
いろんな国の人がいたよ。紛争で、国中に地雷が埋まっている国だ。
元自衛官、元軍人に、地元のボランティア、
俺は、その方々に、日本製の地雷探知機などを貸し出して、試験をしたり。土木機械のオペの仕事に就いていた。
自分で処理をしたり。射撃場で、銃の扱いも教えてもらった。
国に帰って、友人の誘いで、とあるミリオタの集会に参加したよ。
衝撃だった。
ガヤガヤガヤ~
「もし、日本が侵略されたら!」
・・・・・・
正直、舌を巻いたよ。知識が半端ない。部隊や、武器の性能、しかし、俺が口を挟めることが、一つだけあった。
「今は、銃後と戦場の区別が付かないから、自衛隊のトラックを防弾処置することが優先かな。兵站を担うのは、トラックになるのだろうからね」
説明すると、法律の関係か。自衛隊のトラックやパジェロ、高機動車、ジープには、防弾処置がされていない。海外に行くときに、後方支援連隊で、防弾処置をして、帰ったら、外すのだ。一部、トラックはそのままだとは聞く。
例えば、C国は、ロクに軍備のない国を侵攻した際、民兵にトラックを狙い撃ちされ、大損害を被った。以来、C国は装甲車に力を入れ、アフリカにも輸出している。
また、イスラム原理主義ゲリラがウロウロいる国では、駐屯軍は、移動は、基本、装甲車だ。
それに、あの貧乏でも、ミサイルを撃っている国は、旧ソ連版ジープから、軽装甲車に切り替えている。軽装甲車、小隊の指揮所になる。
銃撃ぐらい備えようと言う計画だ。
そんな話はごまんと聞いた。なら、せめて、輸送任務につく自衛官の延命率を少しでもあげるべきだ。
シーーーン
「「「「・・・・・・」」」
「いや、流鏑馬戦車で、護衛するでごわす」
「それは、重要ではないよ」
途端に、幼稚になった。
こいつら、機甲化部隊と自動車化部隊の区別がついていない。
まるで、兵隊の人形で遊ぶ子供だ。
およそ。100キロ先から、進軍し、そのまま戦場に突入するのが、機甲化部隊、歩兵は、装甲車で守られる。
戦場の数十キロ前から、トラックから降りて、行軍して、戦場に向かうのが、自動車化部隊、
この区別は厳密ではないが、基本はこうだ。どこの国の陸軍も、行軍は基本だ。
自動車を降りるのは、
「自動車は燃えるからだ」
「今は、装甲車も自動車も等しく、ドローンで撃破されるから、重要ではない」
「そうそう、コスパで考えたらしない方がいいかな」
ガヤガヤガヤ~~
こいつら、自分が、兵士として参加する。戦争に巻き込まれるかもしれないと云う視点がない。ゲームのプレイヤーか。まるで、旧日本軍の無謀な突撃を命じる指揮官みたいだ。
そうか。映画でも車を盾に銃撃戦があるからそんなイメージが出来たのか?あれは、簡単に弾は貫通する。
こいつら右翼か?右翼と左翼は根は一緒だと聞いたが実感した。どうも現実性がない。
左翼は、近隣諸国を刺激しないように、防衛費を抑えろとか言う。それも、違う。軍事力がないと、大国に翻弄されるのが、国際社会だ。外国に行くと実感する。
そうか、俺は、一兵士の視点にいつのまにかに、なっていたんだ。
外国で、元軍人と交流をしていたから、いろんな苦労話を聞いた。
・・・・・
「で、知識の無さの不意を突くことは分かったわ。具体的に、タケダは、どうやったら、倒せるの?」
戦略を教えた。
「まず。銃と戦うと思うな。車両が敵だ」
98名で、討伐に旅だった。誰も期待しない低級冒険者ばかりだ。
☆ドグ領付近
まずは、情報収集だ。
調べた。
あの領は、商人は寄りつかず。自分らで、必要物資を調達しているようだ。
奴は、やっぱり、装甲車を召喚していない。いや、たとえ、軽装甲車を召喚してもやり方があるが、
そうか、戦車や装甲車を召喚出来るレベルまで行かないか。操縦が面倒臭いのだろう。輸送なら、やはり、軍用車だ。
「ヒィ、馬無し魔道車だ!」
パジェロが護衛で、三トン半トラックが後方から走る。
農民達は恐れる。時速50キロで爆走だ。
この世界、馬車で20キロくらいか?騎馬で50キロくらいか。
「馬鹿だな・・」
幌を取っていない。
いかん、いかん。敵を侮ってはいけない。
馬賊ですら、本拠地の住民には、親切にする。
どうも、南米マフィアみたいな感じか?恐怖で統治みたいな。
その恐怖の源は、銃だ。
可哀想だが、今日が命日だ。
「やれ!」
草むらから、斥候職が飛び出し、車のフロントガラスに馬糞の入った袋を投げつけた。
彼らは、低級でも冒険者、教えなくても、草むらに隠れるぐらいの事はする。
それが、彼らの軍事常識だ。
ワイパーが動き。洗浄液が出るが、余計に広がるだけだ。
キキー!
止った。
そこを、一斉に、ファイヤーボールを放てる者が撃つ。
「「「「ファイヤーボール!」」」
フロント、給油口、教えた所に皆放つ。
燃えるか?
ボオオオオオオオーーーー
燃えた。
「皆、避難だ!」
「「「はい!」」
銃を持っているかもしれないからな。
距離を取り。木や、あらかじめ土嚢で作った陣地に避難させた。
土嚢は、最も安価な防弾施設だ。
馬鹿だな。行軍中が最も危険なのに、
行軍には、大まかに二種類あって、味方勢力下での行軍と、敵の脅威下のある接敵行軍、
この場合、パジェロは、幌を外し、荷台に銃座を作り。警戒しながら進むのにな。
どうせ、思い付いても『たいした問題ではないよ』とか言ったのだろう。
ギリギリッ
思わず歯ぎしりをした。
「ヨシ!弓隊、面制圧だ!」
シュン!シュン!
逃げ延びた者がいるかもしれないから、一応射撃だ。
・・・・
「これ、タケダだよ!」
「ヒーヒー」
もう息しかしていない。
「スキルコピー!」
ピコン♩
やっぱりな。俺のコピーのレベルが上がり。スキルをコピー出来たのだ。
「オープン!」
武器のカタログがある。レベルもコピー来るのか。ほお、いろんな兵器があるが、武田君、電動ガンのモデルの銃しか使わなかったか。
自衛隊の20式だ。
‘’コピー元のスキルは削除しますか?’’
勿論!と、
「武田君、これ、悲しいけども戦争なのよね。楽にしてあげるよ」
ジョボボボーー
ポーションをかけた。
これで、生き延びるだろう。
「生きたまま連れて行き。王国へ返す。能力は消したから、安全だ」
「「「はい!」」」
武田君がいない後の、ドグ伯爵領は、弾薬の供給がなくなり。いずれ、失陥するだろう。
冒険者ギルドに帰り。
武田君本人を提出する。
金貨一万枚の支払いを待ったが、
「申し訳ございません。王城から、本当にタケダか?と言われ、お金が届きません」
「そんなー」
「どう見ても本人だよな!」
「ヒデェ~」
ギルマスが、汗を滝のように流し。頭を下げる。
王国軍や高位冒険者が失敗したのに、こんな低級冒険者100人で討伐出来るとは思ってはなかったようだ。
それに、能力がないから、価値がないから払わないと判断されたかもしれない。
馬鹿だな。悪手だよ。こちらは、銃を持った軍団を作れるのに、
ギルマスは中間管理職か。
「まあ、まあ、皆、そんな怒るなよ。それに、それどころではなくなるよ・・・」
まるで、武田君が能力を喪失したと王城で判明してから、魔王軍の侵攻は激しくなった。
間諜がいて、情報が漏れたのだろう。
やはり、武田君の銃は脅威だったのだ。
この街も危ないが、皆、逃げるところがない。
仕事もなくなってきた。
「じゃあ、畑でも耕しますか?」
「そう、そう、皆で協力しようぜ」
ほお、彼らは、冒険者でもあるが、農民でもある。助かる。
「ちょいまち、ドーザーを出すよ」
ボン!
やはり、魔力を対価にするようだ。一瞬、クラッとする。
「後は、不整地でも動くものないかな。おお、バケットローダーもある。これに鋤をつければ、耕すのは簡単だよ」
軍隊は、兵器だけではない。こうした後方支援の機械も必要なのだ。
俺が、動かし、畑を耕す。大特に、車両建設系機械の資格を持っている。
良く動かしたな。
プロには負けるけど、それでも、瞬く間に畑が出来た。
肥料は?
種は?
「はい、近隣の農家が、耕してくれるのなら、提供すると言っています」
と集めて、やっていたら、
いつの間にかに、皆、集まって来た。
ガヤガヤガヤ~~
「この街には、城壁がない」
「領主は騎士をつれて、出征したよ」
「「「どうしたらいいー」」
知るか!とは言えない。
やることは山ほどあるが、
防衛だ。
安心と書いて、心を安んじると書く。目に見えて安全だと分からなければならない。
城壁を築くか。土だ。ドーザーで、土を盛る。近くに川がある。掘った所に水を流す。
冒険者に教えた。
ドーザーの簡単な整備と、運転方法だ。大特自体の運転は、それほど難しくない。
作業はまた別だ。あれは感覚で覚えるしかない。
安全だけはしっかり教えた。
ドーザーは、そんなに、スピードはでないからな。
人をひくことはないだろう。
尚、自衛隊の小型ドーザは、後方に、スーパーシャベルが付いている。
ドーザーで使う時は、外す事が出来る。
「ヨシ、銃を配るぞ。冒険者限定だ。希望者は?」
「「「「はい、はい、はい!」」」
「なら、俺の言うことは、絶対服従だ!分かったな」
「「「はい、はい、はい!」」」
数十人が志願した。
最後までお読み頂き有難うございました。